慇懃無礼と大人の発達障がい
2019/06/12
小学生の頃から大人と喋る時の言葉遣いが「丁寧」だとか「大人っぽい」とか言って褒められて、まんざら嫌な感じではなかったんですが、最近それが僕の発達障がいの現れだったのかなと気付きました。
慇懃無礼な態度は発達障がいのサインかも知れません
礼儀正しいことは悪いことではありません。
この礼儀正しいことと慇懃無礼との境界線って結構曖昧で、受け取る側の気分や相手との関係性に左右されてしまうものでもあります。大人では慇懃無礼になる言動も、小学生なんかがすれば「かわいい」と好意的に取られる場合もあるかも知れません。
また、相手に自分の負の感情(怒り)を伝えるために、意図的にする「慇懃無礼」もあったりしますので、決して「慇懃無礼=大人の発達障がい」ということではありません。
ですが、止めようとしても止められない
- 度を超えた丁寧さ
- 年齢にそぐわない丁寧さ
は発達障がいの現れかも知れません。
僕の話に戻りますが、小学生の頃から(保育園の頃からその傾向はあったようです)大人と話す時には、非常に丁寧な言葉を遣っていました。
- おたくはどちらですか?
- ○○君はいらっしゃいますでしょうか?
- これを頂けますか?
などなど。駄菓子屋で「これを頂けますか?」はないですよね。。。
この話し方のせいで「育ちがいい」とか「この子は賢い」とか「将来が楽しみだ」とか言われるので、余計に拍車がかかっていたところもあったかも知れません。
大人達がそんな風に言うので、きっとそうなんだと思い、自分でもそう信じて生きてきました。
ですが、成長に従って、何か違和感を感じるようになってきました。
大学生になった頃当たりから、
- 家族
- 仲の良い友人
- 普通の友人
- 知人
- 他人(年下)
- 他人(同じ位の年齢)
- 他人(年上)
- 他人(かなり目上の人)
と、様々な異なる人と接するようになった時に、どんな言葉を使えばいいのか分からなくなる時が増えてきました。
そして、気が付けば、極々一部の昔からの友人以外とは「敬語」を使って話をするようになってしまってしまい、バイト先の後輩にまで敬語を使うと「タメ口でいいっすよ」とか言われ、「タメ口」で話そうと努力もするんですが、会話をする度に相手との関係性に基づいた適切な「タメ口」を探すのに疲れてしまい、結局は「敬語」に戻ったりしてしまいました。
そして、この頃から親と話しをする時にも、どんな言葉を使うべきかが分からなくなり、次第に敬語を使うようになってしまい、実は現在もその状態が続いています。
現在、言葉を選ぶことを考えずに素で話ができるのは、妻子とうちの猫と実家の犬だけかも知れません。こどもが生まれた時、新生児室でこどもの写真を撮った時、誤ってフラッシュがついてしまった時、新生児の自分のこどもに対して、とっさに
「ごめんなさい。」
と言ってしまったのを、妻と同じ病室だった方とその旦那さん(と二人の赤ちゃん)に聞かれてしまい、かなり笑われたことがありました。また、うちの猫が初めて家に来た時、なんと喋ったらいいのか分からず、かなりの期間は無言で接していました。テレビで見る
「○○ちゃーん、ただいまにゃーん。」
とかとても言えませんでしたし、今も無理です。(まぁ、これは別の問題もありますけど。)
僕には、一部の対人スキルが欠如しているようです
それに気付かず、自分には話す能力が欠けているのだろうと思い、様々な話し方の本を読み、色々な努力もしましたが、すべて徒労に終わりました。今考えてみれば、話し方の問題ではなくて、自分の対人関係の能力の問題なので、話し方の本を読んでも治るはずがありません。
ペーパーテストを受ければ、それなりの点数は取れると思います。「この場合はなんと言うべきですか?」のような質問をされれば、今まで蓄積してきた知識の中から、適切な会話を組み立てることは難しくないと思います。実際、現国は得意科目でしたし、偏差値も悪くなかったです。
僕にできないのは、
- 相手との関係性をリアルタイムで把握すること
