ピロリ菌による萎縮性胃炎をがん化させないためにすべこと

2016/02/17 2019/06/12

ヘリコバクター・ピロリに感染した胃は慢性的に胃炎を引き起こし、やがて萎縮性胃炎という状態になります。この状態になると、何をしても元には戻らないと言われていて、ピロリ菌の感染がなく、萎縮性胃炎を起こしていない人と比較すると胃がんを発症するリスクは10倍に上がると言われています。

でも、逆を言えば、ピロリ菌にによって萎縮性胃炎になってしまっても、胃がんになるリスクが10倍になるだけで、必ずがんになる訳ではないとも言えますので、「萎縮性胃炎」だと診断されても、悲観する必要はありません。ストレスも胃には大敵ですから、早めに分かったことを運が良かったと思い、食生活などを変えて、がん化しにくい体づくりを心がけましょう。

萎縮性胃炎の場合は必ずピロリ菌を除菌

萎縮性胃炎だと診断を受けた時点で内視鏡検査を受けていると思いますので、セットで医師からピロリ菌の除菌の話が出ていると思います。

萎縮性胃炎を広げない・悪化させないためにも、ヘリコバクター・ピロリの除菌は必須です。そして効果もあります。

ピロリ菌の除菌には病院で処方された内服薬を使います。

1回目（1日2回で1週間）の治療で除菌できる確率は75％
2回目（別の薬を1日2回で1週間）の治療で除菌できる確率は85％
両方の治療を通しで行うと除菌率は95％以上

と言われていますが、これは正しく薬を服用した場合であって、薬を飲み忘れたり、途中で中止したりすると除菌ができない可能性があります。

仮に間違いなく正しく服用したとしても、除菌ができない場合があります。2回の治療を行っても、最大で5％の方は除菌できないとも言われていますので、

治療後4週間以上経過してから実施するピロリ菌が除菌できたかを確認する検査

は必ず受けるようにしてください。

萎縮性胃炎をがん化させないために止めた方がいいこと

タバコとアルコールは萎縮性胃炎を悪化させます。ピロリ菌の除菌治療をする時、アルコールを飲まないように言われると思いますが、治療が終わった後も止めた方が胃には優しいことは間違いありません。

ただ、QOL（生活の質）にも関わる事ですので、無理に止めることで大きなストレスを感じるようでは本末転倒です。止められるなら止めて、止められない場合は、量を減らしたり、アルコールの場合は空腹の状態での飲酒を止め、乳製品を飲食した後にアルコールを飲むようにするなど、一工夫が必要です。

喫煙・飲酒の週間のない人も、

熱い物の飲食
塩辛い物
焦げた物
脂の多い物
強い香辛料
ブラックコーヒー

などには注意しましょう。

特に火傷するほど熱い物を飲食すると胃壁を激しく損傷する恐れがあります。また、塩が萎縮性胃炎を悪化させることも分かっていますので、熱い物と合わせて塩辛い物の飲食を控えましょう。

焦げた物は発がん性物質「アクリルアミド」や「トリプP1・P2」が含まれている場合がありますので、萎縮性胃炎の人以外も摂取を避ける必要があります。

脂の多い物・強い香辛料・ブラックコーヒーなどは、胃への刺激が強いため、摂り過ぎや空腹時の摂取を控えた方が安全な食品です。（コーヒーはミルクを入れると胃に優しくなります。）

萎縮性胃炎を悪化させないために食べるといいもの

萎縮性胃炎の人は、胃に強い刺激を与えないように考えるのと同時に胃を保護してくれるものを食べるように心がけましょう。

LG21（明治乳業）

LG21という乳酸菌が出す乳酸はヘリコバクター・ピロリを殺すと言われています。除菌治療中に食べることで治療効果が上がることが分かっています。中には、LG21を継続的に食べただけでピロリ菌を除菌できてしまった方もいるそうです。

