のどが渇いたと思うより前のこまめな水分補給は却って危険です
2019/06/13
人間も含めた動物の体はすごくよく出来ていて、汗などで水分を失って体液の濃度が濃くなるとのどが渇きを感じて、水を飲むように促します。体重の2%の水分を失うと軽い脱水状態になりますが、のどが渇くため、自発的に水を飲みます。3%の水分を失うと脱水状態が進行しているため、更に強いのどの渇きを感じ、体は失った水分を取り戻そうとします。
問題はそれ以上の水分を失った時です。体は調節機能を失い始め、のどの渇きを感じなくなってしまいます。そして脱水症状は進行し、最悪は死を招くことになります。
失った水分量と症状
体重の3%に当たる水分を失った頃まではのどの渇きを感じるため、自発的に水分補給をしようとしますが、それを超えるとのどが渇きを感じなくなり、また汗もかかなくなるため、水分補給がなれなくなる恐れがあります。
のどの渇きを感じる2~3%の水分を失った時点で、こまめに水分補給を行い、4%以上の脱水を起こさないように心がけることが重要です。水分の補給が自由にできない状態に長時間置かれて、以下の症状が出た場合は、速やかに経口補水液で脱水状態を改善してください。
失った水分(体重比) | 体重60キロの場合 | 症状 |
2% | 1.2キロ | のどの渇き |
3% | 1.8キロ | のどの強い渇き・ぼんやりする・食欲不振 |
4% | 2.4キロ | 皮膚の紅潮・イライラ・体温上昇・強い疲労感・汗と尿の減少 |
5% | 3.0キロ | 頭痛・熱が体にこもる感じ |
8~10% | 4.8~6.0キロ | ふらつき・けいれん |
10%以上 | 6.0キロ以上 | 失神・腎機能不全・生命の危険 |
のどの渇きを感じる前の水分補給は却って危険です
脱水状態を防ぐために「のどが渇いたと思うより前に水分を補給する」ように奨励されていた時期があります。実際、今でもそのような指導も残っています。しかし、軽い脱水状態(体重の2%)においては生理現象は正常で、かつ運動能力も減衰していません。軽い脱水状態(2%)になるまでは余りのどの渇きを感じませんが、それは未だ体が十分に耐えられる状態であることを示しています。無理に水分補給をすることで、水中毒を起こす恐れがありますので、水分補給は必ずのどの渇きに応じて行ってください。「渇いたら、飲む」です。
ランニング学会が「マラソンレース中の適切な水分補給について(PDF)」の中で以下の見解を述べています。
われわれ生物にとって、水はなくてはならないものです。マラソンレースでは、多量の汗をかくことから、汗によって失われた水を適切に補う必要があります。しかし、人の体液の恒常性では、ある程度の不足状態には耐えられても、過剰状態への対応能力はいたって低く、水の過剰摂取によって思わぬ障害を起こすことがあります。実際、水の飲み過ぎによる水中毒の事故も報告されています。このようなことから、マラソンレース中の水分補給では、脱水を予防し、また水分過剰にもならないよう、相反する要求を同時に満たさなければならないことになります。これは、一見むずかしい課題のようですが、ある程度の不足状態が許容されるのであれば、それは、それほどむずかしい課題ではなくなります。そして、ある程度の不足状態、すなわち 2% 程度の脱水であれば、人体の生理的機能や競技成績は損なわれない、というのが今日の科学的見解です。また、その具体的な水分補給量としては、むしろ客観的な数値をよりどころにするよりも、「喉の渇き」に応じて水を飲む方法が推奨されています。
出典:マラソンレース中の適切な水分補給について(ランニング学会)
汗をかいているうちは、のどの渇きに応じた給水をしましょう
汗をかいている時は、体重の2~3%の水分を失った軽い脱水状態ですので、のどの渇きに応じた給水をすれば問題ありません。
万が一、汗をかかなくなり、体温の上昇や皮膚の紅潮が見られる場合はのどの渇きを感じなくても速やかに給水しましょう。脱水症状が進んで、意識がもうろうとしている場合は本人には正しい判断ができなくなっています。周囲のひとが気付いたら、吸水を促してください。
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