シャラポア選手がドーピング陽性
2019/06/12
全豪OPでシャラポア選手がドーピング陽性
元世界王者で、生涯グランドスラムも達成した現在世界ランキング7位のマリア・シャラポワ選手(Maria Sharapova)が全豪OPで実施されたドーピング検査(1月26日実施)で陽性反応が出たことを記者会見で明らかにしました。
検査で陽性が出た薬物は
メルドニウム(Meldonium)
という薬品。シャラポア選手によれば2006年から使用していたそうですが、今年になってWADA世界反ドーピング機関が禁止薬物に追加登録したことに気づかずに、使用してしまったとのことです。
3月7日に重大発表があるというニュースが流れた時、ほとんどの人がシャラポア選手が引退を発表するものと思っていました。
最近は故障が多く、年齢的にも引退もやむ無しと思っていましたが、本人はまだまだ現役で頑張るつもりだということで、安心しました。今回の会見でも、
多くの方々は、今日、私が引退を発表すると思っていたでしょう。でも引退会見を行うとしたら、ロサンゼルスの市街地にあるホテルは選ばないでしょうし、ましてやこんな地味なカーペットでは。
シャラポア選手らしい言葉です。
これ(ドーピング検査で陽性)によって何らかの影響が出ることは分かっています。こんな形でキャリアを終えたくはない。もう一度プレーをするチャンスが与えられることを、心の底から願っています。
と今年開催のリオ五輪を見据えたコメントもしています。
ロシアのテニス連盟は「シャラポワ選手がリオデジャネイロ五輪に出場できることを信じている。」と声明をだしていますが、国際テニス連盟は
- 3月12日から暫定的な出場停止処分が科される
- 最終決定は保留される
としていて、最終的な処分についてはまだ分かっていません。
2016年からメルドニウム(Meldonium)が新たに禁止薬物に加えられたことを知らずに誤って使用したという主張が正しいとすれば、寛大な処置が取られることを期待しますが、同時に「禁止されているとは知らなかった」として意図的に薬物を使用するケースとのバランスを取るのが難しいと思います。
引き際を考えながら、故障を抱えた体で必死にプレーしている中でのミス。個人的には短期間の出場停止処分に終わってくれることを祈っています。
メルドニウム(Meldonium)とはどんな薬品なのでしょうか
自転車のエドゥアルト・ヴォルガノフ選手(カチューシャ、ロシア)が、2016年1月14日の検査で陽性になっています。
メルドニウム(Meldonium)は、Mildronate(製品名)とも呼ばれ、
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 慢性心不全
- 急性虚血性脳卒中
の治療薬として、リトビアの製薬会社「Grindeks」で製造され、ラトビアの主要輸出品になっています。現在、ロシア、ウクライナ、モルドバ、ベラルーシ、アゼルバイジャン、アルメニアなどの国で治療薬として入手が可能です。
WADA世界反ドーピング機関では、このメルドニウム(Meldonium)を、
S4 HORMONE AND METABOLIC MODULATORS (ホルモン調節薬および代謝調節薬)
に分類して、禁止しています。
もし心臓に疾患がある、またはホルモン調節を行う必要があって医師からメルドニウム(Meldonium)を処方されている場合は、WADA世界反ドーピング機関が禁止薬物に追加した時点で別の薬物に切り替える必要があります。
ですが、世界に対して大々的に新規追加薬物をプレスリリースする訳でもなく、禁止薬物リストの中でも小さく、見難く記載がされているのを「おまえが自分で見付けて対策しろ」というのもちょっとひどい感じがします。
選手の気持ちになって「Meldonium」を探してみてください。イラッとします。
それと
で「Meldonium」を検索しても、2016年の新規追加に関するニュースは見付かりません。
ついさっき新規で記事が追加されたので今は1件となりますが、その記事は
WADA Statement regarding Maria Sharapova Case
とシャラポア選手の陽性反応に関する内容であって、それ以外に検索でヒットする内容はありません。
ということは、WADAから出される禁止薬物一覧を常にチェックして、自分が処方されている薬が該当していないかどうかを確認していなければならないということのようです。
プロ選手の場合は、色々なサポートを受けられますので、今回のシャラポア選手の件はコーチなどが気付いてあげるべきだったと思います。(ご本人は「全て自分の責任」であるとして、処方した医師の責任もないとしています。)
プロ選手でもまだ駆け出しの人やアマチュア選手にはかなり重い負担です。
WADA世界反ドーピング機関は、
- 新規に追加された薬物の認知を広げる努力する
- 新規追加する前に一定期間(半年とか)は陽性反応に対して警告を出す試用期間を設ける
などを検討するべきだと思います。
公平性を保ち、また選手の体を守るためにも、禁止されていることを知っていながら薬物を使用して試合に勝とうとする行為は厳しく対処されるべきだとは思います。
ですが、余りに懲罰的要素が強くなってしまうと、WADA世界反ドーピング機関の告知義務に落ち度があるような場合でも選手が不利益を被ったり、特定の選手、特定の国の選手団を陥れるために薬物を使用するといった不正(犯罪)を誘発しかねません。
あくまで
- 公平性を保つ
- 選手の体を守る
という原則を見失わないようにして頂きたいと思います。
WADAのツイートからも問題があるのが分かります
シャラポア選手のニュースが世界中を駆け巡った昨日、WADAがツイートしました。
Meldonium sits under Hormone and Metabolic Modulators section of WADA Prohibited List (Section S4)
メルドニウム(Meldonium)は、WADA禁止リスト(セクションS4)の「ホルモンと代謝調節因子」のセクションにあります。
WADA Prohibited List can be found on WADA’s website
WADA禁止リストはWADAのウェブサイトで見付けることが可能です。
WADA Prohibited List updated annually,but can be modified at any stage as required: 3 months notice to stakeholders required for any changes(Ben NicholsのツイートをWADAがリツイート)
WADA禁止リストは毎年アップデートされますが、必要に応じてどの時点でも修正を加えることが可能です:変更を加える場合は、利害関係者への3ヶ月の猶予を持って通知を行っています。
こんなツイートを現時点で行っていること自体、WADAのやり方には問題があるということを示しています。
本来の目的である
- 公平性を保つ
- 選手の体を守る
を忘れて、単なる懲罰機関に成り下がらないことを祈っています。
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