ヒグマ肉食べて旋毛虫による食中毒 35年ぶり
2019/06/12
茨城県水戸保健所は、ヒグマ肉を食べた人が食中毒症状を起こしたと発表しました。食中毒を起こしたのは20~50歳代の男女15人。
今回食中毒が起きたのは茨城県水戸市南町3丁目4-70にあるイタリア料理店「ビゴリ」。
店がヒグマ肉を仕入れ、それを調理して提供した訳ではなく、
- 常連客が北海道で捕獲されたヒグマ肉を知人からもらい受けた
- 常連客がヒグマ肉を調理(ロースト)してビゴリに持ち込む
- 11月下旬から12月上旬にかけて客など27人に提供
- 27人のうち15人が発疹や発熱などの症状を訴えて医療機関を受診
ヒグマ肉に寄生し、直中毒を起こした旋毛虫は十分な加熱または冷凍で死滅すると言われていますが、常連客の調理法に問題はあり、食中毒を起こしたものと見られています。
水戸保健所がビゴリから回収したロースト熊肉(冷凍)から旋毛虫が見つかり、15人の症状とも合致することから、旋毛虫食中毒と断定し、ビゴリは12月23日から当分の期間、営業停止処分とされました。
1人が入院しましたが、既に退院し、全員が快方に向かっているというのが幸いです。
クマ・イノシシに寄生する旋毛虫は十分な加熱と冷凍で死ぬと言われています
十分な加熱と冷凍で死ぬと言われている旋毛虫(せん毛虫)ですが、今回は食中毒となった熊肉は加熱調理(ロースト)されています。今回の旋毛虫(せん毛虫)は、安心と思われている
加熱調理のロースト
を潜り抜けて、食べた27人のうち15人に食中毒を引き起こしています。ローストした際の加熱が足りずに旋毛虫(せん毛虫)が生き延びたものと思われます。
また、東京都福祉保健局 健康安全研究センター 企画調整部 健康危機管理情報課 食品医薬品情報係による資料では、
筋肉内幼虫は低温にかなり強く、マイナス30℃で4ヶ月保存したクマ肉により発症した例もあります。
現時点では、Wikipediaに
ある程度の殺虫効果があるのはメベンダゾールである。また十分に加熱または凍結すれば殺虫される。と畜場法において感染食肉は全廃棄の対象となる。旋毛虫症以外での全廃棄の対象となる寄生虫病としてはピロプラズマ病、トリパノソーマ病、トキソプラズマ病、有鉤嚢虫症がある。
とありますが、冷凍による旋毛虫(せん毛虫)の殺虫効果は期待しない方が安全そうです。
同じく東京都福祉保健局 食品衛生の窓 東京都の食品安全情報サイトによると、
- アメリカ:不完全調理の豚肉・ソーセージ
- 東欧・中央アジア:馬肉・シカ肉等のゲームミート
- 日本:ツキノワグマやエゾヒグマの刺身
など、調理時の加熱が不十分な際に感染が起こる食中毒であるようです。
日本では旋毛虫(せん毛虫)による食中毒は全て熊肉によるもので、今回はローストでしたが、過去には刺し身で感染を起こしたケースもあるようで、先人のワイルドさに驚かされます。
旋毛虫(せん毛虫)による食中毒を防ぐためには
平成21年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」によると、
通常の加熱調理による虫体の不活化条件は、肉の中心温度が71℃で1分間の処理が必要
と書かれています。
肉をローストする際には、肉の内部に
- 菌
- 寄生虫
が存在しないことが前提の調理法ですから、筋肉内に旋毛虫(せん毛虫)のような寄生虫が潜んでいる場合、虫が生き残ってしまい、食べた人に食中毒を起こす恐れがあります。
寄生虫がいる可能性がある動物の肉の場合は、最低でも
肉の中心温度が71℃で1分間の処理
をしなければ危険があります。
表面を適切な処理をして、菌による食中毒を防ぐ調理方法では寄生虫を不活性化することができない可能性がありますので、寄生虫がいる可能性がある動物の肉の場合は、菌対策と同時に「肉の中心温度が71℃で1分間の処理」するという旋毛虫(せん毛虫)対策を忘れないようにしなければなりません。
ジビエが流行っていますが、調理はプロに任せましょう
適切に処理された安全な肉を調理するのとは別の知識・技術が求められます。
今回は
常連客が調理(ロースト)した熊肉
をレストランで提供したことの責任を問われると思います。ただ、仮に調理師の免許があり、普段ローストビーフを作り慣れているとしても、ジビエを使った料理は別物です。客の命にも関わりますので、もし提供するのであれば適切な講習・修行を受け、絶対に安全に提供してください。
また、消費者もジビエは適切な調理が必要で、素人は手を出すのは危険だという認識が必要です。最近ブームになっていますが、今回のケースを教訓に、客の側でも安全かどうかを判断して欲しいと思います。
実は僕の義理のおじが猟をしていますが、シカ肉を刺し身で親戚に振る舞うので困っています。妻子と義母には絶対に手を出さないようにきつく言い聞かせていますが、いずれ身内で食中毒患者が出るかも知れないと常々思っていましたので、今回のニュースは他人事とは思えませんでした。
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