原因不明のアナフィラキシーは納豆が原因かも知れません
2019/06/13
食べ物によるアナフィラキシーは通常アレルゲンとなる食品を食べてから数分から数時間(ほとんどが2時間)以内に発作が起きます。でも、中には半日以上経過してから発作が起きる場合があり、長い間原因不明とされてきました。
最近の研究で、その原因が納豆にあることが分かってきました。
納豆による遅発性アナフィラキシー
納豆によるアレルギーというと大豆アレルギーであると思われてしまうかも知れません。
でも、納豆アレルギーは大豆とは関係ありません。納豆アレルギーを引き起こす物質は、
ポリグルタミン酸(PGA)
と呼ばれる物質です。
この物質はグルタミン酸が30~5000個結合した高分子ポリマーで、タンパク質よりもずっと大きな結合体です。そのため、
- 最大で自重の5000倍の水分を維持することができる
- 腸内の微生物が分解して、腸管吸収できるようになるまでに長い時間が必要
という特徴があります。
水分を維持することができる特徴を使って、現在は食品添加物や化粧水などに広く使用されています。
そして、高分子ポリマーであるために、腸管吸収できるようになるまで微生物が分解するのに時間がかかるため、口から入っても直ぐにはアナフィラキシーを発症せずに、半日以上経ってから突然アナフィラキシーを発症します。
余りに時間がかかるため、アナフィラキシーと納豆の関係性が長い間解明されませんでしたが、ここにきて漸く関係性が明らかになり、注意喚起がされるようになりましたが、未だ広くは知られていません。
夕食に納豆を食べた場合、就寝中にアナフィラキシーを起こす可能性があり、その場合は命にも係わりますので、これから特に注意をするべきアレルギーの一つです。
納豆アレルギーにどうしたらなってしまうのでしょうか?
未だ完全に解明されてはいませんが、納豆アレルギーの人にサーファーが多くみられることから、クラゲが注目されています。クラゲにはポリグルタミン酸があり、クラゲが人を刺す時にこのポリグルタミン酸が人の体内に入り、感作を起こし、その結果ポリグルタミン酸アレルギーを発症し、結果納豆アレルギーになる、そう考えられています。
人が何かに対してアレルギーを持つ場合、「感作(かんさ)」と呼ばれる過程を経ることが多いと考えられています。
- ピーナッツアレルギー:皮膚が炎症を起こしている時にピーナッツオイルを塗ったことで感作を起こして、ピーナッツアレルギーを発症します
- 小麦アレルギー:手荒れをしている時に小麦をこねると、その傷口から小麦タンパク質が体内に入り、感作を起こします。また、小麦由来成分でも感作を起こしますので、石鹸(茶のしずく)で大規模な感作を起こした事件も記憶に新しいところです。
クラゲに刺されると納豆アレルギーになります!
納豆に対してアレルギーを持つ場合、クラゲに刺されることで、納豆中の成分のポリグルタミン酸に感作することが原因になっています。
でも、サーファーでもなければ、クラゲに刺されたこともないのに、納豆を食べると半日後にアナフィラキシーを起こす患者さんが存在しているのも事実です。それは一体何が原因なのでしょうか?
クラゲに刺される以外の納豆アレルギーの原因とは?
