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軽井沢バス転落事故 ギヤがニュートラルで制動不足か

      2019/06/12

長野県軽井沢町でスキーツアーの大型バスが崖下に転落して15人が亡くなった事故で、道路脇に設置された監視カメラに写っていた蛇行するバスの速度を解析したところ78 km/h出ていた可能性があるとニュースで報道されていましたが、事故車両から運行記録計(タコグラフ)の記録紙が取り出され、解析がされた結果、事故直前の速度は時速80km前後だったとみられていて、制限速度50 km/hの道路をかなりの高速で走行していたことは間違いないようです。

原因はギヤをニュートラルに入れたことによる制動力不足か

事故車両を調査している中で、ギヤがニュートラルに入っていることが分かりました。長い下り坂などでは、ベーパーロックによる制動不足・制動不能を防ぐためにエンジンブレーキを使わなければなりませんが、事故車両はギヤがニュートラルに入ってしまい、

エンジンブレーキが全く効いていない状態

であった可能性が出てきました。

バスを製造したメーカーの立ち会いで車両を調査したところ、ギヤボックスなどに故障などは見当たらないため、引き続き運行記録計(タコグラフ)の記録紙の解析を行い、どの時点からギヤがニュートラルに入っていたかなどを調べられています。

どんな可能性が考えられるのでしょうか

道路脇の監視カメラに写っていた映像によれば、1km手前の峠付近の映像ではバスは特に異常もなく走行していますが、事故現場から250m手前の左カーブでは、高速(画像から解析された速度は時速78km)で走行し、センターラインをまたいで、車体は右に傾いています。

250m時点では既に高速走行を始めていて、センターラインを超えながら、車体も右に振られていますから、これよりも前に制動力を失って、運転手はパニック状態に陥っていた可能性があります。

ヘアピンカーブが続く上り坂が終わると、緩やかなカーブが続く下り坂が始まります。

  1. 緩い下り坂に入り、気がつけばかなり速度が上がってしまっていた
  2. コーナーが近づいてきたので、減速しようとブレーキペダルを踏む
  3. それまでのヘアピンカーブの連続でブレーキを使い過ぎて、ベーパーロックを起こしたブレーキが反応しない
  4. かなりの速度でコーナーに突っ込んでしまい、エンジンブレーキを使おうと慌ててシフトダウン
  5. シフトダウンをミスしてギヤが抜けて、ニュートラルに入ってしまった
  6. ニュートラルに入ったことで完全にエンジンブレーキを失い、バスがコーナーで大きく振られる
  7. 下り坂で前輪に荷重がかかったバスは尻振りが止まらない
  8. 運転手は尻振りした状態をステアリング操作で運転するのがやっとで、ギヤを入れてエンジンブレーキを復活することができなかった
  9. 下りが続く中、左右に振られた車体が片輪走行を始め、操縦不能に陥り、左コーナーで右側に転落・衝突

という流れが推測されます。

この運転手は大型バスは不慣れなので乗りたくないと当初言っていたとされています。もし、マイクロバスの運転に慣れている場合、

  • 排気ブレーキ
  • ホイールパークブレーキ

は装備されておらず、万が一の場合にはワイヤー式のパーキングブレーキを使って制動を試みようとするかも知れません。それが不慣れな大型バスであったため、

  • シフトレバーの形状
  • 排気ブレーキの操作
  • ワイヤー式のパーキングブレーキがない

などによって、一気にパニックに陥った可能性が考えられます。

事故現場の少し先には緊急避難所があり、現場からも見えています。そこに乗り上げることで今回のような事故を防げたかも知れません。もう少しだっただけに残念です。もう少しだけ速度が落ちていれば。悔やまれます。

緊急避難所

大型バスに不慣れな運転手に運転を強要したイーエスピーの責任は非常に重い

下りの坂道でギヤをシフトダウンしてエンジンブレーキを使うことはマニュアル車走行では当たり前です。ただ、車両の種類によってどの程度の坂でどのギヤを使うかは変わりますので、そこは経験が必要です。

今回事故を起こした運転手は採用の時点で「大型バスは乗りたくない」と意思表示をしていました。経験が不足していることを自覚されていたためであり、正しい判断だと思います。それを人材不足を理由に無理矢理大型バスを運転させるのは間違いです。

事故を起こしたのは確かに亡くなった運転手であり、責任もありますが、運転手自身が被害者であって、イーエスピーが本当の加害者です。ただ、運転手も断ることも出来た訳なので、全くの被害者であるとも言えない辛さがあります。

1月21日夜、国交省と警視庁が東京都新宿からスキーツアーなどに出発する前の貸し切りバスに対し、緊急監査を実施しました。バスに監査官が実際に立ち入って、安全対策を確認をしたところ、運転者の休憩時間と場所が記載されていないなど、運行指示書の不備などの問題が

6台のうち5台発覚

しました。

あれだけの事故が業界内で発生していながら、全く他人事としか受け取っていないバス運行会社の危機管理意識には憤りを感じます。

第2、第3のイーエスピーが数多く存在している可能性が十分にあります。

これからスキーやスノボ、卒業旅行でTDLなどに行かれる学生さんも多いと思います。どうかツアー選びの際は信用できるツアー会社を探し、できればバスを運行する会社についても確認をしておきましょう。

お子さんがバスツアーに行く予定の保護者の皆様も是非こども任せにせず、安全面について確認をしてあげてください。

ブレーキのフェード現象の発生なし

事故を起こしたバスのブレーキを調べたところ、ブレーキにフェード現象を起こした形跡がなかったと報道されていました。フェード現象は加熱したブレーキディスクによってブレーキの効きが悪くなることを指しますので、事故車両を調べても分からないと思います。恐らくベーパーロックの発生が無かったということだと思いますが、それが発生せず、ブレーキが正常に作動するのになぜ十分な原則を行わずに、一時は100 km/h、衝突時は80 km/hの高速で走行したのか、謎が残ります。

事故を起こしたバスには、フィンガーシフトという変速機が装備されているそうです。この変速機は、車速、エンジン回転数、トランスミッション入出力軸の回転数はセンサーでモニタリングされていて、無理な変速操作ができないようになっています。そのため、慣れが必要とされています。

事故を起こした運転士は大型バスが苦手だと言っていたといいますので、不慣れなフィンガーシフトの操作でギヤ抜けを起こして、ニュートラルに入ってしまい、エンジンブレーキがない状態でフットブレーキだけでは制動出来ず、高速でコーナーを曲がろうとして尻振りが始まり、更に制動ができなくなり、衝突に至ったのかも知れません。

いずれにしても、不慣れな運転士に利益のために運転を無理強いしたイーエスピーの責任は非常に重いです。

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