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「ツレが季節性うつになりまして。」 季節性情動障害:SADには要注意

      2019/06/12

「ツレがうつになりまして。」が封切りされたのは2011年。僕は地獄のようなうつ病時代を引きずりながら何とか生きている最中で、映画のタイトルを見るのもしんどかったのを覚えています。あれから更に数年経って、漸くうつ病を「恥ずかしくない」病気としてとらえることが出来つつありますが、それでもまだこの映画を視る勇気はありません。

ツレがうつになりまして。 by amazon.co.jp

そんな中、毎年この時期に起きる奥さんの季節性うつが今年もやって来ました。

しかし、今年は更年期障害と合併したらしく、特に酷くなってしまい心配です。気分の落ち込みが例年よりも酷いことに加え、今年は攻撃性が出ています。攻撃性が出ていると言っても他人にはそれほど向かず、自分自身に向かっているので、何かにつけて自分を責めてしまい、悪循環。昨晩は突然家を出て行きました。これもほとんど年中行事の一つになってはいますが、プチ家出の時間が例年よりも長いので、その分例年よりも余計に心配もしました。

実は奥さんの母親が酷いうつを長年患っていて、今も抗うつ剤が手放せません。そして、弟の奥さんとその母親も共に酷いうつ。従姉妹も長年うつに苦しみ、少し前には自殺未遂によって暫く入院もしていました。ちなみに、僕の家系にもうつだらけ。そして、僕もうつ経験者。だから奥さんは一般的な人よりもうつに関する認識と理解があるはずなんですが、自分自身がうつであることを認めたくないようで、頑として病院へ行くことを拒絶しています。「行けば楽になるかも知れないのに」と思いますが、この病気に関しては無理強いは余り良くないので、当面は様子見にします。

ところで、季節性うつとは何でしょうか?

正式名称は「季節性情動障害」

英語では、Seasonal Affective Disorder

Seasonal:季節性の

Affective:感情の

Disorder:障がい(障害)

その頭文字をとって、略称は「SAD」。悲しいの「sad」とかけてあり、その辺り流石です。

その名の通り、ある特定の季節になると抑うつなどの状態が続く情動障害です。抑うつの他に、気力の低下・倦怠感・過眠傾向などが見られます。冬に入る前、この秋の時期に限定されるものだと思われることもありますが、梅雨時に起きたり、他の季節に起きたり、特に季節は限定されません。普段は元気なのに、ある特定の季節になると、情動(感情)障害が生じて、それが周期的に生じる場合は、季節性情動障害(SAD)の可能性があります。

ただ、厳密は精神障害の分類上は、

反復性大うつ病(Recurrent major depressive disorder)

の季節的なものであるとされています。※「精神障害の診断と統計マニュアル 第5版(DSM-5)」

また、別の分類では、

反復性うつ病性障害(Recurrent depressive disorder)

に含まれるものとされています。※「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)」

これを見ると分かるのは、

  • 季節性
  • 毎年(のように)起こる

からと言って、「軽い」とか「放っておけば治る」的なものではなく、それなりに覚悟をして、向き合う必要があるものだということが分かります。

とは言え、

暫くは気持ちが沈むものの、放置しても体調を崩したりすることもなく元通りに治る

という場合は、心療内科を受診する必要はないかも知れません。

それは、軽い風邪であれば、内科・呼吸器内科を受診せずに、放置していれば治る場合もあるのと同じです。ですが、風邪もこじらせると肺炎に至り、最悪は死に至る可能性もあります。

たかが風邪、されど風邪

です。

うつだからと言って、軽いのに安易に抗うつ剤を頼る癖は付けない方がいいとは思います。ですが、毎年秋になると気が滅入って何もしたくなくなり、生活に支障が出る(学校・会社に遅刻、家事・仕事が滞る、誰にも会いたくない、痩せる/太るなど)ような場合は、心療内科などを受診した方がいいでしょう。

また、かなりの人が

秋だから気持ちが滅入るのは仕方がない。自然なこと。

と思っているかも知れません。秋になって、太陽の光が力を失い、4時頃には日が陰るようになり、山が色を変え、風には稲刈りの後の藁の匂いや落ち葉の匂いが混じるようになると感傷的になるのは四季がはっきりした日本では自然なことでもあります。また、そう感じるように教育されてきている部分もあります。

ただ、秋に感じるちょっとセンチメンタルな感情と季節性うつ(季節性情動障害)とは似ているようで同じではありません。いくら秋にセンチメンタルになるにしても、これはないだろうと思ったら、心療内科を受診しましょう。

  • 好物だったものでも食べたいと思えなくなった(焼き芋・栗・サンマ・松茸)
  • 行楽日和でも外に出たいと思わなくなった
  • 好きだったバラエティ番組が苦に感じるようになった
  • とにかく眠くて、寝坊してしまう
  • 激しい自己嫌悪
  • 原因不明の腰痛が続いている(椎間板ヘルニアなどの異常がない) など

周囲の人は「自分も秋になると気分が沈むけど、そんなことは気のせいだ。気分転換すれば治る。」などとは言わないであげてください。風邪をサウナで治せる(と信じている)人もいれば、風邪で命を落とす人もいます。人それぞれですので、優しく見守ってあげてください。よろしくお願いします。

