岩泉町乙茂地区 小本川氾濫に関するハザードマップ作成に不備
2019/06/12
台風13号は温帯低気圧に変わりましたが、全国的に厚い雲に覆われ、非常に激しい雨に引き続き注意が必要です。
岩泉町乙茂地区には洪水ハザードマップなし
台風10号による集中豪雨で9名もの犠牲者を出した高齢者グループホーム「楽ん楽ん」は、岩泉町乙茂地区の小本川のすぐ北にありました。
Google Mapの衛星写真を見ても、小本川が氾濫した際にはこの施設が浸水被害を受けるであろうことは誰にでも分かります。典型的な谷底低地で、過去に発生した小本川の氾濫によって作られた地形です。
このような水害リスクが極めて高い場所にも関わらず、洪水ハザードマップが作られていなかったことが分かりました。
現時点(2016年9月8日時点)で作成されているハザードマップ(防災マップ)は、岩泉町のウェブサイトに書かれている通り、
土砂災害危険区域、津波浸水危険区域を示しています
が、浸水想定区域の表示がありません。
高齢者グループホーム「楽ん楽ん」があった岩泉町乙茂地区は、エリア「7」に記載があります。
高齢者グループホーム「楽ん楽ん」(ふれんどりー岩泉)の周辺には、土石流流域界は表示されていますが、それ以外の表示はありません。避難場所は⑱乙茂公民館が指定されていますが、洪水時に避難するのには適していません。
岩泉町が作成した防災マップに
- 浸水想定区域図
- 浸水指定緊急避難場所
の表示がない理由は、
- 2010年度に岩手県は小本川が氾濫した場合の浸水想定区域図を作成(乙茂地区では、最大で2~5mの高さの浸水を予測)
- 2011年3月11日 東北地方太平洋沖地震発生
- 岩手県は震災後の混乱で作成した浸水想定区域図を岩泉町に提供できなかった
- 震災後に小本川の堤防がかさ上げされるなど、氾濫の想定が変わったため、岩手県は古い浸水想定区域図を無効として、新たな浸水想定区域図を作成の必要性を認識(※認識しただけで、着手はしなかった)
- 2016年07月26日、県から浸水想定区域図の提供がないため、浸水想定区域図無しで作成した防災マップを岩泉町が公開
- 現在、岩手県は10の川について浸水想定区域図を作成中だが、未だ小本川には未着手(今後作成を急ぐそうです)
典型的なお役所仕事に、憤りを感じます。
震災後の混乱はやむなしとしても、震災後既に5年経過しています。その間に、震災後の防災対策で小本川の堤防がかさ上げをしている位ですから、県だけではなく、岩泉町も小本川の氾濫リスクを十分に認知していたはず。
それなのに何もアクションを起こさず、浸水想定区域図なしのハザードマップを作成し、町民に提供するなど言語道断。今回の経緯の全容の解明とその責任の所在については厳しく追求されるべきだと思います。
ハザードマップは必ず確認して、疑問がある場合は行政に確認しましょう
今回、岩手県下閉伊郡岩泉町乙茂地区で発生した洪水被害は間違いなく人災です。岩手県と岩泉町の担当者が正しく仕事をしていれば防げた可能性が非常に高いです。
震災後に小本川の堤防がかさ上げされるなど、氾濫の想定が変わったため、古い浸水想定区域図が使えなくなり、新しくて正確な浸水想定区域図を作る必要があった。
と言い訳されていますが、もし担当者自身の家族が岩泉町乙茂地区に住んでいても同じ対応をするでしょうか?
一旦は古い浸水想定区域図(実際よりもリスクが大きく表示されてしまう=正確性は欠いても、安全度は高い)を元にハザードマップ(防災マップ)を作成し、その旨をマップ上に記せばいいだけのはず。
岩手県と岩泉町の担当者の怠慢には怒りを感じますが、ただ「防災マップに記載がなかったからリスクを甘く考えてしまった」と人の命を預かる立場の人は言い訳をすることはできません。
高齢者グループホーム「楽ん楽ん」の責任者は、
- 岩泉町、または岩手県に直接確認するなどして施設の浸水リスクを正しく認識するべきでした
- 県や町が浸水想定区域図を提供するのを拒んだとしても、自ら立地や地形を見て、浸水リスクを想定するべきでした
- 避難準備情報が出た時に「浸水したら隣接する建物の3階に避難すればいい」と軽く考えずに、鉄砲水のような浸水があった場合に逃げ遅れるリスクを考えて、早めに避難を開始する命令を出すべきでした
後になり批判することは簡単でも、実際に現場で判断し、指示を出すことは難しいと思います。
ですが、仮に空振りになって「大袈裟だ」「無駄な避難時にケガをした」などの非難を受ける可能性があったとしても、他人の命を預かる立場にある人は「大袈裟上等」「非難上等」という覚悟を持って、常にリスクを意識して、早めの行動・指示をしていかなければなりません。
今回、岩手県下閉伊郡岩泉町乙茂地区で発生した洪水被害は、
- 非難・叱責されたくない
- ミスをしたくない
- 責任を取りたくない
という仕事をする人が持つ当たり前の気持ちが根底にあります。それだけに再び別の場所で発生する可能性が大いにあり、注意が必要です。
この事故を教訓にして、人の命を預かる人は、もう一度リスク管理が万全かどうかを見直して頂き、二度と同じことが起きないことを心から祈っています。
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