透湿防水性素材を活かすには化繊のインナーが不可欠です
2019/06/13
透湿防水素材は化繊のインナーと合わせて初めて性能を発揮します
ゴアテックスやeVent FABRIC、そしてユニクロのブロックテックなどの透湿防水性素材は、ウェア内の蒸れを提言してくれる夢のような素材です。最初からゴアテックスを着られるラッキーな人は「ゴアテックスも蒸れる」と不満に感じることもあると思いますが、透湿ではない素材のレインウェアを着たことがある人には違いが分かるはずです。透湿ではない素材のレインウェアは、夏も冬も地獄です。
透湿防水性の素材というとこういう実験が頭に浮かびます。下から空気を送って、泡はブクブクでますが、水は漏れない、と。一見分かり易い実験のようですが、実はこれが誤解を生んでしまっている部分があります。
透湿素材は風がスースー通り抜ける訳ではありません
暑い時には風がスースー通り抜け、雨を防ぎ、冬には風も防いで暖かい。
そんな素材があったらいいのですが、不可能です(現時点)。
ユニクロのブロックテックもゴアテックスもeVent FABRICでさえも、それなりに蒸れます。夏にレインウェアを着れば死ぬほど暑いですが、非透湿のカッパよりは快適なのは間違いありません。
風がスースー通り抜ける訳ではありませんので、ウェアの中でかいた汗が外側に出ていくには満たすべき条件があります。
汗が水蒸気にならなければ透湿素材を抜けられません
これは防水性能があるせいですが、水滴が透湿素材を抜けることはできません。雨がウェアの中に入れない代わりに、中からも水滴状になった汗は外に出られません。
透湿素材を汗が抜けて外に出るには、水蒸気になっている必要があります。
もし、高級でハイテクな最新の透湿素材を使ったウェアを着ていても、中が裸だと機能を発揮することができません。汗は汗腺からでると皮膚上で膜を作ってしまい、なかなか湿度の高いウェアの内側で気化することができなくなります。ウェア内は地獄のように蒸れ蒸れなはずです。
もし、コットンのTシャツにコットンのスウェットシャツを着ている場合も地獄です。吸湿性の高いコットンが繊維内に汗の水分を閉じ込め、なかなか放出してくれません。汗で重くなったコットンが肌にまとわりつく感じ、考えただけで暑苦しいです。夏は暑苦しいのですが、冬山登山の活動で汗をかき、その状態で休憩をすれば、急速に体温を奪われ、気温によっては命を落とす危険もあります。
そこで化繊の登場です。ユニクロのエアリズムや各登山用品メーカーから出ている速乾素材など、吸湿速乾素材をインナーに着ていれば、夏は暑さを感じにくく、冬は汗で発熱をして温かくしてくれます。その上、繊維の表面に到達した汗の水分は蒸発し易いために、素肌やコットンの場合に比べると外に逃げてくれる水蒸気量が圧倒的に増えて、蒸れにくくなるという原理です。
昔は、「登山で綿の下着は死ぬ、ウールを着けろ」と言われましたが、それも同じ原理です。ウールのインナーでも同じ効果がありますが、コスパから現在は圧倒的に化繊が多くなっています。
※ユニクロのヒートテックですが、吸湿速乾で温かいというイメージがありますが、色々な化繊の混紡になっています。(例:35% ポリエステル、32% レーヨン、26% アクリル、7% ポリウレタン)その中のレーヨンが若干乾きにくい素材になっていますので、エアリズムには速乾性能で劣ります。エアリズムは「例:88% ポリエステル、12% ポリウレタン」となっていて、速乾に重きを置いていることが分かります。冬場のスポーツや登山などには、エアリズムの長そでが便利です。その辺りはユニクロもわきまえていて、「寒い時期にも着用されるお客様が増えています!」とアピールを忘れていません。
透湿素材ではないアウターを着る時の注意点
透湿素材のアウターは結構な金額がします。比較的手頃な現行のユニクロ MEN ブロックテックパーカでも7990円(税抜き)します。
そんな時は透湿ではない素材を着ることになりますが、インナーを化繊にしておけば、汗はインナーの表面まで引き上げられてきます。そこから気化して水蒸気になる訳ですが、アウターの表面から逃げることができませんので、袖、首、裾を閉めてしまうと内側にこもった汗の水蒸気がウェアの表面で冷やされて結露する可能性があります。
そんな場合は、活動する際には首、袖、裾を少し緩めて、活動に合わせて換気がされるようにします。脇の下や背中にベンチレーション用のファスナーがある場合はそれを活用しましょう。うまく活用すれば、厳寒期の雪山登山とかでなければ結構快適に活動することが可能です。勿論、休憩する時には蒸れが落ち着いた頃を見計らって首、袖、裾などを閉じてください。
また、ダウンウェアも結構な優れものです。ダウンは水蒸気を吸い込んで、外側に排出してもくれます。ユニクロから出ているダウンは表面生地の撥水性を上げていますので、耐水圧はゴアテックスやブロックテックには負けますが、透湿性能はなかなかのものだと思いますので、軽いトレッキングには使い勝手がいいでしょう。
手頃な値段の割にフィルパワーが640もありますので、是非活用したいアイテムです。
透湿防水素材も非透湿素材もダウンも強みも弱みもあります。それぞれを上手く活かして、安心で快適に冬を過ごしたいですね。
化繊の中ではレーヨンにご注意ください
化繊のインナーウェアをお勧めしましたが、例外もあります。
化繊では、再生繊維と言われるレーヨンは避けた方が安全です。レーヨンは木材を薬品で溶かして繊維にしてあるのでコットンとは親戚筋に当たります。ですから、吸湿性が高いのですが、若干乾きにくさがあります。吸水が飽和するまで行われるとベタベタ感が強くなります。
- ヒートテック:35% ポリエステル、33% レーヨン、27% アクリル、5% ポリウレタン
- ヒートテック極暖:35% ポリエステル、32% レーヨン、26% アクリル、7% ポリウレタン
ヒートテックもヒートテック極暖も共に3割以上レーヨンを含んでいますので、わずかな汗も吸い取ってくれますが、飽和するまで吸水した後はベタベタしたり、休憩時に体を冷やしてしまう恐れがあります。
レーヨンを含むヒートテックは、激しい運動や過酷なアウトドア活動向けではなく、家事やオフィスワーク、汗を余りかかない屋外作業などに向いています。屋外の交通整理などは寒風にさらされますが、動きで体が温まるほど運動量がありません。そんな場合にはヒートテックが最適です。
額から汗が流れるほどの運動量がある場合は、レーヨン(キュプラ含みます)が入っていない化繊のウエアを選んでください。
また、化繊だけではなく、ウールは非常に優れた防寒材です。少し値は張りますが、ウールの下着も汗をかく活動には向いています。でも、やっぱり価格も気になりますし、チクチクするので下着には使いたくない人もいると思いますので、レーヨン(キュプラ含みます)を含まない化繊のインナーウェアを選ぶと安心です。
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