- 相手の今の感情を読み取ること
これが圧倒的に苦手です。予めこの2点を情報として与えられた上でテストをされたら、問題なく答が出せると思います。
でも、実際の会話では、考える時間が短い(瞬間)上に、相手との関係性や相手の現在の感情は情報として与えられることはなく、自分で感じ・考え、結論を出す必要があります。
どうやら僕はこの能力が欠落してしまっているようです。
だから、僕にとっては、今目の前にいる友人がどんな気持ちでいるのかを推測するよりも、「山椒魚の気持ちを述べよ」と言われた方が遥かに気が楽ですし、簡単です。
自分が大人の発達障がいだろうと気付けて良かったこと
診断を受けた訳ではないので、あくまで素人の推測ですが、まず間違いないでしょう。そもそも結構重めの記銘力障がい(特に短期)があるので、何か他にあってもおかしくありません。(しかも、近い親戚にもいますし。)
恐らくは自閉症スペクトラムだと思いますが、確定診断は希望しません。お金勿体無いですし、この年ですからリハビリをしているうちに人生が終わってしまいます。長い人生の中で、この心身との付き合い方も概ね分かって来ていますので、これからも今までと同じように生きていくだけです。
ただ、ある時点で「自分は大人の発達障がいかも」と気付いて良かったことは、自分を許せるようになって、気持ちが楽になれたことですね。
記憶力が凄く悪いことや相手に合わせて上手く話ができないことについて、ずっと自分を責めて生きてきました。みんな普通にできているのに、自分ができないのは努力が足りないせいだ、と。まぁ、高校生位まで毎日のように親からそう言われて来ましたので、そう思ってしまうのも無理ないですね。
どれだけ努力しても変わらないことを、自分の努力が足りないせいだと思って沈んだところで何も変わりませんが、以前はその底なし沼にどっぷりハマってしまってました。
ですが、それが発達障がいのせいかも知れないと気付けたことで、自分を責めることから解放されて、気持ちが楽になりました。
努力しても変わらないのであれば、自分を責めるよりも、自分を受け入れて、それを前提とした上でどう生きていくべきかを考えた方が生産的ですし、何よりも気持ちが楽です。記憶力がいい人を妬んだりする気持ちも消えました。
若い人の場合は、自分が発達障がいだと知ることで、リハビリや苦手な部分を別の方法で補う努力をすることもできます。また、自分を責めてしまっている人の場合は、気持ちが凄く楽になる可能性もあります。もし僕と同じように話し方が「慇懃無礼」だと言われたけど、どう治したらいいのかが分からないという場合は、話し方よりも発達障がいを疑って、一度精神科を受診されるのもいいかも知れません。その上で、他人との接し方を見直せば、変えられる部分も大いにあると思います。
実は人の名前がほとんど覚えられません
自閉症スペクトラムに関連していると思いますが、僕は人の名前を覚えることが非常に苦手です。苦手というよりも、かなりできません。
「はじめまして。私、株式会社△△の○○と申します。」
と簡単な自己紹介をして、名刺交換をしただけでは相手の名前を覚えられる可能性はゼロです。聞いた瞬間に相手の名前が僕の脳から「揮発」して行きます。名前が苦手な上に、短期記憶が使い物になりません。名刺交換の場合、相手が一人でも可能性はゼロなので、相手が複数存在すると、覚えられるどころか混乱します。
よく「一回聞いただけじゃ僕も覚えられないよ。」と慰めてもらったりしますが、それでも暫く一緒に仕事をすると「あぁ、この人かなりヤバいかも。」って気付いてもらえると思います。どんなに集中していても、今面と向かって「○○です」と言ってもらった「○○」が全く頭に残りません。ただ、もし相手が「佐村河内(さむらごうち)守です」とか、何かで非常に有名になった人と同じ名字だったりした場合は覚えている場合もあります。ただ、そんなレアな場合でも、ふとした時に記憶が傷付いて、「佐村河内(さむらごうち)さん」が「綾小路(あやのこうじ)さん」に置き換わってしまうこともありますので、注意が必要です。
