三陽商会が過去最大113億円の赤字決算
2019/06/12
元英国バーバリーの代理店だった三陽商会が依然として苦しんでいます。
14日に発表した2016年12月期の連結純損失が113億6600万円となり、前期の25億9500万円の黒字から赤字に転落しています。赤字決算は5年振り。
昨年10月に発表した中間決算(2016年1~9月期)では、売上高は478億円で前期比35.0%マイナスでしたが、期末には売上高676億円で前期比30.6%マイナスになっていますので、最終四半期で売上を戻したようです。
- 売上高 676億円(前年同期比30.6%減)
- 営業損益 △84.3億円
- 純損益 △113.66億円
同社の稼ぎ頭だったバーバリーを失った影響からは全く抜け出せてはいませんが、少しだけ明るい兆しです。
- 希望退職による人件費の削減
- 広告宣伝費の削減
- 保有株式や資産の売却
- 売り場の閉鎖による不動産賃料の圧縮
などの経費削減の効果が短期的に出ているようです。
昨年10月から延期の中期経営計画が発表されました
本来は昨年10月に発表する予定だった中期経営計画ですが、社長が
「若手も含めて全社的に考えたい。」
と2月まで先送りにしていましたが、いよいよ発表されました。
- 目標「2018年度に黒字化、2019年度に営業益20億円まで回復」
- 低調な百貨店だけに頼らず、商業施設や専門店などに販路を拡大する
- グループ内で堅調なEC事業に力を入れ、2016年度の売上42億円から2018年80億円まで年率24%の成長させる
- 既存商品の8割程度の価格の新オリジナルブランドを立ち上げる
とのことですが、デジャ・ブ感が。。。
それもそのはず、昨年12月にプレスリリースした
と変わり映えしません。
2016年1月1日付で、杉浦昌彦氏が社長から取締役に退き、それまで常務であった岩田功氏が社長に昇格する人事がありました。「構造改革に一定のめどが立ったため退く」とのことでしたが、中期経営計画が発表される前の退任は、実質は赤字転落や大量の希望退職に対する引責辞任だったものと思われます。
岩田新社長になってから行われた中期経営計画の発表の内容が、既に発表されている「構造変革の進捗状況」と大きな違いがないことに不安を覚えます。
純資産495億円と現時点の財務基盤は強み
過去に築いた純資産495億円という財務基盤があるため、当面持ちこたえることが可能ですが、いかに三陽商会とは言え、無策のまま何期もやり過ごすことはできません。
構造改革の一環として、東京都港区乃木坂に所有する青山ビル(簿価31億円、従業員60名)の売却を交渉していましたが、昨年12月上旬に購入を希望していた個人の適性に問題があることが判明して交渉を打ち切っています。
結局、資産売却ができなかったどころか、今年1月6日に特別調査委員会を設置し、その「個人」と杉浦昌彦前社長との関係を調査する事態に至っています。その結果は3月中旬頃の公表が予定されています。
過去の体質から完全に脱却するには未だ時間がかかりそうです。
大株主のOASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD.って何?
株式の6.75%(850万株)を保有しているのは、OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD.という法人。
会社とファンドの説明には、
とあります。要は投資ファンドが所有しているということのようです。
常任代理人は、シティバンク銀行株式会社。
住所は、UGLAND HOUSE, GRAND CAYMAN KY-1- 1104, CAYMAN ISLANDS
タックスヘイブンで知られるケイマン諸島です。
建物は右側です。そして、この反対側の景色はこんな感じ。
さすがケイマン諸島。
平成27年12月31日時点の【大株主の状況】に初めてOASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD.が登場しますが、平成26年12月31日時点で【大株主の状況】に記載があった
- 株式会社サンウェルネス 2.5%
- 株式会社良品計画 1.98%
- 株式会社丸井グループ 1.72%
の名前が消えて、日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)が2.17%から1.81%になって0.36%減少しています。
そして、
- OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD. 6.75%
- 八木通商株式会社 2.02%
- 三井物産株式会社 1.75%
が新たに登場しています。
八木通商はマッキントッシュの親会社であり、輸入元でもあるので、代理店の三陽商会の株式を持つのも分かります。三井物産は既に大株主であった三菱商事と同じく輸入関係で取引がある(三井物産とはポール・スチュアートについて契約)ための株式保有だと分かります。
ただ、株式会社三越伊勢丹が依然として3.30%の大株主ですが、株式会社良品計画と株式会社丸井グループの保有株式に変化があったことから、取引関係に変化があったようです。
良品計画と丸井グループとの関係の変化が業績に大きな影響を及ぼすとは考えにくいですが、良品計画が引いたように見える変化は少し気がかりです。
同じく平成26年末には2.5%を保有して大株主であった株式会社サンウェルネスの名前が消えています。株式会社サンウェルネスの住所「東京都港区南青山1-24-3」は三陽商会が所有する青山ビル(簿価31億円、従業員60名)の所在地であることから、持ち株会社だったと思われますが、2016年4月15日に清算されています。こちらは業績への影響はありません。
ケイマンのファンドに株式を所有させるとか超大企業のようなことをやっていますが、もっと地道に立て直しに力を入れて欲しいと思います。
昨年12月に発表された「構造改革の進捗状況」を見ても、この会社がどこを目指しているのか分かりません。
http://www.sanyo-shokai.co.jp/company/ir/pdf/28_74_3gaikyo_s2.pdf
会社に残った優秀な人材を路頭に迷わせることがないように、また世界最高水準の技術力を誇るコート専用の自社縫製工場「サンヨーソーイング青森」を最大限に活かし青森県での雇用も維持するためにも、経営陣には頑張って頂きたいと思います。
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