加熱殺菌処理されていないミネラルウォーターはあるのでしょうか
2019/06/12
「富士山麓のきれいな水」と『富士山の清らかな水 2L』の計746万6658本が回収されることになった事案では、今まで
- 水道水よりも安全
- 水道水よりも健康にいい
と考えて、水道水よりも高いボトル入りの水を買っていた人達に大きな衝撃を与えています。
しかも、回収されている「富士山麓のきれいな水」と『富士山の清らかな水 2L』が加熱処理がされていないという噂も出ていますが、本当なのでしょうかか?
本当かも知れません。
ただ、それが今回の問題の原因ではありませんし、加熱処理がない=危険という訳でもありません。
農林水産省によるミネラルウォーターの品質表示のガイドラインでは、全ての水に対して殺菌処理を義務づけていて、ボトル入りの飲料水を「ミネラルウォーター類」と呼ぶとしています。そして、殺菌処理の方法によって以下の4つに分類されていますが、全てのミネラルウォーター類は殺菌が義務付けられていますし、ナチュラルウォーターもミネラルウォーターも加熱殺菌処理を受けています。
- ナチュラルウォーター
- ナチュラルミネラルウォーター
- ミネラルウォーター
- ボトルドウォーター
日常生活ではここの区分とは関係なしに「ミネラルウォーター」と呼んでしまったりしていますが、結構厳密に区分がされていて、ナチュラルウォーターやナチュラルミネラルウォーターと呼んで販売するためには、殺菌方法などに制限が伴います。
区分において重要なポイントは、
- 水源
- 不純物の除去方法
- 殺菌方法
で、これらの違いによって、区分が変わってきます。
「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」平成2年3月30日付 食品流通局長通達
分類 | 名称・原料となる水 | 処理方法 |
ナチュラル ウォーター |
ナチュラルウォーター 特定水源から採取した地下水を原水とするもの |
ろ過、沈殿及び加熱殺菌以外の物理的・科学的処理を行わないもの |
ナチュラルミネラルウォーター 特定水源より採取された地下水(地表から浸透し地下を移動中又は滞留中に地層中の無機塩類が溶解した地下水)を原水としたもの |
||
ミネラル ウォーター |
ミネラルウォーター ナチュラルミネラルウォーターの原水と同じもの |
ろ過、沈殿及び加熱殺菌以外に、紫外線やオゾンによる殺菌・除菌などの殺菌処理、ミネラルの調整、ばっ気、複数の原水の混合等を行ったもの |
ボトルド ウォーター |
飲用水及びボトルドウォーター 上記以外のもの |
処理方法の限定はない |
※日本の全てのミネラルウォーターには殺菌が義務づけられています。
など、ナチュラルウォーターやミネラルウォーターは必ず殺菌処理が行われています。
ミネラルウォーターの場合は、
ろ過、沈殿及び加熱殺菌以外に、紫外線やオゾンによる殺菌・除菌などの殺菌処理、ミネラルの調整、ばっ気、複数の原水の混合等を行ったもの
加熱殺菌処理以外に、
- 紫外線殺菌
- オゾン殺菌
などを行うことが可能であるため、「富士山麓のきれいな水」と『富士山の清らかな水 2L』はオゾンによる殺菌が行われ、それによって原料水に含まれた臭素が酸化して、臭素酸になったものと考えられています。
販売されているナチュラルウォーターやミネラルウォーターは「殺菌」という点に関しては安全が確保されていましたが、紫外線やオゾンを使った殺菌工程で
発がん性物質である臭素酸
が生成・混入してしまうのは盲点であったのかも知れません。
このことはメーカーによる説明
臭素酸とは、ミネラルウォーター等の消毒を行う際に、副生成物として発生する物質です。原料となる水に含まれる臭素が、オゾン殺菌等により酸化されて生成します。
に基づいたものですが、そもそも臭素自体が猛毒であるため、オゾンによって分解されようがされまいがミネラルウォーターに混入しては困る物質です。
臭素
臭素(しゅうそ、英: bromine)は、原子番号 35、原子量 79.9 の元素である。元素記号は Br。ハロゲン元素の一つ。
単体(Br2、二臭素)は常温、常圧で液体[2](赤褐色)である。分子量は 159.8。融点 −7.3 ℃、沸点 58.8 ℃。反応性は塩素より弱い。刺激臭を持ち、猛毒である。海水中にも微量存在する。出典:Wikipedia 臭素
そもそもなぜ原水に臭素が混入したのかについては徹底的に原因究明と情報公開をして欲しいと思います。
加熱処理をしていないことが今回の問題を引き起こした訳ではありません
「富士山麓のきれいな水」が加熱処理をしていないという噂もありますが、
ミネラルウォーター
として国内で製造・販売されている商品であるため、オゾンや紫外線を使った殺菌が可能ですので、この商品もオゾンを使った殺菌処理をしていたようです。
ただ、オゾン殺菌処理に加えて、加熱殺菌処理も行われていたかも知れませんが、詳細については今後の説明を待つしかありません。
ただ、仮に加熱処理をせずに、オゾンによる殺菌処理だけであったとしても、それが今回の問題を引き起こした訳ではありません。
今回の問題は、
原水に臭素が含まれていた
ことが原因であって、殺菌処理の方法に問題はありません。
臭素酸が含まれていたことについては、臭素をオゾンを使った殺菌工程で酸化して、臭素が臭素酸になったため、加熱殺菌ではなく、オゾン殺菌が原因であると言えなくもないですが、これは意味がありません。
そもそも問題となるレベルの臭素が混入していたことが問題です。
ここは注意が必要な点だと思います。
ヨーロッパでは「殺菌しないこと」が義務づけられています
加熱殺菌かオゾン殺菌かなどの議論はヨーロッパでは意味がありません。
ミネラルウォーターの歴史が長いヨーロッパでは、ミネラルウォーターは
殺菌しないこと
が義務付けられ、殺菌処理されたミネラルウォーターは元「ミネラルウォーター」に過ぎず、ミネラルウォーターと呼んで販売することができません。
殺菌のために加熱や化学処理をすることによって、
- 水の組成は変わってしまう
- ミネラルが損なわれる
- おいしさの元ともいえる酸素や炭酸ガスが失われてしまう
ため、ミネラルウォーターとしての価値が無くなってしまうと考えられているためです。
ですから、ペリエもエビアンも加熱処理はされていません。
これができるのは水源が日本とは違うためで、消費者の安全を考えると、日本の場合は何らかの殺菌処理が必要になるのはやむを得ないかも知れません。
殺菌処理をしない=美味しい・体に良い
とばかり言えません。
ヨーロッパと日本では色々事情も異なります。殺菌処理をしないことで細菌が混入し、健康被害を引き起こしたのでは本末転倒です。
必要に応じた殺菌処理が必要になるとしても、自分の体に入れるものがどのような処理がされているのかについて、もう少し知っていなければならないと今回のケースで反省しています。
これから、ボトルに入った水を買う時には、水源がどこなのか、殺菌方法はどのようなものなのか、などについて、確認をしてから購入したいと思います。
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