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ノロウイルスの感染は、人が先かカキが先か?

      2019/07/16

答:人が先

ノロウイルスは、直径30~38nm(ナノメートル)の正二十面体をしていて、約7,500塩基を持つRNAウイルスです。

インフルエンザウイルスにはエンベロープと呼ばれる脂質性の膜がありますが、ノロウイルスにはこのエンベロープがない(ノンエンベロープウイルス)ため、インフルエンザなどのエンベロープウイルスには効くアルコール消毒剤が効きません。それがノロウイルスが強い感染力を保ってしまう原因の一つになっています。

そもそもノロウイルスはヒトに感染するウイルスで、動物の体内で培養するなど、ヒトの体外で培養することができていません。そのため分かっていないことが多く、現状治療薬もありません。

カキはノロウイルスに感染しません

ノロウイルスと言えば「生カキ」や「加熱不足のカキ」で感染するというイメージがありますが、カキはノロウイルスに感染しません。

カキに限らず、二枚貝は食物の細胞内消化を行う中腸腺に、海水中からプランクトンなどと共に取り込まれたウイルスが生物濃縮によって蓄積してしまいます。

アサリ、ムール貝、シジミなどもカキと同じように中腸腺にノロウイルスを蓄積している可能性がありますが、それらもカキと同じように海水中を漂うノロウイルスを生物濃縮しているだけです。

カキの産地に流れ込む河川の流域でノロウイルスによる感染性胃腸炎の流行した場合、1~2ヶ月後にカキがノロウイルス陽性となることが分かっていますので、カキが常にノロウイルスを持っている訳ではなく、ヒトがノロウイルスに感染し、体内で増えたノロウイルスが下水道を通じて海に流れ込み、それをカキが生物濃縮をして、食べたヒトにノロウイルス感染を引き起こしているだけですので、「ノロウイルスの感染は人が先かカキが先か?」という問の答は「人」です。

ノロウイルスはどこから感染するのでしょうか?

ノロウイルスと言えば「カキ」のイメージがありますが、

カキはノロウイルスに感染した人の大便によって汚染される

だけで、カキが常にノロウイルスを体内に持っている訳ではありません。

ノロウイルスはエンベロープを持たないノンエンベロープウイルスであるため、

  • アルコール
  • 塩素イオン
  • アルカリ

にも強いため、なかなか感染力を失わない訳ですが、永久に残っている訳ではありません。そんなことになったら、養殖カキは壊滅的な被害を受けてしまいます。幸いにもカキの中に生物濃縮されたノロウイルスは「ある程度の期間」が過ぎたら感染力を失うことが分かっていますが、残念なことに「ある程度の期間」がどの位の期間なのかについては明らかになっていません。

ノロウイルスが乾燥した大気中よりも水中の方が長く感染力を保てることは分かっています。河川流域でノロウイルスが流行した場合、1~2ヶ月後にカキがノロウイルス陽性反応を示すことから、水中(淡水・海水)で少なくとも1~2ヶ月間は感染力を保てると考えられますので、ピークが過ぎても暫くは二枚貝を食べる際には注意が必要です。

水中では少なくとも1~2ヶ月間は感染力を保てるノロウイルスですが、乾燥した場所ではそれほど長くは感染力を保てないようです。とは言っても、

  • 4℃では8週間程度
  • 20℃では4週間以上

感染力を失わないと考えられています。

ノロウイルス感染と言えばカキなどの二枚貝が悪者扱いされますが、カキは検査でノロウイルスが検出された場合は生カキとして出荷は停止されるなど業界として努力を続けているおかげで、「感染原因がカキ」であると特定される割合は年々低下しています。少し古いですが、2006年後半にはカキが食材と特定された集団食中毒は発生しなかったほどです。

しかも、近年の食中毒事例のうちでも約7割において原因食品が特定できないと言われていますので、カキなどの二枚貝を原因とした食中毒よりも、感染者の大便や嘔吐物が乾燥し、ウイルスを含んだ塵となって吸い込んだ人を感染させる

塵埃感染

がかなり多くなっている可能性があります。

連鎖を断ち切ることができない理由

水中では少なくとも1~2ヶ月間は感染力を失わず、乾燥した場所でも、低温(4℃)では8週間程度、常温(20℃)では4週間以上感染力を失わずにいられるノロウイルスですが、ヒトの体内でしか増殖することができません。

厚生労働省によるノロウイルスによる食中毒の月別事件数の年次推移(出典:厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A)では、冬場にピークを迎え、9月に底を突きます。

ノロウイルスによる食中毒発生件数

食中毒件数がゼロではないにしても、9月に激減するにも関わらず、再びぶり返してしまう感染パターンには何か未だ分かっていない秘密がありそうな気がします。

常に感染者がいて、リレーのバトンのようにノロウイルスを渡し続けているだけでは、高温になる夏を乗り切って、気温が下がる秋から冬にかけて再びぶり返すことが困難なように思います。

エンベロープウイルスなので同等の比較は難しいのですが、 B型肝炎ウイルスの場合

  • 30℃前後では少なくとも6ヶ月間感染力を失わない
  • 冷凍状態では15年以上は感染力を失わない

という情報もあり、またインフルエンザウイルスも4℃の水中(実験室環境)で数ヶ月間感染力を保ったという実験結果もありますので、ノロウイルスも冷凍など一定の条件下において長期間感染力を保ち、ウイルスのリレーの一つになっているのかも知れません。

 - 健康, 生活, 病原菌, 食中毒, 食品

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