季節性うつ(季節性情動障害)の治し方

秋や冬に発症する季節性うつ(季節性情動障害:SAD)の場合、イギリスやカナダなど高緯度地域での発症率が高いと言われています。

高緯度地域の秋・冬=日照時間が短い

という事実があるため、

季節性うつ(季節性情動障害:SAD)の原因が日照時間が短くなることにある

と考えられています。(ですが、本当にそうなのか、そしてどうやって発現するのかは解明されていないようです。)

そのため、秋や冬に発言する季節性うつ(季節性情動障害:SAD)は、日光など強い光を浴びることが治療になるとされて、光療法がさかんに取り上げられていますが、効果は微妙です。出るかも、出ないかも、です。

効果が出る人もいると思いますが、効果が出ない人もいるでしょう。

うちの奥さんの場合、毎日8時に出勤しますが、東に向かって車を走らせるため、秋から冬にかけては朝日を浴びまくりです。若年性白内障の悪化が心配で、サングラスかPCグラスをかけている位です。それだけ毎日朝日を浴びても効果がない奥さんの場合は、ライトセラピーは効かないかも知れません。

「精神障害の診断と統計マニュアル 第5版(DSM-5)」や「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)」においては、季節性うつ(季節性情動障害:SAD)を独立した特別なものとして扱われずに、

  • 反復性大うつ病(Recurrent major depressive disorder)の季節的なもの
  • 反復性うつ病性障害(Recurrent depressive disorder)のひとつ

であるとされます。

ですから、秋から冬に見られる季節的なものだからと、素人判断で光療法に手を出すことはせずに、治療に関しては医師の診断を受ける方が安全だと思います。(その結果、医師が「光療法」を勧める可能性もあります。)

僕は季節性うつ(季節性情動障害:SAD)は未経験ですが、うつ病になった時には、ありとあらゆる方法を試しました。

  • 心療内科での治療(投薬)
  • うつ病専門のカウンセラーによるカウンセリング
  • セントジョンズワート関係の色々(お茶・粉末カプセル・サプリメント)
  • アロマ(香・アロマオイル)
  • マイナスイオン発生機
  • ノコギリヤシ(夜のおしっこ問題だけではなく、うつ病にも効果があるとする意見もあります)
  • 認知療法(10冊以上本を買いましたが、多くは買って積む「安定剤」化しました)
  • 運動(ジム通いと柔道)
  • 瞑想
  • シンギングボウル(イルカセラピーと似た効果があるという記事を読んで)
  • ホーミー(シンギングボウル繋がりで)
  • ガムランなどのCDを聴く(ホーミー繋がりで)

ですが、どれもバチッと効果が出たものはありませんでした。

singingbowl

そんな訳で我が家にはシンギングボウル(おりんを代用)が2つもあります。。。

薬についても「○○は効く」「△△は効かない」という様々なコメントが書かれていますが、これも人次第だと思います。僕は薬が余り効かない体質らしく、主治医が色々な薬を試してくれましたが、結局効いた感覚は余りありませんでした。(副作用が強烈だった薬はあります。)

ですが、毎週(または隔週)で心療内科に通って、そこで出された薬を飲み、定期的にカウンセリングを受け、これが良さそうだという色々なことを試しているうちに時間が経過して、次第に快方に向かいました。

何かひとつの要素が劇的に効いて、それが治してくれるといいんですが、なかなかそんな風に行きません。

  • 診察(時にカウンセリング)
  • 薬(時にサプリメント)
  • 工夫(認知療法・運動・食生活改善・生活リズム)

を根気よく続ける必要があります。

そして、同じ位に大切なのが、

時間

です。

「日にち薬」とはよく言ったもので、うつを治すためには「時間」も非常に重要です。

とは言え、何もせずに放置した状態で時間ばかりかけても悪化させる恐れもありますので、

  • 診察(時にカウンセリング)
  • 薬(時にサプリメント)
  • 工夫(認知療法・運動・食生活改善・生活リズム)

を続けて、症状を悪化させることがないように注意しながら、「時間」自体にも治す効果があることを信じて、焦らずにうつに向き合って行くのがいいのだと思います。

僕のうつに季節性はありませんが、何度かぶり返していますので、反復性大うつ病や反復性うつ病性障害にも該当するのかも知れません。何度なっても「うつ」には慣れることはありませんが、治療や対応を繰り返しているうちに、「うつ」の認知が進んで、「うつ」に支配されない自分が出来てきます。最初にうつ病になった時は、自分の全てが支配されて、この世の終わりに感じましたが、今では「うつ」が再発しても、そんな自分を客観的に分析できる自分を持つことが出来るようになったので、

  • この感情はうつ病のせい
  • 世界は終わらない
  • 実情はそれほど酷くない
  • 脳のセロトニン分泌が正常に戻れば、この状態からは抜けられる

などと考えることで、良い方向に自分を向かわせることはできるようになっています。

苦しい時は抜け出す方法なんて無い様に思えるかも知れませんが、以前は元気だった訳ですから、抜け出すことができないはずがありません。ですが、何もせずに抜け出せるようになれない場合が多いのも事実です。

もし毎年決まってこの季節に気分が重くなり、日常生活に支障をきたしている場合、そしてそれが年々ひどくなっているように感じる場合は、一度心療内科の先生に相談してみることを検討してください。

再び秋や冬が楽しめるようになることを祈っています。

 - 健康, 生活

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