刻みのりで集団食中毒 立川市の小学校で1098人
2019/09/10
今月17日以降、東京都立川市の7つの小学校で合わせて1098人が嘔吐などの食中毒症状を訴えた事件では、東京都によってノロウイルスによる食中毒であると断定されていました。
ただ、食品や職員からはノロウイルスが検出されていなかったため、給食がどの時点でノロウイルスに汚染されたのかが不明とされていました。しかし東京都によって調査が進められた結果、ついに汚染源が特定されるに至りました。
その汚染源は、ちょっと意外な食品
刻みのり
でした。
この刻みのりは、大阪市都島区中野町2-5-2にある株式会社東海屋が卸したものですが、実は大阪屋が製造したものではなく、大阪市内の別の業者が委託を受けて製造したもの。
東京都から連絡を受けた大阪市が指導を行い、ノロウイルスが検出された刻みのりと製造日が同じで、2016年12月10日~2017年2月27日までに販売された100グラム入りの商品に関しては、今日(2月28日)から大阪屋が自主回収を行っています。
http://www.tokaiya.co.jp/school.html
ノロウイルスが検出された商品は、主に食堂や給食センターなどに納入された業務用の商品になるため、一般向けにスーパーなどには出回らないために安心と言えば安心ですが、こども達が食べる給食用ということになると、一刻も早く回収がされ、これ以上に被害が広がらないことを祈ります。
ちょっとショックなのは、下のように書かれているにも関わらず、小学校の給食用の卸している製品が、大阪屋が製造したものではなく、大阪市内の別の業者が委託を受けて製造したものだという点。
衛生管理・・・平成11年度大阪都島保健所の食品衛生管理監視票において96点を取得 。
出典:株式会社東海屋 http://www.tokaiya.co.jp/school.html
委託製造は珍しいものではなく、委託製造だから危険だということは言えません。
ですが、こども達が食べる給食の材料に関しては委託製造ではなく、自社でしっかりと衛生管理した上で製造されたものを使って欲しいと思います。(ただ、だからと言って必ずしも安全な訳でもありませんが。)
同じ刻みのりが使われた給食で既に2件の集団食中毒が発生しています
株式会社東海屋が販売(製造は大阪市内の別の会社)した刻みのりを使用した給食で、更に2件の食中毒が発生していたことが分かっています。
1月下旬、和歌山県御坊市で発生した800人あまりの集団食中毒
1月下旬に和歌山県御坊市で、幼稚園や小学校や中学校の生徒と職員の800人余りが食中毒を発症。原因は御坊市給食センターで1月25日に調理された給食で、磯和えからノロウイルスが検出されました。
この事件では、給食の磯和えからノロウイルスが検出されましたが、調理に携わった調理従事者25人のうち、10人の便からもノロウイルスが検出されたため、
- 磯和え(材料:下茹でをしたホウレンソウ、モヤシ、ちくわ、きざみのりなど)
- 調理従事者(25人中10人の便からノロウイルスが検出)
のいずれが汚染源であるかの特定ができなかったようです。(調理従事者も給食を食べていたため、どちらが先かが分からなくなったようです。)
2月下旬、東京都小平市で発生した90人あまりの集団食中毒
今回1000人を超える集団食中毒が発生した立川市に隣接する小平市でも2月23日~27日にかけて、小平市立小平第一小学校で給食を食べた児童や教職員が食中毒症状を訴える事件が起きていました。小平市立小平第一小学校の給食でも同じ刻みのりが使用されていることが分かっています。
和歌山県御坊市と東京都小平市で発生した集団食中毒では共に同じ刻みのりが使われていたことが分かっていて、現在東京都が関連性を調査していますが、同じ刻みのりを使っている以上、汚染源は同じだと考えて、間違いなさそうです。
御坊市で集団食中毒が発生した時に、もう少し突っ込んだ調査を行っていてくれたら、小平市と立川市での集団食中毒は防げた可能性もあり、残念です。
乾物は安全という固定観念を捨てる必要があります
昔から、腐敗を防いで、食物を長期保存するための方法として「乾燥」が用いられてきたため、私たちの意識の深いところに「乾物は安全」という固定観念が出来上がっています。
確かに、
- 高野豆腐
- 干し柿
- 干し椎茸
- 昆布
- 切干大根
- 魚の干物
- スルメ
- しらす干し/ちりめんじゃこ
などがありますが、これらは乾燥させることで黄色ブドウ球菌などの腐敗菌が増殖して腐ってしまうことを防いでいます。
海苔もそのひとつ。
ですが、乾燥させることで腐敗菌が増殖することを防げても、最初から材料が菌やウイルスで汚染されている場合は、乾燥させるだけではノロウイルスによる汚染を取り除くことができません。
その代表格が今回集団食中毒を引き起こしたノロウイルス。
この冬もノロウイルスが流行し、流行地周辺の近海には下水処理場をすり抜けた大量のノロウイルスが流れ込みました。その結果、養殖カキがノロウイルスに汚染されるケースが発生し、昨年12月には宮城県産カキがノロウイルス検出で出荷休止されました。
今回、1000人を超える集団食中毒を引き起こした東海屋の「刻みのり」は焼き海苔なので、
- 加熱処理が不十分で海苔を汚染したノロウイルスが死滅しなかった
- 加熱処理でノロウイルスが死滅ところに、加工過程で再びノロウイルスが移った
のいずれかだと考えられます。
東京都の調査によって明らかになると思いますが、1000人を超える食中毒患者を出すだけのノロウイルスが作業従事者からの菌移りだけで供給されるとは考えにくく、原料となった海苔がノロウイルスに汚染されていたことが判明するはずです。
今後はノロウイルスに汚染された海苔の原料を使ったとしても、
- 「焼き海苔」の加熱処理によってノロウイルスを死滅させる
- 原料に付着したノロウイルスが完成品に移らないような衛生管理の見直し
によって食中毒を起こさないように製造過程が改善がされると思います。
ただ、それがどの程度徹底されるかによっては、再び同様の集団食中毒が発生する恐れもあります。
次回、ノロウイルスによる集団食中毒が発生した場合に、もし海苔が使用されていた場合は、その海苔が汚染源である可能性を考えて、優先的に調査を行って頂きたいと思います。
それによって今回のように被害が拡大することがないことを心から祈っています。
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