梅毒が女性に急増中　流行にご注意ください

ショッキングなニュースです。大昔、梅毒は保健体育で「梅毒スピロヘータ（現在は梅毒トレポネ−マ）」とセットで暗記させられた性病の一つですが、自分の周囲では縁ががなく（※）、都市伝説かも知れないとも思えてしまう程でした。それが現在流行中で、しかも若い人（特に女性が急増）に多いと聞いてショックを受けています。

梅毒は、元々「楊梅瘡（ようばいそう）」と呼ばれ、やがて「楊」が取れて「梅瘡」となりました。これは「楊梅のようなできもの」という意味ですが、皮膚にできる腫瘍が「楊梅」つまりスモモに似ているために付いた名前です。これがやがて「梅毒」に変わり、現在に至ります。

この状態の腫瘍が皮膚に出来るのはかなり進行してからですので、このような状態になっていないからと過信しないでください。少しでも疑いがある場合は、診察・治療を受けてください。

梅毒が20代女性を中心に流行中

上で（※）と書いたのは、どうも曽祖父かその親辺りに梅毒で亡くなった方がいたと聞いたことがあることを思い出したからなんです。ただ、祖母はそう言っていたと思いますが、祖母の死後に母親が全否定していたので、今となっては真偽のほどは不明です。いずれにしても、その位に僕には縁がない病気ではあります。

梅毒と聞くとドラマ「JIN-仁」を思い出された方も少なくないかも知れません。末期の梅毒に冒された野風の先輩花魁「夕霧」を救うためにペニシリンを作るというシーンがありましたが、現実の世界でもペニシリンができるまではかなり危険な病気でした。

現代では、ペニシリン系の抗生物質の投与することで完治できる病気ということもあり、危機感が緩んだせいなのか、再び流行するに至ってしまいました。

出典：啓蒙ポスター「女子の梅毒増加中」　厚生労働省

症状が出るのは皮膚だけではありません

梅毒はスピロヘータと呼ばれるらせん状のグラム陰性の真正細菌の一種である梅毒トレポネーマに感染することで発症します。

こんな感じの気持ち悪い梅毒トレポネ−マが原因です。こんな見た目なので、僕は寄生虫の一種だと思っていましたが、真正細菌の一種です。

梅毒の進行は大きく4期に分けることができます。（潜伏期を入れると5期）ストレートに悪化（進行）して行くのではなく、症状が消えたり、人によっては何十年ともいう長い潜伏期間があることがこの病気を更に厄介なものにしています。

第1期：感染後3週間～3ヶ月

梅毒トレポネ−マが侵入し、感染を起こした場所に固いシコリが出来ます。暫くするとこのシコリは消えますが、治った訳ではありません。

第2期：感染後3ヶ月～3年

全身のリンパ節が腫れ、発熱、倦怠感、関節痛など、風邪にも似た症状が出ます。赤い発疹が出ても、1ヶ月ほどすると自然に消失してしまいます。これをもって「治った」と勘違いする場合もあるかも知れませんが、ペニシリン系の抗生物質などで治療をしない限り、梅毒トレポネ−マが体内から消えることはありません。

潜伏期：第2期の症状が消失～数年（数十年潜伏する場合も）

潜伏期が始まってからの2～3年間は、第2期の症状が再発する場合があり、これを前記潜伏期と呼びます。その後は全く症状が見られない後期潜伏期が数年から、長い場合は数十年続き、この間は感染力も失います。

第3期：感染から3年～10年（または更に長い期間後の場合も）

皮膚、筋肉、骨などにゴム腫と呼ばれる特徴的な腫瘍ができます。

第4期：感染から10年以上経過した末期状態

ドラマ「JIN-仁」の花魁「夕霧」が恐らくこの状態。心臓を含む多くの臓器に腫瘍が発生し、脳、脊髄、神経も冒されて、麻痺が生じます。脳に達した梅毒トレポネ−マによって脳梅毒や脊髄梅毒を起こし、最終的に死に至ります。