既に除菌が終わった人でも、万が一微量に残ったピロリ菌がいる場合に、LG21を食べておけば、再発を防ぐことを支援してくれますので、安心です。

また、除菌をされた方のお子さんがピロリ菌の垂直感染を起こしている可能性がありますので、症状がないこどものうちはヨーグルトにLG21を選ぶことで、萎縮性胃炎を発症させるリスクを下げ、病院へは行かずに除菌できる可能性もあります。

少々高めのヨーグルトですが、食品＋サプリメントだと思って、毎日の食事に取り入れると安心です。

牛乳

牛乳は胃壁を守る効果があるため、飲み会前に飲むといいと言われますが、食事前にも少し飲んでおくと胃に負担が少なくなります。ほんのり温めた牛乳が最適です。ヨーグルトやチーズも同じ効果がありますので、食事前に少量のヨーグルトやチーズを食べるのもお勧めです。

大根

生でも、煮炊きしても、大根は胃に良い食べ物です。

中でも、大根おろしには消化酵素のアミラーゼ（ジアスターゼ）、プロテアーゼ、リパーゼなどが含まれています。また、辛味の元となる成分のイソチオシアネートにはがんを予防する効果があるとも言われています。煮炊きすると壊れてしまいますので、これらを活かすには、大根おろしが最適です。

消化酵素は生であれば大根おろしでもサラダでもいいのですが、イソチオシアネートは大根おろしでしか生成されず、しかもおろして直ぐに食べないと揮発してしまいますのでご注意ください。

納豆

納豆にもムチンが含まれています。他には、

アミラーゼ（ジアスターゼ）：デンプンを分解します
リパーゼ：脂肪を分解します
プロテアーゼ：タンパク質を分解します

などの消化酵素を豊富に含みます。

また、ナットウキナーゼ：血栓溶解作用があり、またピロリ菌を殺菌する効果がありますので、大根と並んで萎縮性胃炎の人のためにあるような食材です。是非活用したいですね。

キャベツ

食べる胃薬の異名を持つキャベツですが、生のキャベツには、

ビタミンU（キャベジン）
リゾホスファチジン酸（LPA）※千切りにしたりする際に、キャベツの中の酵素が働いて生成されます

が含まれます。これらは、胃粘膜を修復を促進します。しかし、熱によって壊れてしまいますので、生でよく噛んで食べることが重要です。

大根と同じように、イソチオシアネートによる「免疫力アップ」や「解毒力アップ」の効果も期待できます。こちらは加熱調理でも効果が失われないと言われていますので、煮炊きした料理でもOKです。

長芋（山芋）

大根と同じく消化酵素のアミラーゼ（ジアスターゼ）が豊富に含まれています。

またムチンという成分（ネバネバの元）は胃壁の粘膜を保護して、タンパク質の消化や吸収を助ける働きがあると言われています。

長芋（山芋）も是非生で食べたい食品です。

ナメコ

ムチンの塊のような食品です。お味噌汁の具として優秀な食材ですが、塩分は萎縮性胃炎に大敵ですから、味噌が濃くならないように注意してください。

オクラ

ムチンも含み、ビタミンA、B1、B2、C、ミネラル、カルシウム、カリウムなどの栄養素にも富んでいます。

モロヘイヤ

刻むとネバネバしますが、それもムチンのせいです。ムチンの他には、抗酸化作用のあるクエルセチンも含んでいますし、カルシウム、カロテン、ビタミンB、ビタミンC、カルシウム、食物繊維など、非常に栄養価に富む緑黄色野菜の代表格です。

タンパク質

破壊された胃壁を修復するにはタンパク質が必要です。そのために、常に質の良いタンパク質を摂取することを心がけましょう。卵、豆腐、納豆、鶏肉、魚などは良質のタンパク質を含む食品になりますが、胃に負担をかけないように、

卵：生や固茹でよりも半熟が望ましいです。固茹での場合は、細かく刻むと消化がよくなります。
豆腐：冷奴よりも温かい豆腐の方がいいです。
鶏肉：比較的消化し易いですが、トマトなどタンパク質の分解を助ける酵素を含む食品と一緒に食べると更によいです。その点、納豆にはタンパク質もタンパク質を分解する酵素のプロテアーゼを含みますので、非常に優秀な食品です。