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しらす干しにもノロウイルスによる集団食中毒リスク

   

和歌山県と東京都で合わせて1000人を超える集団食中毒が発生しました。原因は株式会社東海屋が販売した「刻みのり」で、これを使用した学校給食が原因で多くの児童生徒が被害にあいました。

乾燥した「刻みのり」がノロウイルスによる食中毒の原因になるとは思われず、和歌山県御坊市と東京都小平市で先に起きた集団食中毒では原因食材を特定出来ずにいました。

一般的に乾燥や加熱は食中毒を防ぐための手段ではありますが、ノロウイルスの場合は乾燥に比較的強く、そして加熱処理をしたとしても後処理の工程で再汚染されるリスクがあるため、注意が必要です。

乾燥させただけではなく、最後に焼きの工程をいれた「焼きのり」でもノロウイルスによる集団食中毒を起こすリスクがあることが今回の事件から広く知られることになりましたが、実はしらす干し(ちりめんじゃこ)でもノロウイルスによる集団食中毒を引き起こすリスクがあるため、注意が必要です。

過去にしらす干しで発生した集団食中毒では死者20名

1950年、大阪府の泉州地方を中心とした地域で、行商販売されていたしらす干し(ちりめんじゃこ)を食べた人が激しい腹痛を伴う原因不明の下痢を起こしました。

しらす

発生前年に下山事件、三鷹事件、松川事件が発生していたため、当初は模倣犯が社会混乱を目的に毒物を混入したものと見られて捜査がされていましたが、大阪大学の藤野恒三郎教授が微生物による集団食中毒であることを解明しました。

この時に集団食中毒を起こしたの原因菌は、腸炎ビブリオでした。

腸炎ビブリオ

腸炎ビブリオは熱に弱いと言われ、菌を死滅させるためには、

61℃で 10 分間以上の加熱殺菌処理(65℃で5分間以上・中心温度が75℃で1分以上)

が推奨されています。

もし加熱がこれに満たない場合は、しらす干しは腸炎ビブリオに汚染されたままで食卓に上がってしまいます。

また、充分な加熱で腸炎ビブリオが死滅したとしても、

  • 水切りに使用する装置
  • 天日干しに使う網
  • 手袋
  • 一時保管用コンテナ

などが腸炎ビブリオで汚染されている場合、茹で上げ工程でせっかく殺菌されたしらすが再汚染されてしまいます。

このようにして、1950年に大阪府泉州地方で発生したしらす干しによる集団食中毒は発生したものと考えられます。

これと同じことがノロウイルスでも起きる可能性があります。

※腸炎ビブリオが産出する耐熱性溶血毒(TDH)と耐熱性毒素関連溶血毒(TRH)の二種類の毒素は加熱で破壊されないため、腸炎ビブリオの菌自体が加熱で死滅したとしても、食べた人に重い食中毒を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。

ノロウイルスが腸炎ビブリオよりも発生リスクが高い理由

過去記事「菌1個で食中毒は発症するのでしょうか?」で、食中毒を引き起こすためには何個の菌やウイルスが必要なのかをまとめました。

種類 必要個数 備考
ノロウイルス 10~100個程度  
O157 100個程度  
カンピロバクター 数百個程度  
サルモネラ菌 10,000~100,000個程度  
黄色ブドウ球菌 100,000~1,000,000個/g程度 菌数0でも、エンテロトキシンがあると危険
腸炎ビブリオ 1,000,000個以上 好条件下では10分に1回分裂・菌数0でも耐熱性溶血毒(TDH)と耐熱性毒素関連溶血毒(TRH)の二種類の毒素があると危険
コレラ菌 10,000,000,000個(100億個)程度  

※年齢・体重・体調・体質などによって変わるため、あくまで参考値です。

腸炎ビブリオは、条件が揃うと10分に1回分裂(1個の菌が5時間で100万個になります)するため、感染には100万個の生きた菌が必要とは言え、注意が必要です。

でも、ノロウイルスの場合は、

10~100個程度のウイルスでも感染を起こす

ため、腸炎ビブリオよりもリスクははるかに高いと言えます。

ノロウイルスは人間の体の中でしか増殖ができないため、食品に付いてから増えることはありませんが、10~100個程度のウイルスでも感染し、食中毒を引き起こすことには充分な注意が必要です。

ノロウイルスを死滅させるためには、

中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱

が必要だと言われています(培養ができないため、正確な加熱温度・時間は不明のようです)が、10~100個程度のウイルスで感染を引き起こすため、しらす干しを製造する過程では

  • 水切りに使用する装置
  • 天日干しに使う網
  • 手袋
  • 一時保管用コンテナ

などからウイルス移りが発生し、それが原因の集団食中毒を引き起こすリスクが腸炎ビブリオよりも遥かに高いです。

ただ、ノロウイルスは人間の体の中でしか増殖が出来ず、海の中を漂うノロウイルスは全てノロウイルスに感染した人が便と一緒に排泄したものが、下水処理場を経て海に流れ込んだものです。

ですから、ノロウイルス食中毒が流行している地域の沿岸で、流行から少し遅れてノロウイルスが漂い始め、流行が終わって暫くすると漂うノロウイルスの数も急激に減っていきます。

今まで発生していないからと言って、この先もしらす干しが絶対に安全な訳ではありません。

事実、2011年5月には千葉県で生しらすが原因と考えられる集団食中毒事例が報告されています。

生しらすがノロウイルスに汚染されていたということは、しらす干しでもノロウイルスによる食中毒が発生するリスクがあることを示唆しています。

しらす干し製造業者は、原料となる生しらすのノロウイルス汚染にご注意ください

ノロウイルスによる食中毒と言うと「カキ」ばかりが取り沙汰されますが、決してカキだけではありません。

ただ、カキなどの二枚貝はエサを摂るために多くの海水を取り込んで濾過するために、生物濃縮を起こして、高濃度にノロウイルスに汚染されてしまうためによりリスクが高まってしまうことは事実です。

ですが、ノロウイルスには、

10~100個程度のウイルスでも感染を起こす

強い感染力があるため、カキなどの二枚貝のように生物濃縮によらなくても、その地域でノロウイルスが大流行した場合は、シラスなどの魚は食中毒を起こすのに充分なレベルで汚染されている可能性があります。

しらす干しを製造する茹で上げの過程でノロウイルスは死滅しているとしても、

  • 水切りに使用する装置
  • 天日干しに使う網
  • 手袋
  • 一時保管用コンテナ

にノロウイルスが付着している場合、ウイルス移りを起こし、しらす干しによる集団食中毒を起こすリスクがありますので、充分にご注意ください。

今回、和歌山県と東京都で起きた刻みのりによる集団食中毒事件は決して他人事ではありませんので、しらす干し製造業に携わる方はぜひこの教訓を活かして頂き、安全なしらす干しを提供して頂きたいと願っています。

 - 食中毒

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