今人気のスコティッシュフォールドのことを知ってください

YモバイルなんかのCMで一躍スコティッシュフォールドが人気になりました。我が家はかなりの猫好きなので、以前からスコティッシュフォールドは好きでしたが、ちょっとマニアックな猫種だったのが広く知られて嬉しく思います。でも、同時に複雑な思いもしています。

スコティッシュフォールドは軟骨形成に異常を来たす恐れがあります

今のようにメジャーになる前は、

「耳の立っている子の行末が心配。」

という声もありましたが、実際には立ち耳の子よりも、折れ耳の子の方が心配なんです。

スコティッシュフォールドの耳を折れさせるのは、軟骨性結合組織の異常を起こす遺伝子のせいです。病名としては、遺伝性骨形成異常症。特徴ではなく、異常です。耳が垂れるのは、軟骨組織に異常が生じているからで、耳だけを折る遺伝子がある訳ではありません。耳が折れるのと同じように、その他の軟骨にも形成異常が発生してしまい、関節が変形、痛みで歩けなくなってしまう子も出てしまいます。

この耳を折る、つまり軟骨の形成に異常を来たす遺伝子は、不完全優性の遺伝子で、ホモ（両親が共に遺伝子を持っている間に生まれたこども）の場合は非常に強く影響が出てしまいます。

影響が強く出るということは、

耳が折れる

ことでもあるので、悪質、または不勉強なブリーダーがこれをやってしまう場合がありますが、生まれたこどもは成長と共に関節の変形や関節痛に苦しめられることになります。

立ち耳でもスコティッシュフォールドに違いはありません

Scottish Foldという名前の中に「Fold（折れている）」という単語が入っていますが、立ち耳の子でもスコティッシュフォールドに違いはなく、愛くるしい性格やあの「スコ座り」も同じです。

スコティッシュフォールドを迎えたい家庭が、耳の折れた子を求めれば、耳の折れた親を交配して、不幸な子を生んでしまうことになってしまいます。

現在、スコティッシュフォールドは

• アメリカンショートヘア
• ブリティッシュショートヘア

との交配が推奨されています。仮に耳が立っていても、不完全優性である以上は耳を折る遺伝子を持っている可能性があるため、耳が折れた子も耳が立った子もアメショーやブリショーとの交配をさせるのが安全です。（血統書上の問題はありません。）

ちょっとした見た目だけの為に歩行障がいが出たり、関節痛で苦しむスコティッシュフォールドを生み出さないために、家に子猫を迎えたいと思われる方は、耳の折れた子を探さないであげてください。耳の折れた子も耳の立った子も同じような人気が保たれれば、スコティッシュフォールドの不幸もやがて減っていくはずです。

障がいを持ったスコティッシュフォールドを育てるには注意が必要です

遺伝性骨形成異常症の発現の仕方は様々なようです。度合いもまちまち、出方もまちまち。

軟骨が異常に成長して、腱や神経を圧迫して痛みを生じる場合もあれば、軟骨が生成されず、関節の骨が直接当ってしまい、変形や激痛を生じる場合もあります。この場合、四肢の関節だけではなく、顎、首、脊椎など、全ての軟骨に異常が生じる可能があります。

遺伝性ですから、薬で治すことはできませんが、飼い主さんの工夫で症状を軽減することは可能です。

• 肥満にならないように注意
• 動きで関節の軟骨が減らないように、段差を無くして、移動距離を短くする
• 部屋が寒くならないように注意

痛みが酷い時は、獣医で処方される消炎剤や鎮痛剤を使ってあげる必要もありますので、信頼がおけるかかりつけの獣医師を持ち、その獣医師のアドバイスを受けることも重要です。

猫には罪はありません。かわいい子が欲しいという人間の欲望の犠牲者です。何も文句を言わず、じっと痛みに耐えている子達のためにも、今後は不幸な子を生ませないようにすることと、既にホモで生まれてきた子達が大きな苦しみを感じずに命を全うできることを心から祈っています。