新型カンジダが世界的な脅威に Candida auris
2019/06/12
Candida auris(カンジダ・オーリス)。耳慣れない名称ですが、これから頻繁に耳にする恐れがある新型のカンジダ症を引き起こす真菌の一種です。この真菌は一部が多剤耐性を持っているため、今後世界的な脅威になる恐れがあるとして、CDC(米疾病対策センター)が2016年6月に米国医療施設向けに警告文書が配信していましたが、米国で初めての患者が確認されたと11月4日にCDCが明らかにしました。
CDCによるCandida auris(カンジダ・オーリス)に関するページ
CDCによると、米国で発症した患者の数は13名。うち4名は既に亡くなっているそうですが、Candida auris(カンジダ・オーリス)が原因で亡くなったのかなど、正確な死因は不明とのことです。
このCandida auris(カンジダ・オーリス)は、
- 医療機関内でアウトブレイクを起こす可能性が高い
- 医療関連感染を起こした場合は致命率が高い
という特徴から医療機関において十分な警戒が必要です。
今回アメリカで初の感染者が報告されましたが、実は2009年にこの真菌を発見・命名したのは日本の帝京大学グループでした。都内の病院に入院していた患者の外耳道から分離されました。その後は、韓国、インド、南アフリカ、クウェート、コロンビア、イスラエル、ケニア、パキスタン、ベネズエラ、イギリスでも感染が報告されていますので、「日本に入ってきたらどうしよう」と今回の報道で必要以上に心配する必要はありません。既に入っていますので。
Candida auris(カンジダ・オーリス)を警戒するべき理由
Candida auris(カンジダ・オーリス)は
- 薬剤耐性があり、株によっては3種の主要抗真菌薬全てが効きにくい多剤耐性株もある
- 市販の検査キットでは近縁種と鑑別ができず、鑑別診断が難しい
CDCは間違われやすい菌として以下のものを挙げています。
- Candida haemulonii (VITEK 2 と MALDI-TOFシステムによる識別において典型的)
- Candida spp.
- Candida famata
- Candida sake
- Saccharomyces cerevisiae
- Rhodotorula glutinis
2009年に発見され、2016年6月にCDCから米国医療施設向けに警告文書が配信され、その後アメリカでも初感染が確認されましたが、急に感染が拡大した訳ではなく、
市販の検査キットでは鑑別診断ができない病原性の強いカンジダが存在する
という認識が各国の医療機関で広がったためであって、感染自体は以前から存在していたと考えるが自然かと思います。
存在はするものの、鑑別・同定が難しい。しかも、鑑別・同定が出来たとしても、多剤耐性株であった場合は治療が難しい。これがこのCandida auris(カンジダ・オーリス)を十分に警戒するべき理由です。既に医療機関内におけるアウトブレイクは発生していますので、今後は更なる警戒が求められます。
健康な人は特別に恐れる必要はありません
Candida auris(カンジダ・オーリス)は、他のカンジダと同様に無色の不完全酵母であって、出芽することで増えて、胞子を作りません。そのため
エタノールによる消毒
が有効です。
Candida auris(カンジダ・オーリス)は、医療関連感染が多く、特に数週間以上の長期入院と関連があると言われています。手術、点滴、カテーテルなどから侵入し、免疫力が弱った時に全身に周り、重篤な症状を引き起こすものと考えられていますので、十分な免疫力がある健康な人が感染を恐れる必要は余りありません。
CDCも、既に感染が確認されている国へ旅行する際、特別に注意することはないとしています。(ただし、その国で長期入院・手術などを受ける場合は、リスクが増大するとしています。)
Would someone be likely to get a C. auris infection if they travel to any of these countries?
It is unlikely that routine travel to countries with documented C. auris infections would increase the chance of someone getting sick from C. auris. Infections have occurred primarily in patients who were already in the hospital for other reasons. People who travel to these countries to seek medical care or who are hospitalized there for a long time may have an increased risk for C. auris infection.
ただ、
カンジダは人間の皮膚の常在菌の一つで、日和見感染を起こす
と言われていますので、もしかすると医療機関内で医療関連感染を起こすだけではなく、既に保菌している人がいる可能性があります。
そのような人が他の原因で免疫力が低下した際に発症する可能性や抵抗力が落ちた入院患者と接触(見舞い・付き添い・介護)した際に感染を起こしている可能性も考えられます。
ですから、現在健康な人もこのCandida auris(カンジダ・オーリス)の存在には注意を払い、免疫力が落ちた人と接触する際には十分な注意を払ってください。
治療方法
Candida auris(カンジダ・オーリス)に感染した場合も、
エキノカンジン系抗真菌薬
で治療が可能です。ただ、一部の株が多剤耐性を持ってしまっているため、それに感染した場合は複数のクラスの抗真菌薬を高用量で使用する必要があり、治療は真菌感染症患者の治療に精通した医師の判断が必要になってきます。
多剤耐性株が存在し、医療関連感染をした場合の致命率が高い(60%)と言われていますが、
- サンプルとなる患者の数が少ない
- 感染で亡くなった患者は、死亡のリスクを増大させる、他の深刻な疾病などの原因があった
ことから、CDCもCandida auris(カンジダ・オーリス)の感染によって死亡するリスクが、それ以外のカンジダによる侵襲性カンジダ感染よりも高いかどうかは不明としています。(不明とはされながらも、多剤耐性菌であれば治療が困難であるため、その他のカンジダ症よりも警戒が必要なことには違いありません。)
Candida auris(カンジダ・オーリス)が引き起こす感染症
Candida auris(カンジダ・オーリス)は、
- 血流感染
- 創傷感染
- 耳の感染症
を引き起こすことが分かっています。
気道や尿からCandida auris(カンジダ・オーリス)が分離されてもいますが、肺や膀胱内において感染症を起こすかどうかは不明です。
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