プラセンタによる感染リスクには注意しましょう
2019/06/13
「プラセンタ」という単語は「コンドロイチン」と「セサミン」と並んで毎日強制的に鼓膜に届けられます。全く興味のない男でもしっかり記憶に残っています。
そんな「プラセンタ」、しわ取りサプリメント程度の認識しかない方も多いと思いますが、実は人などの胎盤から作られる特定生物由来製品(または生物由来製品)だってことはご存知ですか?
プラセンタ注射にはどんな病気の感染リスクがあるの
そもそも、プラセンタ(placenta)って胎盤の意味なんです。人プラセンタは人の胎盤。出産後の胎盤を製薬会社が回収し、必要な処理を行って人プラセンタ注射薬やサプリメントを作ります。
その注射薬は、血液凝固因子、人血清アルブミン、人免疫グロブリン、輸血用血液のような血液製剤などと同じ特定生物由来製品に分類されます。そして、その特定生物由来製品は、感染症の発生リスクが高いため、以下の2点の実施が義務になっています。
- 特定生物由来製品を使用する際には、製品のリスクとベネフィットについて患者(又はその家族)に説明を行い、理解を得るようにしなければなりません。(薬事法第68条の7 使用における説明と理解)
- 特定生物由来製品を使用した場合の情報を記録し、医療機関で使用日から少なくとも20年間保管しなければなりません。(薬事法第68条の9 記録の作成、保管)
法律では献血に関する制限は規定されていませんが、献血を実施する日本赤十字社は
過去にヒト胎盤(プラセンタ)由来製剤の注射剤を使用されたことのある方からは、当面の間献血をご遠慮いただくこととなりました。
としています。理由はvCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)という病気の感染可能性です。
vCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)は、獲得性プリオン病のひとつで、牛の海綿状脳症(BSE)との関係が指摘されています。英国をはじめとするヨーロッパ諸国を中心に200例を超える報告があり、英国では2003年以降輸血によるvCJD感染が疑われる症例が3例報告されています。
残念ながら、現在でも血液中から感染の原因となる異常プリオンを分離する方法が確立されていません。
そのため、日本赤十字社では、異常プリオンの特定と分離技術が確立されて、プラセンタの安全性が確認されるまではプラセンタの注射を一度でも受けると献血ができないことにしています。
人プラセンタには未知の感染症リスクも残っています
現在はvCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)が対象とされていますが、未知の感染症の存在可能性も排除できません。
人プラセンタの注射によるしわ取り効果は確かにあると思いますし、できる限り安全性の確保に努めているとは思いますが、病気の治療でリスクを覚悟して注射を受け入れる場合と違って、美容の為に人プラセンタの注射を受けるのはリスクが高過ぎるのではないかと個人的に考えます。
「薬事法第68条の7(使用における説明と理解)」により、注射を打つ前に医師は製品のリスクとベネフィットについて患者(又はその家族)に説明を行い、理解を得るようにしなければならないことになっていますが、「プラセンタ」フィーバーの現在、しっかりとリスクの説明がなされて、理解がされているのか不安も残ります。
サプリメントは基本安全だと考えられています
人プラセンタから精製される注射薬には、
- メルスモン(メルスモン製薬株式会社)
- ラエンネック(株式会社日本生物製剤)
があります。
そのラエンネックを精製する株式会社日本生物製薬が販売している
ラエンネックP.O.(Laennec P.O.)
は人プラセンタを精製して作られた経口薬になります。要はサプリメントなのですが、人の胎盤を精製して作られているため、病院での処方が必要ですが、こちらを服用しても献血が出来なくなることはありません。つまり、vCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)などの感染症リスクが低いと考えられています。
プラセンタのサプリメントはほとんどが豚と馬の胎盤から作られます
市場に出回る多くのプラセンタサプリメントは、人由来ではありません。
現在は、豚と馬の胎盤から精製されています。
ここでお気付きの方もいるかも知れませんね。そうです、牛が入っていません。
1990年代、世界を恐怖に陥れた狂牛病、正式には牛海綿状脳症(BSE)感染のリスクを鑑みて、牛の胎盤を精製したプラセンタは使われていません。感染した牛でなければ問題ないと思いますが、念には念を入れての措置なのでしょう。
そう考えると人の胎盤から作られるラエンネックP.O.(Laennec P.O.)も制限の対象に入ってもよさそうなものですが、今は病院で処方される以外に制限はありません。
「牛を除いた豚と馬の胎盤だから大丈夫」かどうかについてですが、豚と馬にも未知の感染症リスクがある可能性を排除はできませんので、一定の覚悟は必要だと思います。
ですが、焼肉などで色々な部位を食べまくっている現在、そんなことまで心配しては生きていけません。確かに豚と馬の胎盤由来のプラセンタサプリメントを飲むことで、肉などを食べているリスクに上乗せされますが、それは微々たるものに過ぎないでしょう。
プラセンタサプリメントの安全性は広告でも宣伝されていますが、きっと間違っていないと思います。
昔は胎盤をそのまま手にこすり付けていた人もいたそうです
昔々、と言っても20年位前までは、助産師さんなんかが出産後の胎盤を手に塗っていたそうです。その頃は
バイオハザード
なんて言葉も意識も無かった頃なので、素手で胎盤などを処理する人もいました。そんな助産師さんの仲間内では胎盤を触った後は手がすべすべになると言われていて、実際に塗っている人も少なくなかったようです。
そんなところから現在のプラセンタの美容的な使用法が生まれて行ったのでしょうけど、知らぬが仏というか、無知は怖いと思います。プラセンタはブームと共に色々な研究や検査が行われて、安全性も高いものになっていると思いますが、プラセンタ以外にも特定生物由来製品や生物由来製品の中には現在は知られていない感染症のリスクが潜んでいる可能性がありますし、生物由来製品ではなくても、環境ホルモンのように今は当たり前のように使われている成分が将来人体に深刻な影響を及ぼしていることが判明するなんてことがないとは言えません。
気を付けましょうと言いたいところですが、気を付けようがないので困ります。
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