こどものうつ病に親は注意してあげてください
2019/06/13
うつ病を経験したことはありますか?僕はかつて重度のうつ病でした。もう気が重いなどというレベルではなく、色の無くなった世界が崩壊して自分の上にのしかかってくるような、そして胸が締め付けられて息もできない、そんな強烈な苦しみでした。それから逃れるために死のうともしました。
周囲の人の助けや薬の力も借りて、何とかうつ病を脱することができましたが、今考えても本当に辛く、恐ろしい経験です。もうあのレベルのうつ病は再発していませんが、体調やストレスレベルによっては軽いうつ状態に陥ることもありますが、その「苦しさ」が本物ではなく、体調やストレスによってセロトニン分泌が狂って苦しいと勘違いさせているということを自分で認知することで深みにはまらず、正常な状態に戻すことができるようになっています。これには昔の重度のうつ病を経験したことが役に立っています。ですが、こんな認知療法的な考え方は、「うつ状態」では可能ですが、重度のうつ病の場合は難しいです。
大人でも難しいものですから、こどもにはほぼ不可能かも知れません。そもそも、こどもはその苦しみをうつ状態やうつ病だと分かることができず、親にも言えず独りでひたすら苦しみ続ける恐れがあります。
こどももうつ病になります
大人になるとこどもの頃の悩みを忘れて「こどもはいいよなー、ストレスがなくて」なんて思ってしまいがちですが、こどもも日々様々なストレスと戦っています。
- テストの点数が悪くて親に叱られる
- いじめっ子が帰り道で待ち伏せしている
- クラスで仲間はずれされているかも知れないと不安
- 今日も明日も明後日も塾に行かなければならない
- 嫌いなのに今晩もピアノのレッスンをしなければならない
- 両親が不仲で、離婚してしまうかも知れない
- 受験に受からないかも知れない
大人からすれば全く可愛い悩みなんですが、それは様々な経験を経ていることに加えて、加齢によって様々な感覚がマヒしているためであって、何もかも全てが初めての経験で、感受性が豊かで、過敏なこどもにとっては人生を左右してしまうと思えるほどの大きな悩みです。
そんな悩みからくるストレスに、成長期に体のバランスが崩れが重なったりするとこどもでもうつ状態に陥ってふさぎ込むことがありますし、最悪は「うつ病」を発症します。「こどもがうつ病なんて」と思われる方もいるでしょうけど、動物もうつ病になりますので、人間のこどもがならない訳がありません。
親の心無い一言がこどもに致命傷を与える恐れがあります
大人でうつ状態もうつ病も経験した事がない(と勘違いしている)人や自力で立ち直ったと思っている(勘違いしている)人は注意しなければなりません。
そもそもこどもの苦しみに気付かないかも知れませんし、仮に気付いても、
- 気のせいだ
- 弛んでいる
- 心の風邪に過ぎない
などと言葉をかけることでこどもを奈落の底に突き落としてしまう恐れがあります。
うつ病の苦しさは、大のおとなを自殺に追い込んでしまうほどのパワーがあります。そんな大きなパワーにこどもが対抗できるはずがありません。親がこどもの苦しさに気付けなかったり、こどもから苦しみを相談されてもまともな対応をしないでいると、こどもを失うことになるかも知れません。
うつ病を経験して、その恐ろしさを理解している親はこどもの苦しみを理解できると思いますが、経験していない(と勘違いしている)人は一度うつ病について学んだ方が安全です。仮に親がとてつもなく強靭な精神力を持ち、絶対にうつ病などにかからない人だとしても、こどもにそれが遺伝している保証はありません。どんな親でもこどもを守るために、うつ病について学ぶ必要があります。
うつ病は外からは分かりません
色々な病気がありますが、多くは顔が赤くなったり、痛みで動きがおかしかったり、何らかの目に見える症状があります。
しかし、うつ病は
- 全く外からは見えない
- 本人にもどんな苦しみなのか言葉で表現できない
ものなので、親には分かりません。もしかすると、本人も自分がおかしい状態であることを気付いていないかも知れません。その状態のまま、うつ病をこじらせて、自殺に至ってしまうケースも少なくないはずです。
外から分からないからなす術がない訳でもありません。こどもとの会話を十分に持って、日ごろから微細な変化でも見逃さないように注意をしていれば変化に気付けるはずです。
