有毒アジサイをシカが食べられる理由
2019/06/13
過去記事「アジサイ(紫陽花)の葉には毒があります」と「毒のあるアジサイを食べるシカとイノシシ」で紹介しましたが、アジサイ(紫陽花)にはアルカロイドの一種「フェブリフギン(febrifugine)」が含まれているため、食べると食中毒を起こすと言われています。これはかなり広く知られているため、今回静岡県西伊豆町でシカ避けの電気柵による死傷事故が起きた際に、なぜシカがアジサイを食べられるかと多くの人が疑問に思っているようです。
草食動物と植物は常に戦っています
食べられたくない植物は、食べられないようにシアン化物、アルカロイド、サポニン、タンニン、ニコチンなどの毒を持ち、何としても食べたい草食動物が解毒作用を身に付けるという生存競争が常に繰り広げられています。植物が身を守るために生成する二次化合物の種類はなんと10万種類にも及ぶと言われています。
シカは2つの方法で毒のある植物を食べようとします
そんなあの手この手で食べれまいとする植物に対し、シカなどの草食動物は以下の2つの方法で対抗します。
順応
毒のある植物を少しずつ食べていくことで、腸内細菌が毒を分解する酵素を出すようになり、体が順応できるようになると本格的に食用にするという方法。
解毒
ベト場(土舐め場)で土や粘度を舐めることでCa(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Na(ナトリウム)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、P(リン)などを摂り込んで、植物に含まれるシアン化物、アルカロイド、サポニン、タンニン、ニコチンなどを解毒する方法。
アジサイに含まれるアルカロイドの一種「フェブリフギン(febrifugine)」はこのように対応や解毒されて、シカはアジサイを食用にしているものと思われます。
アジサイ無毒でシカウマウマかも知れない問題
実は1点気になることがあります。
アジサイの葉を食べると食中毒を起こす場合があるのは確実なのですが、その時に抽出される毒がまちまちで、毒が抽出されない場合もあるようです。一応最有力候補がアルカロイドの一種「フェブリフギン(febrifugine)」であるというだけで、これを含まないアジサイもあるようです。ひとの食中毒の原因が「フェブリフギン(febrifugine)」であるかどうかもイマイチ良く分かっていないらしいことが分かりました。
ということは、シカの食害で丸裸にされているアジサイは全て無毒の種類だけのことかも知れません。だとすると、かなりショックです。
シカがどのように有毒のアジサイを食べるに至ったのかは興味があったのですが、それよりもそもそもアジサイ(紫陽花)に毒があるのかどうかっていう根本的な問題に非常に興味が出てきました。
今後の研究を期待しています。
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