西川先生が「医療用大麻ってものはない。」と高樹容疑者をバッサリ切った件
2019/07/18
少し前の話題になります。
大麻取締法違反(所持)の容疑で逮捕され、現在も捜査が続いていると思われる高樹沙耶(本名・益戸育江)容疑者について、女医タレントの西川先生が番組内で
「医療用大麻ってものはないんです。日本ではダメな訳で、私としては医療用と言われることも嫌。」
と高樹沙耶容疑者が、以前の番組内で語ったことや参院選に出馬した際に大麻の医療用の解禁を訴えていたことを否定する発言をしました。
その主張は間違っていません。
大麻に「医療用」の品種はありません。
ただ、普通の大麻を医療目的で使用する国や地域があり、高樹容疑者が主張していたのはそのことです。
日本では大麻を
- 嗜好品
- 医療目的
など、研究や捜査など特別な目的以外で所持したりすることが禁止されていますので、所持したり、譲渡したりすることが犯罪であることは間違いない訳ですが、法律だからと言って
「医療用大麻ってものはないんです。日本ではダメな訳で、私としては医療用と言われることも嫌。」
というヒステリックな対応をすることも余りいい事とは思えません。
西川先生は医師かも知れませんが、タレント的な要素が強く、発言が医療従事者としての説得力を余り持っていない感じがするので影響は限定的だと思いますが、やはり番組内でのコメントが取上げられる辺り、医師という看板がそれなりの意味を持ってしまっています。
ただ、大麻取締法によって医師ですら研究することがほとんどできない日本において、
単に法律で禁止されているから
という理由で、大麻の医療的な可能性を全否定するのは医師としてどうなんでしょう。
古い古い話ですが、アメリカでは禁酒法が発令されていた時期があり、その時期は消費のためのアルコールの製造、販売、輸送が全面的に禁止されていました。アルコールと大麻を同じに考えるのには無理はありますが、「違法だから」と盲目的に否定しようとすることは逆に危険ではないかと思います。
大麻への反対派は、大麻がゲートウェイドラッグ(Gateway drug)であることを主張しますが、アルコールもある意味ゲートウェイドラッグ(Gateway drug)ですし、タバコもゲートウェイドラッグ(Gateway drug)に含まれると考える人もいます。
日本では大麻が法律で厳しく規制されているために、詳しく知る人は非常に限られています。その情報が限られている状態で、
- 依存性が高く危険
- 幻覚などによって殺人などの凶悪犯罪を誘発する
- 脳への損傷が発生する
などともっともらしくコメントされる学者やタレントの方々はどれほど大麻のことを知っているのでしょうか?海外で常用していて、経験から知っているのでしょうか?本やウェブサイトに書かれたことを読んで、それが全てだと思い込んで主張するのは正しいことでしょうか。
僕は推進派でもありませんし、反対派でもありません。だって、大麻については良く知りませんから。
国内で行われた信頼がおける研究がなく、参照できる文献もありません。
- 大麻は危険だと誰かが言っていた
- 大麻は大麻取締法で禁止されている
- 大麻は麻薬だ(※麻は付きますが、麻薬じゃないです)
反対派の多くもこんなもんではないでしょうか。
この状態で議論することはほとんど意味がありません。
2016年6月時点で、
- アメリカ:全50州中25州と首都ワシントンD.C.
- カナダ
- イスラエル
- ベルギー
- オーストリア
- オランダ
- イギリス
- スペイン
- ドイツ
- フィンランド
- オーストラリア
- コロンビア
などでは、大麻に含まれる成分(テトラヒドロカンナビノール、カンナビノイド)や合成カンナビノイドを医療に使用することが認められています。
治療方法がなく、現在使用が許可されているモルヒネなどの鎮痛剤が効かない痛みや症状に対して効果があるのであれば、大麻に含まれる成分(テトラヒドロカンナビノール、カンナビノイド)や合成カンナビノイドを使うことのどこに問題があるのでしょうか。
- ガンの痛み(癌性疼痛)
- 様々な病気による痛み
- 外傷による痛み
が酷い場合に、鎮痛剤として
モルヒネ(morphine)
が病院で使用されますが、このモルヒネはケシを傷付けて得られる液を原料とするアヘンから抽出されます。そのモルヒネを精製することによって生成されるのが
ヘロイン(heroin)
このモルヒネもヘロインも日本では麻薬及び向精神薬取締法において麻薬に指定されていて、厳しく規制がされています。
麻薬=危険=ダメ。ゼッタイ。
という単純な考え方も同じ位に危険です。
生き地獄のような痛みに為す術もなく放置されている一部の患者さんのQOLを上げることができるのであれば、大麻の医療的な使用は今すぐにでも解禁するべきだと思います。
それを「体に悪いのだから、医療目的であっても禁止されるのは当然だ」と言われる方は、本当の痛みを感じたことがない人なのかも知れません。
ただ、解禁に向けて検証をしていると厚生労働省が公表することによる負の影響が大きいことを懸念して、全くの秘密裏に現在検証をしている可能性もゼロではないと見ています。
モルヒネが効かない、または体質や状態によってモルヒネが使えない方の酷い疼痛を治療するために、大麻の医療目的に厳しく限定した解禁はあっても良いと個人的に思います。(健康被害やドラッグにうるさい欧米が大麻の医療目的での使用を合法化したのにはそれなりに理由があると考えています。)
