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長崎県松浦市 男性がキンシバイを食べてフグ毒中毒

      2019/06/13

巻貝の一種キンシバイにはフグ毒があります

11月9日、長崎県は県在住の男性が自分で獲ったキンシバイ(錦糸貝と呼ばれる巻貝の一種)を食べたところ、意識不明の重体になったと発表しました。男性の血液からフグ毒と同じテトロドトキシンが検出されたため、キンシバイによる食中毒であると断定されました。

この男性は11月6日にキンシバイを食べ、間もなく体のしびれや嘔吐を起こし、病院に搬送され治療がされています。長崎県では2007年にもキンシバイ(錦糸貝)を食べたことによる食中毒が起きています。

巻貝では「バイ貝」と呼ばれる美味しい貝がいますが、キンシバイは「バイ」が付いていますが、食用のバイ貝ではありませんので、キノコと同じで素人が判断するのは止めた方が安全です。

バイ貝(By Google)

キンシバイ(by Google)

フグもキンシバイもテトロドトキシンを生成することはできません

フグというと毒を持った生き物の代表格ですが、実は自分で毒を作りません。フグも、そして今回の食中毒を起こしたキンシバイも、別の毒を作る生き物を捕食することで体内に毒を蓄積していきます。進化の過程でテトロドトキシンに対する耐性を持ったために死なずに蓄積していきますが、無理やり濃度の高いテトロドトキシンを人間が与えるとやっぱり死ぬそうです。

テトロドトキシンを生成するのはビブリオ科ビブリオ族の細菌です

名前の通り、腸炎ビブリオの親戚筋です。中にはコレラもいる、猛毒一族です。

テトロドトキシンを生成するのは、

V. alginolyticus(ビブリオ・アルギノリチカス)

という細菌です。

同じようにV. alginolyticus(ビブリオ・アルギノリチカス)が生成したテトロドトキシンを生物濃縮によって体内に蓄積することで猛毒化してしまう海の生き物には、

  • 魚類:トラフグ・クサフグ
  • 甲殻類:スベスベマンジュウガニ・カブトガニ・ウモレオウギガニ
  • タコ類:ヒョウモンダコ
  • ヒトデ類:トゲモミジガイ・ハナムシロガイ
  • 貝類:キンシバイ・ボウシュウボラ

などがいます。

フグ、スベスベマンジュウガニ、ヒョウモンダコは猛毒で有名になっていますが、バイ貝に似たキンシバイは盲点かも知れません。くれぐれも素人判断で自分や友人が獲った巻貝を食べたりしないでください。

アカハライモリもテトロドトキシンを持っています

過去記事「イモリの黒焼き」で書きましたが、イモリの黒焼きとして「千と千尋の神隠し」にも出てくるアカハライモリですが、これもテトロドトキシンを持っています。微量なので、黒焼きを食べても食中毒は起こさないかも知れませんが、止めた方が安全です。(致死量に至るには5キロのイモリ=500匹以上!が必要という説もあります)

アカハライモリの他にも海水以外に住む生物でテトロドトキシンを持つ生物がいますが、その毒の起源はまだ分かっていません。V. alginolyticus(ビブリオ・アルギノリチカス)がテトロドトキシンを生成する遺伝子については現在も研究中だそうで、それが解明できたら、淡水や土壌中に住むテトロドトキシンを生成する細菌についても分かってくるかも知れません。それまでは、アカハライモリがテトロドトキシンを持つ理由が分かりませんので、他にも同じような生き物がいる可能性があります。余り食用にしない生き物に挑戦するのは避けた方が安全かも知れません。

万が一、テトロドトキシンで食中毒を起こしたらどうすればいいのでしょうか?

テトロドトキシンは高熱でも分解されず(300℃以上にも耐えます)、分解もされませんので、とにかくこの毒を持つものを口にいれないことが重要です。人間の致死量は1~2ミリグラムで、毒性は青酸カリの850倍と言われています。

この毒の恐ろしいところは、解毒剤や治療方法がないことです。摂取した場合は、体内で分解されて、排出されるまで待つしかありません。しかし、この毒を摂取すると神経伝達が遮断されてしまい、麻痺を起こします。脳から肺へ呼吸を指示する指令が遮断されてしまうことから、早い段階で呼吸が停止してしまい、それが死因となります。

逆を言うと、神経伝達が遮断されるだけで、不可逆の身体を破壊する毒素ではないため、呼吸が停止しても、人工呼吸を速やかに行い、自発呼吸ができるようになるまで継続すれば救命できることが多いとも言われています。

ですから、テトロドトキシン中毒が疑われる食品を食べて麻痺が起きた場合は、至急救急車を要請し、到着するまでは人工呼吸の準備をして待つ必要があります。呼吸が止まった場合は、至急人工呼吸を行いながら救急車を待ちます。この毒による中毒の場合、人工呼吸だけを実施して、

心臓マッサージは必要ありません(心停止があった場合を除く)

腸炎ビブリオや黄色ブドウ球菌による食中毒との見分けが肝心です。

テトロドトキシンによる食中毒の見分け方は以下の通りです。

摂食後の20分程度から数時間で症状が現れる。

  • 第1段階:指先や口唇部および舌端に軽い痺れ。目眩により歩行困難。頭痛や腹痛の場合も有り。
  • 第2段階:運動麻痺が進行、嘔吐、知覚麻痺、言語障害、呼吸困難、血圧降下。
  • 第3段階:全身の麻痺症状、骨格筋の弛緩、呼吸困難及び血圧降下が進行。
  • 第4段階:意識の消失、呼吸停止。死亡。(但し、呼吸停止後も暫くは心臓の拍動が続くことがある)

出典:Wikipedia「テトロドトキシン」

症状での見分け方はかなり難しいので、症状よりも何を食べたかで判断した方が確実かも知れません。

ご注意ください:医療従事者や看病する身内の方へ

テトロドトキシンによる食中毒の特徴は、神経伝達が阻害されるために呼吸ができなくなり死亡につながることがありますが、患者さんは死ぬ直前まで意識がはっきりしています。酸欠で意識が朦朧とするまでは、恐怖の中で周囲の対応を見聞きしています。

病院に搬送され、ICUで治療を受け始め、テトロドトキシンが体内で無毒化され、麻痺から解放されるまでの間も、患者さんは周囲のやり取りを見聞き出来ていることが多いと言われていますので、周囲での会話には注意した方が安全です。知人から聞いた話では、フグ中毒を起こした患者さんの周囲で不用意な発言をしてしまって、意識が回復してからトラブルになる例も実際にあるそうです。病院に搬送され、人工呼吸器が繋がれたら「もう安心」とつい気が弛んでしまいますが、口にはくれぐれも注意しましょう。

 - 健康, 安全, 生活, 病原菌, 食中毒, 食品

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