医療が発達した現代では第3期や第4期に至るケースは少ないと言われますが、総数がここ10年で大きく増加してしまっています。

厚生労働省の統計データ「性感染症報告数」

2013年度のデータでは、

• 症状は無症候：473例（38.6％）
• 早期顕症Ⅰ期：220例（17.9％）
• 早期顕症Ⅱ期：469例（38.3％）
• 晩期顕症：60例（4.9％）
• 先天梅毒が４例（0.3％）⇒梅毒に感染した母親の胎内で母子感染を起こすケース

となっていて、第2期に進行し、明らかな症状が出てから病院へ行くという人も少なくないようです。

それは、初期の梅毒は第1期の「感染部位の固いシコリ」を除けば、明らかに「梅毒」と分かる症状が余り多くはなく、

• 発熱
• 倦怠感
• 関節痛

など、「風邪かな」と思える症状が見られるため、内科を受診したり、市販薬を飲んでも一向に良くならないと思っているうちに進行させてしまうというケースもありそうです。

また、ある程度進行した段階であっても、

• 頭痛
• 脳腫瘍認知症
• 飛蚊症・霧視
• 難聴
• 大動脈瘤破裂
• 左側腹部痛
• 胃潰瘍
• 急性肝炎
• ネフローゼ
• 悪性リンパ腫

など、他の病気が疑われてしまうケースが多くあると言われます。そのため、医学教育の基礎を築いた人物として知られるウイリアム・オスラーによって

偽装の達人 （the great imitator）

と呼ばれました。

素人が判断できるものではありませんので、もし

• パートナーが性感染症にかかった
• 過去に性感染症の治療を受けたことがある
• 原因不明の症状がある

場合は、病院で検査を受けることをお勧めします。

検査を受ける場合は、

• 男性：泌尿器科・性病科、皮膚科（皮膚に発疹がある場合は皮膚科）
• 女性：産婦人科、性病科、皮膚科（皮膚に発疹がある場合は皮膚科）

を受診することになります。病院を探される場合は、以下のサイトで検索できます。

医療機関検索（性感染症を診てもらえる医療機関リスト）　性の健康医学財団

センシティブな病気なので、受診には抵抗があると思います。（僕も泌尿器科にはまだ行く勇気がありません。）そんな場合は、保健所でも検査を受けることが可能です。病院での検査に抵抗がある方でも、保健所での検査は匿名で、しかも無料ですので、「保険所でなら何とか」と思われる場合は、お住いの地域の保健所にお尋ねください。

例　平日の午前から午後にHIV検査＋性感染症の検査（東京都福祉保健局）

勇気を出して病院（保険所）で検査を受けましょう

梅毒だけではなく、全ての性感染症に言えることですが、病院を受診するのはもちろん、他人に相談することにも抵抗がある厄介な病気です。（今、記事を書きながら、学生時代の彼女がトリコモナス症の疑いがあると検査を受けてきたと言われショックを受けたことを思い出しました。記憶の彼方に消えかけていましたが、あの時は相当怯えました。結局はシロで事なきを得ましたが、病院へ行くということがどれほど勇気が要るかということは身をもって経験しました。）

ですが、恥ずかしいからと放置してしまうと、パートナーは勿論、潜伏した梅毒トレポネーマが将来生まれてくる赤ちゃんにまで危害を加える恐れが出てしまいます。それは「先天性梅毒」と呼ばれていますが、2009～2013年の間に19件が報告されています。先天性梅毒による胎児病がある場合、

• ハッチンソン歯
• 実質性角膜炎
• 内耳性難聴または聾

など、こどもが重い病気に苦しむことになってしまいます。

もし気になることがある場合は、自分のためだけではなく、パートナーのため、そして将来生まれ来る我が子のためにも勇気を出して、検査を受けてください。

ただ、どうしても病院や保健所の検査には抵抗があるという方には、検体を自分で取って送付するタイプの検査も出ています。

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検査キットは各種出ています。

それぞれ精度が高い検査を謳っており、どれも検査結果は信頼がおけると思いますが、検体を取るのが医師ではないため、

誤陰性が生じるケースが病院での検査よりも高くなってしまうリスク

があることは覚悟が必要です。

病院や保険所では、検体の検査結果だけではなく、全身症状などを見て、再検査をすることも可能ですので、安全を考えると、やはり病院や保険所で検査を受けることをお勧めします。