ただ、一部の大麻解禁派の中には、どさくさ紛れに一般的にも解禁されて、自由に吸引できることを願っている人がいると思いますし、高樹容疑者もその一人だったのかなと思います。ですが、医療用にモルヒネの使用が合法化されていますが、一般人に入手が出来ないのと同じように、仮に医療用に解禁されたところで、一般の人が嗜好品として嗜むことができるようになる可能性はゼロだと思いますので、無駄は期待は止めた方がいいと思います。
酒を飲まない(体質的にはアルコール処理能力は超高い方です)僕にとっては、
- アルコールもゲートウェイドラッグ(Gateway drug)の一つと言われる
- 大麻よりも摂取した際の攻撃性の上昇が概して大きい
- WHOの専門組織であるIARCが、「グループ1の発がん性物質」に指定
- 2012年に飲酒が原因で発生した新規がん患者は70万人以上、がん関連の死者も約36万6000人に上る
にも関わらず、合法とされている訳ですから、それで満足しておけばいいのに、と思ってしまいます。
医療用大麻は無いですが、産業用大麻ならあります
ご存知の方は多いと思いますが、大麻は繊維の原材料になり、許可を受けて育てている人もいます。
記憶に新しい事件に、鳥取県智頭町で町おこしのために大麻の栽培許可を得て栽培をしていた「八十八や」の上野俊彦代表が、大麻取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕されたケースがありました。彼は自宅に乾燥大麻88g(!)を隠し持っていたそうですが、最初から吸引目的で町おこしを持ちかけたのか、ミイラ取りがミイラになったのかは不明ですし、この乾燥大麻が
- 普通の大麻
- 産業用大麻
のいずれかなのかは不明です。(もし産業用大麻であった場合、ちょっとカワイそうな気もします。ただ、試しに吸ってみようという下心があったり、産業用大麻ではない場合は厳しく罰してあげて欲しいです。伝統産業復活を隠れ蓑にしたことはタチが悪いですので。)
実は繊維などの原材料にされる産業用大麻は、
マリファナの主成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)が少なく、カンナビジオール(CBD)が多い
品種のことです。
- テトラヒドロカンナビノール(THC):規制対象の成分
- カンナビジオール(CBD):テトラヒドロカンナビノール(THC)の効果を打ち消す成分
となっていますので、カンナビジオール(CBD)が多い大麻草は吸っても所謂「大麻」の効果はありません。
産業用大麻としてそのような種類の大麻草が使用されている訳ですが、日本では産業用かどうかに関わらず、大麻取締法の規制対象になりますので、都道府県知事の許可を得ないと栽培することができませんし、下手に持ち歩くと逮捕されてしまいます。
大麻草を使った繊維は、日本に古来から存在していた伝統産業で、古くは神道で罪や穢れを祓う幣にも大麻草の繊維が使用されてきました。あの「ふぁさー ふぁさー」ってやる棒の先についたものです。
ここで注意なんですが、現在「麻・リネン」と呼ばれている繊維は大麻草が原材料ではありません。現在日本で「麻」として流通している繊維は、
アマ科の亜麻から作られるリネンが殆ど
そして、一部イラクサ科の苧麻から作られる繊維も存在している状態。
しかし、海外からこれらが入ってくる前に日本で作られていた繊維は元々日本に自生していたアサ科アサ属の大麻草を使用したものでした。
20数年前位から、
HEMP(ヘンプ)
と表示された繊維を見かけるようになってきていますが、実はこれが大麻草から作られた繊維なんです。
日本ではまだ認知度が低いものの、麻世妙というブランドが立ち上げられるなど、復活に向けて着実に進んでいるようです。2015年7月には安倍昭恵さんが、今年逮捕された「八十八や」の上野俊彦代表を訪問し、話を聞いたのも古来からの伝統産業の復活に関心があったためです。
嗜好品としての大麻解禁は興味がありませんし、可能性もほぼゼロだと思いますが、伝統産業としての大麻草による「大麻」の復活は期待しています。
ヘンプ麻のシャツ 草木染め 紺 |
また、産業用大麻に多く含まれるカンナビジオール:CBDに鎮痛作用とは別(鎮痛作用があるのはテトラヒドロカンナビノール:THC)の薬効があると言われていて、一部で輸入が始まっていると聞きます。
繊維としての「大麻」の復活と共にカンナビジオール:CBDの研究が進み、私達の健康に繋がる発見がされることを祈っています。
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僕も、その意味における「大麻」については推進派です。
※くどいようですが、産業用大麻であっても、大麻取締法で禁止されている以上は勝手に栽培等を行うことはできません。いずれ法律が改正されるとは思いますが、それまではしっかりと都道府県知事の許可を得て栽培するようにしましょう。
大麻について少し勉強してみませんか?
嗜好品として解禁しろとは言いません。ですが、世界の流れからして、研究すら禁止するのは間違っていると思います。政府として大麻の吸引を禁止したければ禁止は続けても構いませんが、産業用大麻を都道府県知事の許可無しに栽培できるようにしたり、医療用途への大麻使用について研究を開始するなど、何らかの動きを見せて欲しいと思います。
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