愛知県東海市のすし店で食中毒 3人からノロウイルス
2019/06/12
愛知県 保健医療局生活衛生課はウェブサイト上の「食品の安全に係る事件・事故及び違反者等の公表について」において、愛知県東海市の飲食店でノロウイルスによる食中毒が発生したことが公表しました。
12月13日の昼にすしや刺し身を食べた33歳から86歳の男女32人が発熱や下痢などの症状を訴えました。知多保健所が調べたところ、32人のうち3人からノロウイルスが検出されました。幸いなことに、食中毒を起こした32人全員が快方に向かっているそうです。
施設内の清掃・消毒などが終わるまでの当分の間、営業禁止措置がとられました。
愛知県はこの処分の理由を「食中毒病因物質に汚染された疑いのある食品を提供したこと」としていますが、それが何であったのかは明らかにしていません。
こういった飲食店での食中毒が発生した場合、症状を訴える利用客の検査は勿論、従業員についても検査をしますし、調理場などの検査も行います。
- 飲食をした客の便の検査
- 従業員の便の検査
- 残っている食品の検査
- 調理場(シンク・調理器具など)の検査
今回のケースでは、処分の理由は「食中毒病因物質に汚染された疑いのある食品を提供したこと」とだけ書かれていますので、従業員も残った食品も調理場も「シロ」だったものと思われます。
恐らく13日に消費した食材の何かがノロウイルスに汚染されていたのでしょう。
店側の管理に問題がなくても、仕入れた食材がノロウイルスに感染していて、それを生食用として提供した場合、ノロウイルスを原因とした食中毒が発生してしまいます。
メディアが「どこの店」であるかを報道していますが、今回の食中毒について消費者が本当に知りたい・知るべきなのは、何を食べて食中毒を起こしたかなのですが、愛知県が特定出来ていない以上はどうしようもありません。
今回の食中毒事故によって愛知県は「施設内の清掃・消毒などが終わるまでの当分の間、営業禁止措置」を取らせていますが、保健所の検査でノロウイルスが検出されていない以上、清掃や消毒は余り意味がないかも知れません。念のための清掃・消毒は意味がないとまでは言いませんが、ノロウイルスに汚染された食材が何であったかを特定する努力に力を入れて欲しいと思います。
ノロウイルスによる食中毒は食品を介しても感染します
ノロウイルスによる食中毒が発生した場合、従業員からノロウイルスが検出されたり、調理場からノロウイルスが検出されたりすると、飲食店のずさんな管理によって食中毒が発生してしまったと思いがちですが、そうばかりではありません。
従業員が職場以外でノロウイルスに感染し、ノロウイルスが付着した手で調理したことが原因で発生する食中毒もありますが、従業員自体も店が仕入れた食材を食べた(まかないなど)ことで食中毒を起こしている可能性も十分あります。
ノロウイルスがカキの生食で感染する恐れがあることは最近かなり知られて来ています。
なぜカキの生食でノロウイルスの感染が多いのでしょうか?
カキに問題があるわけではありません。
カキなどの二枚貝は、海水中のプランクトンを海水ごと吸い込んで、濾過して吐き出すことによってエサをとっています。この海水を吸い込んで吐き出すという活動によって、下水道を通じて海に流れ込んでノロウイルスを体内に取り込んでしまいます。これを繰り返していると、カキ体内で「生物濃縮」が起きてしまい、それを食べた人に食中毒を起こします。
同じ生食をする二枚貝のうち、赤貝やホタテがノロウイルスによる食中毒が少ない理由は、カキを生食する場合は内蔵ごと食べてしまうためなんです。二枚貝が生物濃縮の結果溜め込んだノロウイルスは内臓(中腸腺)に存在しています。カキはその内臓(中腸腺)ごと生食してしまうため、ノロウイルスを体内に取り込んでしまうことになります。一方、赤貝やホタテは内臓(中腸腺)を取り除いてから食べるためノロウイルスに感染する可能性は低いですが、内臓を取り除く際の水洗いが不十分であったり、まな板や包丁などの調理器具が汚染されたままであると、ノロウイルスに感染する可能性はあります。
カキ以外にノロウイルス感染を引き起こす恐れがある食品
カキ以外にノロウイルスを起こす可能性がある食品は以下の通りです。
- バカ貝
- 赤貝
- ホッキ貝
- トリ貝
- ホタテ貝
