ヤマビルの安全な取り除き方
2019/06/12
雨の中を登山した時にヤマビルに血を吸われたことが何度かあります。皮膚に付いて血を吸われていても全く感触がなく、靴を脱ごうとした時に気付いてギョッとしました。
最初は落ち葉でも貼り付いているのかと思いましたが、よく見ると2センチ強のヤマビル。
その余りの気持ち悪さに思わず引っ張ってしまいましたが、ビヨーンと伸びるばかりで取れません。ツメを立ててしっかり挟んで引きちぎるようにして取ったのはいいんですが、今度は血が止まらない。傷口は小さいので血は直ぐに止まりそうなものですが、全く止まる気配もない。量は少ないですが、ダラダラと2時間位は出ていました。
こうやって吸い付いたヤマビルを取り除く人は多いと思いますが、実は間違っているんです。
春になって、トレッキングで山に入った時に腹ペコのヤマビルに集団襲撃を受けないためにも、吸い付かれた時の正しい外し方をご紹介します。
感染リスクがありますので、絶対に引っ張らないでください
ヤマビルを簡単に、そして安全に皮膚から取り除く方法は、
爪を皮膚と吸盤の間に滑り込ませて吸盤を皮膚から剥がす
これがオススメです。
- 親指と中指を吸盤のそばに押し当てる
- 吸盤と皮膚の間に滑り込ませる
- 口の吸盤を引き離したら、お尻の吸盤も同じようにして引き離す
- ヤマビルを取り除く(→殺処分)
指の他にスプーンなど、鋭くなくて平たい物を使う方法もありますが、山では持ち物が限られていますので、爪を使うのが便利です。
ヤマビルの吸血行動は、以下のようになっています。
- 獲物の二酸化炭素・振動・熱を感知し、獲物に取り付く
- 体の前後の吸盤で尺取り虫のように移動(分速約1m)し、皮膚の柔らかい場所に移動
- 体の先端部の吸盤の口の中の顎で皮膚を破り、唾液腺からヒルジン(血液凝固阻止成分)を分泌
- 2~3ml(成体の場合)の血液を約1時間かけて吸血(途中で水分を排出して、成分を凝縮)
- 吸血が終わると獲物から離れる
ヤマビルが皮膚に吸い付いた様子は本当に気持ち悪いですが、ヤマビルが吸血する量は2~3ml、約1時間も吸血すると獲物からは離れます。
自然に離れるのを待つのも一つの方法
下山してから、宿に着いてからヤマビルに気づいた場合は、そのまま放置して、自然に離れるのを待つのも手です。でも、吸血を始めたばかりであれば1時間は吸い付いたままですし、万が一吸血を終えて落ちてしまうと、産卵をして、更に増えてしまう恐れもありますので、やはり原則は見付けた時に取り除くのがオススメです。
ヤマビルを取り除く方法としては、
- 引っ張る
- アルコールを近づける
- 火を近づける(※火傷に注意)
- 塩・塩分濃度の高い液体をかける
- 酢など酸性の液体(レモンジュース・コーラなど炭酸飲料など)をかける
- ハンドソープを塗る
- 虫除けを塗る
などの方法があります。どれもすぐにヤマビルが皮膚から離れる可能性がありますが、実は副作用も考えられます。
英語版のWikipediaに以下のような記載があります。
Prevention, removal and treatment
A land leech can be removed by hand, since they do not burrow into the skin or leave the head in the wound. A sore develops and lasts for about a week. Grande Ronde River, Oregon (U.S.)
One recommended method of removal is using a fingernail or other flat, blunt object to break the seal of the oral sucker at the anterior end of the leech, repeating with the posterior end, then flicking the leech away. As the fingernail is pushed along the person’s skin against the leech, the suction of the sucker’s seal is broken, at which point the leech will detach its jaws.Common, but medically inadvisable, techniques to remove a leech are to apply a flame, a lit cigarette, salt, soap, or a chemical such as alcohol, vinegar, lemon juice, insect repellent, heat rub, or certain carbonated drinks. These will cause the leech to quickly detach; however, it will also regurgitate its stomach contents into the wound. The vomit may carry disease, and thus increase the risk of infection.
“これらの方法は、ヒルを速やかに皮膚から離すことが可能です;しかしながら、これらの方法はヒルの胃の内容物を傷口に逆流もさせてしまいます。ヒルの吐物は病原菌を含む可能性がありますので、そのために感染症をリスクを増大させてしまいます。”
出典:Wikipedia ”Leech”
ヤマビルを無理に引っ張ったり、アルコールをかけたり、火を近づけたりすることで、ヤマビルは胃の内容物を逆流させてしまう恐れがあります。
そのヤマビルがE型肝炎ウイルスや寄生虫を保有しているシカなどを吸血して後の場合、胃の内容物にウイルスや寄生虫が含まれている可能性があり、感染リスクがあります。
取り除いた後は、ヤマビルが出したヒルジンを吸い出してください
ヤマビルが吸血をしやすくするために出すヒルジンを吸い出してしまわないと血がなかなか止まりません。しっかり止血して、傷口の処置を行わないと雑菌による感染症のリスクもあります。
そこで、ヤマビルを取り除いた後は、
- 傷口をしっかり水で洗う
- ポイズンリムーバーを使って、ヒルジンを吸い出す
- 抗ヒスタミン剤(虫刺され薬やかゆみ止め薬)を塗る
- 傷口に絆創膏を貼る
以上のように処置しましょう。
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蜂刺されれなどの時にも役に立ちますので、山に入る時には是非ポイズンリムーバーを携行してください。
ヤマビルが出すヒルジンは、流血中のトロンビン(血液の凝固に関わる酵素)のみならず、フィブリンに吸着したトロンビンも抑制する性質を利用して血栓症の治療薬として実際に欧米で使用されているほどです。(※日本では認可されていません。)
ヤマビルを無理やり剥がすことで、胃の内容物と一緒にヒルジンも傷口に流れ込んでしまいますので、ヤマビルを刺激せずに取り除くのをお勧めします。更に、傷口の治りを早くし、雑菌による感染症を防ぐためにも、傷口をしっかりと洗った上で、ポイズンリムーバーでしっかりとヒルジンを吸い出して、適切な処置を行ってください。
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