風邪を治すのに抗生物質飲んでいませんか
2019/06/13
こどもが風邪をひいたので病院へ行くと、喉に炎症が見られるとのことで、抗生物質が処方されました。フロモックスを服用すると酷い薬疹が出たことがあるので、今回はマクロライド系の比較的新しい抗生物質アジスロマイシンのジスロマック錠が処方されました。
ほとんどの風邪は抗生物質が効きません
風邪、風邪と僕も余り考えずに口にしてしまっていますが、いわゆる「これが風邪」というものは存在しないみたいです。
ウイルスや細菌が感染することで起きる上気道(鼻、咽頭、喉頭)や下気道(気管、気管支、肺)の急性炎症をきたす疾患を総称して風邪症候群と呼ばれています。いわゆる風邪と言われている症状を起こすもの全てをひっくるめた総称です。
風邪症候群を起こす主なウイルスに
- ライノウイルス
- アデノウイルス
- パラインフルエンザウイルス
- コクサッキーウイルス
- RSウイルス
- コロナウイルス
- エコーウイルス
- エンテロウイルス
- インフルエンザウイルス
などがありますが、マイナーなものまで含めると400種類にもなるとも言われています。
また、ウイルスだけではなく、細菌などの病原体も風邪症候群の原因になります。
- A群β溶血性連鎖状球菌(溶連菌)
- 肺炎球菌
- インフルエンザ菌
- 百日咳菌
- 黄色ブドウ球菌
- 肺炎マイコプラズマ
- 肺炎クラミジア
風邪症候群を起こす細菌などの病原体も少なくありませんが、実際には80~90%がウイルスによるものであると言われています。
ウイルスにはそれだけをターゲットにした抗ウイルス薬が必要です
細菌などの病原体には抗生物質が効きます。
だから、ウイルスにも効いてしまいそうで、風邪に抗生物質が出ると安心してしまうのですが、ウイルスには抗生物質は効きません。しかも、抗ウイルス薬なら何でも効くという訳でもなく、インフルエンザウイルスに効くタミフル(オセルタミビル)もリレンザ(ザナミビル)も他のウイルスには効きません。
では、風邪をひいた(風邪症候群にかかった)時はその原因となっているウイルスに効く抗ウイルス薬を飲めばいいじゃんって思ってしまいますが、
- ウイルスを特定するのが大変
- ほとんどのウイルスには抗ウイルス薬がない
ために、抗ウイルス薬は処方されず、消化に良いものを食べて、安静にして、体力を回復することで免疫システムでウイルスに勝つしか道はありません。
しかも、ウイルス感染しかしていないのに抗生物質を飲むと、ウイルスは死なず、
- 別の病原菌が薬剤耐性菌を生み出す手助けをしてしまう
- 腸内細菌を殺してしまい、下痢を起こして体力を奪われる
などの健康被害を生む恐れがあります。
薬剤耐性菌は長期的な害ですが、腸内細菌が死んで下痢を起こすと、体力が落ちてしまい、風邪が治るのが更に遅れる可能性もあります。また、別のウイルスや細菌などの病原体がつけ入るスキを与えることにもなってしまいます。
ですから、最近ではむやみに抗生物質を処方しないことが推奨されています。
抗生物質を処方した医師は間違っているの?
昔はなんでもかんでも抗生物質を出す医師はいましたが、今はウイルスには抗生物質が効かないことは医学生でも知っている事実ですので、抗生物質を出すにはそれなりの理由があります。
今回こどもが処方されたジスロマック錠(アジスロマイシン)は、
- 肺炎球菌
- インフルエンザ菌
- 百日咳菌
- マイコプラズマ
- クラミジア
- マイコバクテリウム
などに効きますので、こどもの風邪がこれらの菌によるものであると見立てたか、高熱で体力を奪われた状態だったので予防的な意味合いで処方した可能性があります。(詳しい説明はありませんでした。)
とは言え、どの医師でも同じ薬を処方する訳ではなく、抗生物質をできる限り出さないようにしている医師もいますし、抗生物質を積極的に出す医師もいますので、処方に対する絶対的な正解はなく、ある程度患者側が知識を持って、医師を選ぶ必要もあるかも知れません。流れ的には、抗生物質を積極的に処方する医師は少し避けた方が安全かも知れません。
ところでPLって効くの?
一時期PLばかりが処方された時期がありましたが、個人的に最近処方してもらえなくなりました。
PLの正式名称は、 PL配合顆粒。非ピリン系の総合風邪薬です。
- サリチルアミド(Salicylamide)
- アセトアミノフェン(Acetaminophen)
- プロメタジンメチレンジサリチル酸塩(Promethazine methylenedisalicylate)
- 無水カフェイン(Anhydrous caffeine)
が含まれています。
風邪薬は、風邪を起こすばい菌をやっつけるものだとこどもの頃は思っていましたが、実は
「風邪による嫌な諸症状を緩和」
するだけで、風邪を治す訳ではありません。
風邪薬と呼ばれるものは、含まれる解熱鎮痛薬や抗ヒスタミン薬などの有効成分の作用により、熱を下げ、頭、関節、筋肉、のどの痛みをやわらげ、鼻水・鼻づまりなどのかぜの症状を改善するだけです。PLには4種類の有効成分が含まれています。
薬局で買う市販薬も機能は同じです。風邪の嫌な諸症状を緩和してくれるだけです。症状を和らげて、仕事や学校に行くのには役立ちますが、風邪が治った訳ではありません。原因が、ウイルスであるにせよ、細菌などの病原体であるにせよ、それと戦うのは私たち自身ですので、症状が軽くなったからと言って無理をせずに、栄養をとって、休養・睡眠をとるように努めましょう。
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