また、こどもに対して、体調が悪くなるのと同じように、脳も調子を崩して、本当は悲しくないのに悲しいと感じさせる物質を過剰に出したり、楽しいと感じた時に出す物質をさせなくなったりすることで、毎日が苦しくて仕方がなくなってしまう病気があることを説明して、理解させておくことが役に立ちます。
年齢によって説明を変える必要がありますが、それでも本質は同じです。「体調が悪くなるのと同じように、脳も調子を崩して、本当は悲しくないのに悲しいと感じさせる物質を過剰に出したり、楽しいと感じた時に出す物質をさせなくなったりすることで、毎日が苦しくて仕方がなくなってしまう病気がある」ということをしっかり理解させてあげてください。
いじめ、受験の失敗、または両親の離婚など、様々な事象をきっかけに自殺をしてしまうこどもがいますが、自殺は事象が原因ではなく、その事象によって起きたうつ状態・うつ病が原因だと言われています。
いじめが発覚して、そのいじめを解決したとしても、うつ状態・うつ病を放置したままにするのは危険です。この場合、いじめは原因になっていますが、一度この状態に陥ってしまうと原因を取り除いたとしても、元の状態に戻れないことが多くあります。
また、いじめのように原因を取り除くことが可能なものもあれば、失恋や受験の失敗など、親にでもどうすることもできないこともあります。仮に原因自体を取り除くことができなくても、うつ状態・うつ病から脱け出すことさえできれば危険は回避できますので、親は何としてもこどもの変化に気付き、早めの対処をしてあげることが重要です。
こどもにもストレス発散の場を与えましょう
大人からすれば、こどもは遊びと勉強しかすることがなく、羨ましい限りかも知れません。ですが、昔を思い出してください。「大人はいいなぁ」って思っていませんでしたか。
確かにこどもは家計を背負う責任はありません。ですが、常に勉強だけではなく、運動能力まで比べられ、学校の中でも外でも暴力的なこどもの存在に怯え、家に帰れば不機嫌な親にガミガミ言われることにも耐えなければならず、そのストレスレベルはサラリーマンと変わりないかも知れません。
でも、大人には、飲み会を始めとした様々なストレス発散の場があります。そんなところでアルコールの力を借りて思い切り愚痴を言ってストレスを発散できることは精神衛生上かなりのプラスになっているはずです。
大人からすれば一見お気楽に見えるこどもたちには、そんなストレス発散の場はほとんどありません。学校の休み時間に遊んでいる時もこどもなりに人間関係を気にしなければなりませんし、サッカーなどの習い事は息抜きというよりも、おとなの仕事に近い存在です。年功序列はほとんどなく、完全な成果主義。上手ければ学年が下の子にレギュラーの座を奪われます。年下の上司の下で働く苦しみは、既に大人だけのものではありません。
そんなストレスまみれのこども達が、思い切りストレスを発散させる場を作ってあげることも大切です。こどもの特性によって違ってくると思いますので、その子に応じたストレス発散の機会を設けてあげましょう。アレルギーをコップの水に例えると分かりやすいのですが、ストレスも同じでコップに例えると分かり易くなります。
こどもも大人もコップがあり、少しずつストレスという水が溜まっていきます。このコップが溢れてしまうとうつ状態・うつ病を発症してしまいますが、治療などによって水の量を減らせば元の状態に戻ることができます。万が一、水の勢いが余りに強いとコップは割れてしまいます。これが自殺や不可逆的な精神的なダメージになります。
コップに溜まった水ですが、飲み会などでストレスを発散させることで、空にしてリセットしたり、量を減らすことが可能です。それによって、またより多くの水を溜めることができるようになります。
あなたのこどもであってもコップの大きさは違います。あなたよりも繊細でコップが小さい可能性もあります。自分と同じに考えず、常にこどものコップの大きさと状況を知る努力をしてあげてください。そして水が溜まってしまっている時は、全てのストレスから開放される状態を作ってリセットしてあげてください。
こどもをうつ状態・うつ病になりにくくすることで、そのこどもが大人になった時にもうつ状態・うつ病になりにくくなるはずです。連鎖を止めるためにも、こども達を何としてもうつから守ってあげましょう。
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