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カセイソーダを積んだタンカーが沈没の恐れ 山口県

      2019/06/12

海難事故のニュースです。

カセイソーダ積載のケミカルタンカーが沈没の恐れ 山口県周南市

海上保安庁の「海の安全情報」で、第六管区の山口県周南市の徳山下松港の南でケミカルタンカー「洋和丸」が浸水・傾斜し、錨泊しているとの緊急情報が発信されています。

【緊急情報】浸水船存在_徳山下松港

発表日時:2016年09月30日 12:30

発表部署:第六管区海上保安本部

対象海域:瀬戸内海_徳山下松港

内 容:徳山下松港の黒髪島(山口県周南市)の北端から北方約700メートル(34-02.675N、131-44.648E)に浸水し傾斜しているケミカルタンカー(199トン)が錨泊しています。また、付近には警戒船等が作業しています。付近の船舶は注意してください。

出典:海上保安庁「海の安全情報」 緊急情報 第六管区

黒髪島の北に約700メートルとは、下のような場所になります。

周辺には巡視艇が警戒に当たるなどしていますので、付近を航行する場合は十分に注意してください。

浸水船錨泊位置図

乗組員は全員避難して無事ですが、積載している

  • カセイソーダ
  • 重油(燃料)

の流出が懸念されています。

積載されているカセイソーダは強いアルカリ性の劇物

ケミカルタンカー「洋和丸」は沈没の可能性が高いと見られていて、積載する450トン(※380トン・400トンという情報もあります)のカセイソーダ(水酸化ナトリウム)の流出が懸念されています。

カセイソーダ(水酸化ナトリウム)は、その強いアルカリ性を利用して上水道・下水道や工業廃水の中和剤とされるなど、様々な用途に使用されています。

そんなカセイソーダ(水酸化ナトリウム)は、毒物及び劇物取締法によって劇物に指定され、通常廃棄する場合は、

か性ソーダを廃棄する場合は、中和法「水を加えて希薄な水溶液とし酸(希塩酸、希硫酸など)で中和させた後、多量の水で希釈して流す」による事が定められています。

出典:安全なカ性ソーダの取扱い 日本ソーダ工業会

劇薬ですが、中和ができず、自然界に蓄積されてしまう所謂「毒」とは異なり、水で薄めて、酸で中和させれば害を出さずに済む可能性はあります。ただ、その非常に強いアルカリ性によって水生生物(海洋資源)に与える影響が心配されます。

毒性については、タカラバイオ株式会社の「製品安全データシート」を参照させて頂くと、

有害性情報 皮膚腐食性:皮膚、粘膜を腐食する。

感作性:希薄な溶液に繰り返し接触すると皮膚表面の種々の組織を侵し、直接刺激性の皮膚炎又は湿性湿疹を起こす。

急性毒性( 50 % 致死量等を含む ):ウサギ、経口 LD50 = 500 mg/kg

亜急性毒性:データなし 慢性毒性:データなし

がん原性:データなし 変異原性( 微生物、染色体異常 ):データなし

生殖毒性:データなし 催奇形性:データなし

環境影響情報( 2 )

分解性:データなし 蓄積性:データなし

魚毒性:水生生物に対して有毒である。

金魚試験 LC0 = 157 mg/l, LC50 = 189 mg/l, LC100 = 213 mg/l

出典:タカラバイオ株式会社「製品安全データシート」(※ファイルが削除されました)

金魚試験でLC100(100%金魚が死ぬ最低致死濃度)が213mg/リットルとなっていますので、中和させずに流出・拡散させてしまった場合は、周辺の水生生物はかなりの広範囲において壊滅的な打撃を負うはずです。

沈没のショックによって、万が一タンク内に海水が混入してしまった場合は、強烈な水和熱を発生させ、タンクを爆発させる恐れもあります。そうなると、計画的な希釈も中和も不可能になってしまいます。

何とか被害が大きくなる前にサルベージして、タンク内のカセイソーダ(水酸化ナトリウム)が安全に処理されることを祈っています。

浸水したケミカルタンカーのその後

浸水して沈没しかけていたタンカーは、多くの方の努力の結果、無事に曳航され、現在は徳山下松港内に着岸したそうです。

これで、積載していたカセイソーダ(水酸化ナトリウム)は、希釈・中和などの緊急対応することなく、無事に回収されることになりそうで、本当に良かったです。

【緊急情報】浸水船曳航完了_徳山下松港

発表日時:2016年10月01日 08:00

発表部署:第六管区海上保安本部

対象海域:瀬戸内海_徳山下松港

内 容:徳山下松港の黒髪島(山口県周南市)の北端から北方約700メートル(34-02.675N、131-44.648E)で浸水し錨泊していたケミカルタンカー(199トン)は曳航され、徳山下松港内に着岸しました。

出典:海上保安庁「海の安全情報」 緊急情報 第六管区

 - 健康, 化学物質, 安全, 生活

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