ポリグルタミン酸は、最大で自重の500倍もの水分を維持することができる性質を利用して、食品にねばりけを出す増粘剤として使われたり、肌の保水力を高めるとして化粧水にも使われたりしています。その他にも、医療の分野でも活用されています。最近では、ポリグルタミン酸を摂るとカルシウムの吸収を高めると効果が注目され、健康食品にも広く取り入れられています。
「納豆パワー」と称して化粧水やローションにポリグルタミン酸が広く取り入れられていますが、少し注意が必要です。
「茶のしずく事件」では、石鹸に含まれた小麦由来成分が原因で感作を起こし、多くの人が重い小麦アレルギーを発症してしまいました。肌に優しい石鹸を選ばれる方というのは、肌に悩みを持った方が多い訳で、肌荒れとして皮膚に傷が付いている方も少なくありません。そんな肌に炎症を起こした人が感作を起こしてしまいました。
ポリグルタミン酸を含んだ化粧水でも同じことが起きる恐れがあります。
- 今の化粧水では肌が乾燥しすぎて炎症を起こしてしまう
- 保湿力の高いポリグルタミン酸を含んだ化粧水を使う
- 炎症を起こした部分にポリグルタミン酸が触れて、感作を起こす
- ポリグルタミン酸アレルギーになり、納豆アレルギーにもなる
- 運よく納豆を食べない場合でも、ポリグルタミン酸が食品添加物として入った食品を食べてアナフィラキシーを起こす
となる可能性が十分に考えられます。
食品由来成分を含んだ化粧水やローションなど、皮膚に付けるものに使用には十分に注意が必要です。もし使用する場合は、皮膚に荒れなどの傷(微細なものも含みます)がない時だけにして、肌荒れを起こしている時の使用は絶対に止めてください。
納豆アレルギー(ポリグルタミン酸アレルギー)になってしまった場合の注意点
- 納豆・クラゲを食べるのは止めましょう。
- クラゲに刺されないように注意しましょう。
- ポリグルタミン酸を含んだ食品などを避けましょう。
納豆もクラゲも大嫌い、海にも入らないという人でも過信は禁物です。なぜなら、実は「3」がかなり厄介なんです。
ポリグルタミン酸って聞きなれない物質ですが、、実はその便利な特性を利用して、既に様々な食品などに使用され、気付かずに日々口にしています。
冷やし中華を食べて遅発性アナフィラキシー
納豆アレルギーの患者さんが、冷やし中華を食べてアナフィラキシーを起こしたケースがあります。この場合、クラゲは乗っていません。スープに粘り気を出すための増粘剤としてポリグルタミン酸が入っていました。
原材料名
めん〔小麦粉、小麦たん白、水あめ、酒精、加工デンプン(打粉)、塩化カリウム、焼成カルシウム、かんすい、クチナシ色素、ポリグルタミン酸〕 液体スープ〔砂糖、しょうゆ、ごま油、醸造酢、食塩、果糖ぶどう糖液糖、調整ココアパウダー、酵母エキス、食物繊維、調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、酸味料、カラメル色素、ポリグルタミン酸、(原材料の一部に乳成分、小麦を含む)〕 からし〔植物油脂、でん粉、からし、還元水飴、食塩、砂糖、増粘剤(加工デンプン、増粘多糖類)、香料、着色料(ウコン)、酸味料〕
ポリグルタミン酸自体に問題はありません。安全でかつ便利なので、そこら中で使われていることが問題を厄介にしています。
余りにもさりげなく使用されているので、万が一納豆アレルギーになってしまい、ポリグルタミン酸の摂取でアナフィラキシーを起こす恐れがある場合は、原材料名をよく確認してください。「カルシウムの吸収がいい」とうたう健康食品や飲料にもポリグルタミン酸が含まれていることが多いので、注意してください。
納豆アレルギーにならないように注意する方が安全です
一度なってしまうと、食品、飲料だけではなく、化粧水やローションなどにも常に注意を払う必要がありますし、海水浴にも特別な注意が必要になります。
ですから、アレルギーになってから注意するよりも、なる前に注意する方が簡単ですので、絶対お勧めです。
クラゲのでる時期や場所でのサーフィンは避けることも有効ですが、ほとんどの人には当てはまりません。一番注意するべきは、化粧水やローションにポリグルタミン酸が含まれている場合です。
納豆アレルギーにならないためには、
ポリグルタミン酸を含んだ化粧水やローションの使用を避けること
が効果的です。
でも、もしどうしても使いたい場合や使わざるを得ない場合は、
肌が荒れていたり、傷がある場合の使用は絶対に避けること
これが重要、かつ効果的です。
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