新幹線の車両火災で生き残る方法
2019/06/13
6月30日、新幹線客室内で焼身自殺が発生。巻き込まれて女性1名が亡くなり、多数の負傷者が出ました。この事故は国土交通省によって新幹線による初めての「列車火災事故」と認定されました。
新幹線に限らず、列車火災を防ぐために内装の難燃化が進められてきました。その中でのガソリンを使った焼身自殺による火災事故。今後は難燃化だけでは防ぐことができない火災への対応も進められていくことと思いますが、危険物持ち込みの阻止や火災発生時の排煙排熱など、簡単には解決できない問題に時間がかかることは避けられません。
新幹線の車両火災で恐ろしい点
新幹線は失火の可能性は低いものの、ガソリンなどの強燃性の液体やガスによる火災には非常に弱い部分があります。
- 火災報知器はなく、非常ブザーのみ⇒火災を認識し、緊急停止を開始するまでに時間がかかる
- 高速走行している場合、停止までに時間が掛かる⇒停止まで車両外へのドアを開けられず、排煙ができない
- 緊急停止させると電療供給が止まる⇒照明が消え、ドアなどは全て手動で開けるしかない
- 気密性が非常に高い⇒煤・一酸化炭素を含む高温の空気を排出できない
- 天井が低い⇒煤・一酸化炭素を含む高温の空気が人の高さまで直ぐに降りて来てしまう
- 車両内の容積が小さい⇒煤・一酸化炭素を含む高温の空気が人の高さまで直ぐに降りて来てしまう
- 窓が開かない⇒排煙排熱ができない
- ドアが2つしかなく、しかも小さい⇒排煙排熱ができない
- 客室は天井から吸気、床から排気している⇒高温の空気が下がってしまう
以上の弱点によって、車両の天井から1000℃前後の煤・一酸化炭素を含む高温の空気が溜まっていき、直ぐにひとの高さまで降りてきます。その空気に触れたり、吸い込むことによって、熱傷や気道熱傷を起こします。至急避難しなければ一酸化炭素を吸い込み、失神・絶命します。
生き残る方法
火災時の避難における大原則は
体を低くして避難する
これに尽きます。火元が狭い場合は放射熱による被害は未だ小さいのですが、火元が小さくても煤・一酸化炭素を含んだ高温の空気を吸い込むと一瞬で気道熱傷を起こし、呼吸が出来なくなってしまいます。一酸化炭素も数秒吸い込むと気絶しますが、1000℃前後の空気は一瞬でも吸っては危険です。
車両内で炎が上がった瞬間に体を低くして、通路に出ましょう。速やかに炎とは反対側のドアに向かって避難を進めてください。できれば口をハンカチなどで覆ってください。ただ、ハンカチを探して時間をロスするよりは、先ずは体を低くして、避難を始めましょう。
今後の安全対策
失火による火災への対策は十分でしたが、今回のようなケースやテロによる火災には弱いことが分かりました。
非常ブザー
非常ブザーを鳴らしても、暴行事件なのか、火災なのか、車両の異常(ドアが開いてしまった)なのかが分からず、乗務員が事態を掌握して、運転士に緊急停止を求めるまでに時間が掛かってしまいます。現在の非常ブザーには「車両火災の場合は、このボタンを使用しないで乗務員にご連絡ください」と書かれていて、火災時には使用ができないことになっています。これは非常ボタンが押された場合は運転士は緊急停止をすることになっていますが、火災の場合はトンネルなどを避けて停止しなければならないため、乗務員が事実を確認してから停止することになっているためだそうです。今回は火災が運転室の直ぐ後方であったために、運転士が火災の発生に気付き、トンネル内を避けて、非常ブザーから2分後に停車したそうです。
今後は火災に備えて乗務員と話が出来るインターホンを備えた非常ボタンに切り替わっていくと思われます。
排気機能
高速走行の新幹線は、騒音防止の観点から屋根ではなく、車両下に空調設備が配備されています。その為、新鮮な空気は天井に回されて吹き出され、床にある排気口から強制排気される構造になっています。
今回、煤・一酸化炭素炭素を含んだ高温の空気が充満した原因に、緊急停止した車両への電気供給が止まり、空調システムが機能しなかったことを挙げている専門家もいますが、現在の新幹線の空調システムでは床下から吸い込むことで高温の空気を下げてしまうことになり、被害を更に拡大していた恐れもあります。電力供給の停止は、明るい昼間でもあったので不幸中の幸いだと言えます。今後は通常の吸排気機能だけではなく、緊急時の排煙排熱機能をいかに持たせるかが課題になるでしょう。
どのような安全対策が取られたとしても、火災発生時の
体を低くして避難する
という大原則は変わりません。屋内でも新幹線の中でも、火災発生時はできる限り体を低くして、速やかに避難しましょう。
万が一に備えて、バッグに防煙マスクを1枚入れておくと安心です。
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