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青天の霹靂 川越南高校で野球部員が落雷で重体

      2019/06/12

再び痛ましい事故が起きました。昨日、埼玉県川越市で野球の試合中だった高校1年生の野球部員に雷が落ちて重体になる事故がありました。被害にあったのは、練習試合で来ていた和光高校の野球部員の1年生。親は複雑な思いだと思います。一日も早く快復されることを祈っています。

2014年には落雷で野球部員が死亡する事故も起きています

過去記事「青天の霹靂 晴れていたのに落雷で死亡」で書きましたが、雨も降っていないにも関わらず、晴れたように見える空から突然落雷があることがあります。

2014年8月6日には、愛知県扶桑町の私立誠信高校のグラウンドで、練習試合をしていた野球部員が落雷を受け、死亡する事故がありました。降っていた大粒の雨が止んで、晴れ間が見えたので守備についたところで落雷を受けたそうです。

積乱雲による雨が降った場合、晴れ間が見えても暫くは落雷の危険があるため、避難状態を解除するべきではありません。

しかし、今回は事情が異なります。

未だ雨は降っておらず、雷鳴も聞かれていない状態でも落雷。

まさに「青天の霹靂」。

今回の事故を防ぐことは出来なかったのでしょうか?

雷は積乱雲から30度外まで落ちる可能性があります

雷は雨を伴うと考えられがちですが、それは間違っています。

雷は積乱雲の底の端から30度の角度までは落ちる恐れがあると言われています。

では、30度の角度だとどこまで届くのでしょうか。

雷雲の底は高さ3~4キロ

と言われています。それを使って計算すると、

雷雲の底の端から1.5~2.0キロ離れたところ

までが「射程距離」に含まれます。

(ただ、この射程距離には諸説あり、Wikipediaには20kmとも書かれています)

積乱雲の真下に入らない限りは落雷は大丈夫と思っている方も少なく無いと思います。ですが、実際には1.5~2.0キロ離れている場所でも落雷被害にあう恐れがあります。

1.5~2.0キロ離れていれば、まだ晴れていて、雨が降っていないことも考えられます。

今回の報道では、

現場は、午後6時33分現在も、雨は降っていない。

といった「雨が降っていないにも関わらず落雷」という捉え方が目立ちましたが、積乱雲による

は分けて考えるべきだと思います。

この事故を防ぐことは出来なかったのでしょうか?

当時、川越市には

雷注意報

が出されていました。

日本高校野球連盟は2009年に加盟校に対して以下のような通達を出しています。

  • 気象台や天気情報会社から雷の情報を入手する
  • 雷が近づいてきたら試合を中断する

また、2014年に落雷で野球部員が死亡した愛知県の高校野球連盟は、以下のように指導していました。

  • 練習試合でも、雷が一度でも光れば直ちに中断する
  • 雷注意報が出ていても周囲に落雷の気配がなければ中止や中断は絶対ではない

このように、雷に対しては明確な基準はなく、かなりが現場の感覚に委ねられています。

今回事故が起きた川越南高校の野球部関係者が、雷注意報が出されていることを認識して、どのような判断をしたのかは不明です。

  • 雨が降っていなかった
  • 雷鳴が聞かれなかった

からと、練習試合続行の判断を下したのかも知れません。(※万が一、何も考えていなかったとすれば、それは監督者としての怠慢です。)

ただ、積乱雲と雷に関する十分な知識があれば防げた可能性もありますので、事故が起きてしまったことは残念です。

今回の事故では、

  • 雨が降っていなかった
  • 突然雷が落ちた

との証言に加え、事故が起きる少し前から川越市上空で急激に雨雲が成長していったことが分かっています。

それを踏まえると、川越南高校から少し離れた場所で積乱雲が発生して、急激に成長し、

第一発目の落雷が川越南高校に落ちてしまった

ではないかと考えられます。

その場合は、

  • 雷が近づいてきたら試合を中断する
  • 練習試合でも、雷が一度でも光れば直ちに中断する

といった野球連盟の基準は役に立ちません。

野球中の落雷事故を防ぐためには関係者が注意するしかありません

従来の

  • 雷が近づいてきたら試合を中断する
  • 練習試合でも、雷が一度でも光れば直ちに中断する

という基準では今回の事故を防ぐことはできません。

近くで発生し、急速に発達する積乱雲に対応するには、積乱雲が形成・成長する際の特徴を知り、それに対して常に注意を払い、第一発目の落雷で事故にあわないようにしなければなりません。

雷を起こす積乱雲が発生して、成長していく過程では、強い上昇気流が生まれます。

この時、地表では

雲のある方向に向かう温度が低く、強い風

が吹きます。「冷たい風」と表現されることもありますが、気温によっては「冷たい」とまでは感じず、少し涼しく感じられる程度の場合もあります。ただ、いずれにしても、風もなくうだるような暑さの中で、急に一定方向に向かって風が吹き始めたら要注意です。

上昇気流によって急激に成長している過程では全く雨が降らない可能性が高いです。

そして、ピークまで上昇しきった湿った空気が氷などの粒になり、下降サイクルに入ると、氷などの粒がぶつかって静電気が発生し、雲の中に電気が蓄積され、地表面との電荷の違いによって電圧が高まり、やがて放電されます。それが落雷です。

ですから、雨と同時に落雷が発生する可能性もありますが、雨が地表に到達する前に落雷が発生してもおかしくありません。

以上のことを踏まえて、

雷注意報が出ている

状態で、

  • 半径数キロの範囲内に積乱雲が見え(ビル・山・鉄塔などのランドマークを参照)、積乱雲が自分達のいる方向に流れてきている
  • 半径数キロの範囲内で雲が上に伸び始め、積乱雲の形になり始めている
  • 温度が低く、強い風が積乱雲のある方向に吹き始めた

という状態が確認された場合は、練習・試合を中断して、安全な場所に退避した上で、暫く様子を見るのが安全です。

また、気象庁などが出している雷に関する情報を有効に活用しなければなりません。

学校などでは、自治体のメールサービスなどを通じて注意報・警報を確認している場合もあると思いますが、それだけではなく、様々なソースを利用して、自分達で落雷の可能性を検討して、勇気を持って中止の判断をして頂きたいと思います。

 - 学校等, 安全, 小中高, 生活, 育児, 自然現象

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