僕が名前を覚えていられるのは、ごく親しい一部の人だけ。それでも、最初から覚えられた訳ではなくて、何百回、何千回も頭の中で繰り返して定着させないと毎日会っていても名前が消えます。長い付き合いを経て名前が定着した人でも、しばらく会わないだけで名前は消えていきます。
名前が覚えられないことで色々苦労もしましたし、最近になるまでは自分を責めもしましたが、発達障がいの一つとだとして受け入れてからは上手く付き合っています。
- 付き合い始めたばかりの恋人とのデート中に名前を忘れて「名前、難しい漢字だよね。」とか名前ネタを振って確認したことがある
- 商談中にテーブルの上においた相手の名刺の位置がずれて、別の名前で呼び掛けてしまったことがある「○○部長はいかがですか?」「△△ですけど」「○○は私です」
- 名刺に似顔絵を書くと覚えられると聞いてやってみても全くダメだった
- 相手の名前を呼ばすに済ませる方法を身に着けている(「おたく」と読んでいた時期もありますが、「オタク」が普及してからは断念)
元々人と接するのが得意な方ではないため、今では浅く広い付き合いは極力控えて、
名前を覚えられる範囲の人(少数)とだけ付き合う
ようにして、心の平安を取り戻せています。
それから、スマホのアドレス帳も活用しています。定期的に見ることで、親しい人の名前が消えて行くのを防ぐように努めています。
仕事の都合でそうも行かない人もいると思いますが、覚えられない自分を決して責めたりはせず、逆に頑張っていることを褒めてあげてください。その上で、自分にあった記憶法または管理法を開発してくださいね。
名前を覚えられない者としては、全ての人が名刺に顔写真を印刷してくれると助かるんですけどね。時々そんな名刺を頂きますが、本当にありがたいです。もしそれがダメなら、写真撮らせて頂けると、とアドレス帳に顔写真も登録して、定期的に眺めていればきっと足しになると思いますが、どちらも難しいでしょうね。。。
名前が覚えられない(というか、名前と顔を一致させることができない)人の中に脳障がいによる「相貌失認(そうぼうしつにん)」の人もいますが、僕はそれではありません。顔の違いは認識できますし、記憶もできます。名前を覚えることができません。でも、極稀に思い出した顔の画像に名札が残っている時があり、その名札を拡大して名前が分かる時があります。せめて毎回出来る能力だったらマシだったんですが、極稀にこれが出来ても意味がありません。
大人で僕と同じような悩みを持たれている方は、既に自分なりの対処方法を身に付けられていると思いますので、そのことで自分を責めている方が僕の話を読んで少しでも気持ちが楽になってもらえたら嬉しいです。
もしお子さんが僕のような特徴が見られる場合は、考えたくはないかも知れませんが、それが発達障がいによるものである可能性を疑って、機会があれば専門医の意見を聞かれることもご検討頂けたらと思います。もし親がこどもの苦手なところも個性であるとして、全てを愛するという姿勢で接している場合は心配は要らないのかも知れませんが、それでも努力の成果が出ないこと、そして人と違うことにお子さんが人知れず悩んでいる可能性もありますので、そのような場合は適切なアドバイスを宜しくお願いします。今はこんな風にして記事に書いている位ですが、一時期は自暴自棄になる位に悩んでいたこともありました。
目に見えない発達障がいなどは、周囲も本人も気付くことができずに、気付けないことが原因で不必要に苦しんでしまう場合があります。あって欲しいと思う親はいないと思いますが、ないことを願うばかりに現実が見えなくなってしまわないように注意が必要です。
出来れば、周囲や本人が気付く前に、早い段階で親が気付いてやり、代替の方法を教えて導いてあげられると一番いいと思います。
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