離乳期の早期に卵を摂取すると卵アレルギー発症を予防
2019/06/12
国立研究開発法人国立成育医療研究センターが本日プレスリリースした内容がこれから出産される方の不安を解消してくれる画期的な内容でした。
離乳期早期の鶏卵摂取は鶏卵アレルギー発症を予防することを発見(国立成育医療研究センター)
この研究成果は、世界最高峰の臨床医学雑誌の一つであるランセット(The Lancet)上で発表されますが、日本時間12月9日8時30分(英国時間2016年12月8日23時30分)に報道解禁がされたばかりの非常にホットなニュースです。世界でも初の研究で、世界中のアレルギー科・小児科の医師は勿論、多くの出産を控えた女性に光明を与えてくれるはずです。
非常に嬉しいニュースですが、注意も必要です。国立成育医療研究センターのプレスリリースにも書かれていますが、
実際の鶏卵摂取については専門医の指導を仰いでください
そして、今回の研究成果は「発症予防効果」を検討したものになりますので、
すでに鶏卵アレルギーと診断されている乳児の鶏卵摂取の可否、及び予防を目的とした実際の鶏卵摂取については、専門医の指導を仰いでください。また、卵の加熱が不十分だと抗原性が高くなり危険です。自分で調整することは危険なので、必ずアレルギー専門医に相談してください。
研究成果の概要
科学的・医学的な根拠があった訳ではありませんでしたが、食物アレルギーの原因となる食品は長年「乳児期には除去すべき」と考えられてきました。
しかし、乳児期からピーナッツを食べる習慣のある地域(イスラエル)の方が、乳児期にはピーナッツを与えない地域(イギリスなど)よりもピーナッツアレルギーが少ないという事実から、乳児期の摂取が食物アレルギー発症を抑制する鍵を握っていると考えられ、
「離乳早期にアレルギーをおこしやすい食品を食べさせると食物アレルギーを予防できるかもしれない」という仮説
を立てられ、研究が始まりました。(イギリスやアメリカにおけるピーナッツアレルギーは乳児の保湿に使用されるピーナッツオイルや室内に存在するピーナッツ抗原が引き起こしていることは少し前にネットでも話題になりました。)
従来の研究では、生卵を乾燥粉末化したものが使用されたためにアナフィラキシーショックを起こす場合がありましたが、今回の研究では
- 固ゆで卵を乾燥粉末化したもの(50mg)
- かぼちゃ粉末
を使用してことで、安全に実施することが可能になりました。
その結果、
生後6ヶ月より固ゆで卵を与えたグループは与えなかったグループに比べ1歳時の鶏卵アレルギーの発症が約8割減少
するというデータが得られ、「離乳早期にアレルギーをおこしやすい食品を食べさせると食物アレルギーを予防できるかもしれない」という仮説が立証されました。
これによって、従来の「アレルギーの原因となる食品は除去する」という方法から、アレルギーの原因となる食品は早い時期(離乳早期)に食べ始めるという新しい食物アレルギー予防法に繋がる可能性があります。
しかし、
これは治療法ではありません
ので、既に卵を始めとした食物アレルギーであると診断されているお子さんの場合は、医師の指示を仰いでください。
また、
食物アレルギーの予防法としても一般家庭で実施できるレベルにまで確立されていません
ので、実施については必ずアレルギー専門医の指示を仰いでください。特に、卵の加熱が不十分な場合は抗原性が高く、アナフィラキシーショックを引き起こす恐れもありますし、今回の研究で使用された卵の量は50mgですし、しかも乾燥粉末ですので、個人で調節することは不可能です。必ずアレルギー専門医の指示を仰ぎましょう。
ただ、この研究によって食物アレルギーを安全に確実に予防する手法が確立される希望が見えてきたので、将来的に食物アレルギーで命を落とすこどもを無くせるかも知れません。
国立成育医療研究センターアレルギー科・浜松医科大学小児科・徳島大学病院小児科では外来を受け付けています
今回の研究は、
国立成育医療研究センターアレルギー科の大矢幸弘医長、夏目統医員(現・浜松医科大学小児科)、同研究所、徳島大学らのグループ
によるものとされています。
上の医療機関は、それぞれ外来を受け付けています。今回の研究成果は国内の医療機関へも広がっていくはずですが、最も早いのは今回の研究に携わった機関だと思われますので、お近くの方は直接相談(診察)されるのも手かと思います。
国立成育医療研究センターアレルギー科
- 〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1
- 電話:03-3416-0181
浜松医科大学小児科
- 〒431-3192 静岡県浜松市東区半田山一丁目20番1号
- TEL:053-435-2111(代表)
徳島大学病院小児科
- 〒770-8503 徳島県徳島市蔵本町2丁目50-1
- TEL: 088-631-3111
実は以前からあった離乳早期に積極摂取する方法
うちの子は乳児湿疹が酷く、当時皮膚科に通っていましたが、そこで「アトピー性皮膚炎」の診断を受けていました。そこの医師は「しかたないね」的な態度でしたが、たまたま電車で通い易い場所にあった皮膚科へ行くと、「多分アトピー性皮膚炎だとは思うけれど、症状を抑えるためにとにかく保湿とバリアを心がけて」と言われて、処方してもらった少量の薬が入ったワセリンでひたすら保湿とバリアをしていたので、乳幼児期のうちの子はいつもテカテカ・ヌラヌラしてました。でも、そのおかげで現在はアトピー性皮膚炎は跡形もなく、すべすべとは言いませんが、普通の肌をしています。
その先生は、アレルギー食品の「除去派」ではなく、「離乳早期から様子をみながら少しずつ与える派」でしたので、うちの子も少しずつ与えて様子を見ていました。激しく反応したものは勿論除去はしていましたが、そのおかげで一部食物アレルギーは残りましたが、学校給食は問題なく食べられるレベル
- 牛乳:OK
- 卵:OK
- 小麦:OK
- ピーナッツ:OK
になったので、本当に助かっています。
「離乳早期にアレルギーをおこしやすい食品を食べさせると食物アレルギーを予防できるかもしれない」という仮説は以前から存在していて、一部の小児科・アレルギー科の医師によって臨床に導入もされていたと思いますが、今回の研究結果でそれの裏付けがされ、より安心して臨床に応用がされるようになることは素晴らしいことだと思います。と同時に、研究にどうしてこんなに長くかかったのかという疑問もあります。
国立研究開発法人国立成育医療研究センターのプレスリリース記事の最後に下の「ご寄付のお願い」がありました。
医療の分野にも市場原理が取り入れられることで競争が生まれ、技術革新や新薬開発が進む部分もありますが、金にならない研究がなかなか進まないという負の部分も出来てしまいます。
こどもの食物アレルギー問題は、親にとって何とかしてやりたいと強く願うことですが、金になる要素が少ないために、研究が行いにくかった部分であったのかも知れません。安心して子育てができる国である(になる)ために、このような研究が寄付に頼らずに行われるようになって欲しいと心から願っています。
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