- アサリ(加熱調理が不十分な場合)
- シジミ(加熱調理が不十分な場合)
- ムール貝(加熱調理が不十分な場合)
二枚貝ばかりかと言えば、実はそうではなく、サザエやアワビなどの一枚貝もリスクはゼロではありません。一枚貝は海水を吸い込んで吐き出してエサをとらないため、汚染のリスクは低いですが、ノロウイルスが流行し、下水道から大量のウイルスが海に流れ込む時期には感染リスクはわずかですが上昇します。
そして、河口に近い場所に生息する魚やアサリなどの二枚貝をエサとする魚の体内でノロウイルスが生物濃縮を起こしている可能性があります。
- クロダイ
- キチヌ
- キュウセン
二枚貝をエサとしない魚でも、河川や河口付近でとれる魚や生のまま内臓ごと食べるような魚には注意が必要です。
- コイ
- シラス(カタクチイワシ・マイワシ・イカナゴなどの稚魚)
- キス
- ハゼ
- スズキ
- ボラ
貝と同じように、身の部分にノロウイルスはありませんが、調理する際に身の部分に付着し、食中毒を起こす恐れがあります。また、生シラスはまるごと食べるため、ノロウイルスに汚染されている場合は感染の可能性があります。
実は水道水もノロウイルスで汚染されている恐れがあります
ノロウイルスに感染すると体内で増殖し、便と一緒に排出されます。トイレで流され、下水管を通って、下水処理場へ流れ込みますが、人の体外で増殖することはできませんが、下水処理の過程では死滅することはありません。
そのため、下水処理場で処理され、河川に流される水の中にはノロウイルスが残っていて、これが再び上水道に使用される際の浄化・殺菌処理では死滅させることができずに、水道水を汚染してしまいます。
ですから、ノロウイルスが流行している時期の、河川、井戸水、水道水はノロウイルスに汚染されている恐れがありますので、河川や井戸水は勿論ですが、水道水であっても体力や免疫力が弱っている人は加熱してから飲むようにした方が安全です。
愛知県ではノロウイルスなど「感染性胃腸炎警報」が発令中
愛知県では現在ノロウイルスを始めとした感染性胃腸炎が流行していて、愛知県は「感染性胃腸炎警報」を発令しています。
ノロウイルス感染が流行しているということは、感染者が排出するウイルス数もピークに達しているため、下水道を通じてノロウイルスが大量に流入する伊勢湾と三河湾でとれる二枚貝や魚の生食には注意が必要です。
今回食中毒が起きた店がある東海市は、名古屋港に面していますが、名古屋港の魚を店に出す訳ではありません。ですが、場所的に三河湾や伊勢湾で取れた地場の魚を出す機会も多いため、仕入れた食材の中にノロウイルスに汚染された食材が含まれていたと考えるのは自然です。
ノロウイルスは人間の体内のみで増殖し、二枚貝や魚の中で増殖することができません。
そのため、ノロウイルスによる食中毒に関しては「食材が新鮮だから大丈夫」ということは言えません。どんなに新鮮であっても、生食や不十分な加熱調理で食べてしまうと感染する可能性があります。
ノロウイルスは85℃以上1分間以上の加熱によって感染性を失う
どんなに新鮮であってもノロウイルスに汚染されている食材を食べると感染を起こします。そして、10~100個程度のウイルスが体内に入っただけで感染を起こす(※体質・体調などにもよります)恐れがあると言われていて、非常に厄介なウイルスなのですが、85℃以上1分間以上の加熱でウイルスが感染性を失うことが分かっていますので、これからの時期、暫くの間は感染の可能性がある食材の生食は避ける方が安全です。
生食を避けても、同じまな板で調理をされた他の食材へのウイルス移りも心配ですので、免疫が弱っている、他の病気にかかっている、高齢などの場合は、寿司や刺し身を出す店は避けておくと安心です。
とは言え、寿司や刺し身を出す店を避けるとなると選択の幅がかなり狭くなってしまいますので、そのような店に行く場合は、寿司や刺し身以外にも、サラダ、酢の物、漬物など生で食べる料理を避けて、加熱調理をされた料理を頼むようにすれば安心です。
お店も最大限の注意を払ってくれているはずですが、どんなに新鮮な食材を入れてもノロウイルスによる汚染を避けることが出来ない以上、流行期には特別な警戒を払いたいですね。
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