SIVA GUS（シバガス）　笑気ガスの乱用は危険です

笑気ガスと言えば、歯医者を思い出します。親知らずを抜く時（4本で2本は埋没歯）、余りに怖いので笑気ガスを使用できる歯医者を必死に探しました。抜歯前に顔色が悪過ぎて延期になったことはありましたが、腕のいい先生のお陰で笑気ガスは使わずに済みました。ちょっと体験してみたいところもあったので、せっかくのチャンスを逃したのは残念でした。幸か不幸か、最近歯が痛むので、もしかすると近いうちに笑気ガスを使う機会があるかも知れません。

SIVA GUSの正体は笑気ガス（N_²O）

笑気ガスは1772年に発見され、吸い込むと酔ったような感じになるため、当時からパーティーを盛り上げるために使用されていました。昔からひとが考えることは変わっていませんね。

その後、麻酔効果があることが分かり、医療用に使用されるようになっていきました。現在は歯科治療時の鎮静用の使用が良く知られています。

危険ドラッグを規制する医薬品医療機器法の抜け穴

2014年12月17日、危険ドラッグに含まれていた主な化学物質は医薬品医療機器法上の指定薬物に指定され、規制が強化されました。しかし、笑気ガスは医療用に使用される物質ですので指定はされていません。その法律の穴をかいくぐった形です。

笑気ガスだけではなく、リタリン（メチルフェニデート）など悪用される恐れがある薬品は、一般には手に入り難いため、危険ドラッグを規制する際の対象には入っていませんでした。実際にリタリンなどは、医師・薬剤師や患者が横流しをしない限りは入手が困難です。

しかし、笑気ガスはドラッグレーサーなどが使用するNOS（ナイトラス・オキサイド・システム）用に市場に出回っていますので、それを自転車のタイヤに空気を充填する携帯用ボンベに充填して販売することが出来てしまいます。

無許可で製造された医薬品を販売したとして取り締まり予定

厚生労働省は、医薬品衣料品機器法が禁止している

無許可で製造された医薬品を無許可で販売している

として、9月30日に各都道府県に対して取り締まり強化を指示しました。

しかし、カーレース用に輸入されているNOSのN₂O（亜酸化窒素・一酸化二窒素）へどのように規制を行うのでしょうか。Amazonでも並行輸入品のNOSのボンベが販売されています。

「無許可で製造された医薬品を無許可で販売している」ことでの規制では、「カーレース用に輸入され、販売される」ものは規制できません。何か別の規制方法が必要です。

危険ドラッグに比べると危険度は低めです

海外では「ヒッピークラック」として10年ほど前から問題になっています。イギリスでは英国では2006～2012年の間に15、6名の死亡が確認されていますので、全体ではかなりの数になると思います。

しかし、その死亡例の多くが笑気ガスだけを吸ったことで酸欠に陥って窒息を起こしたことが原因です。一時期問題になった声の変わるガス（ヘリウムガス）も人体には無害ですが、それだけを吸い込むと酸欠による窒息を起こします。

ただ、笑気ガスはひとの中枢神経（中でもドーパミン神経系）に作用しますので、全くの無害という訳ではありません。

笑気ガスを乱用すると、ビタミンB12の作用を阻害し、傷ついた細胞の修復が行えなくなります。オーストラリアで、笑気ガスを乱用した男性が脊髄障害を発症し、下半身に障害を残しました。傷付いた細胞の修復に障害が出るということは、失明や意識障害もあり得ますし、最悪は死亡の恐れもあります。

これだけ聞くと非常に恐ろしいのですが、この男性の乱用レベルは、

1日130本を吸い続けた

と尋常ではありません。歯科治療の鎮静用にも使用される位ですから、それほど危険な物質ではないはずです。

しかし！

NOS（ナイトラス・オキサイド・システム）には他の物質が混入している恐れがあります

国内で出回る笑気ガスはNOSの流用の可能性が高いのですが、その場合、人体に使用するためのものではないため、純度に問題がある恐れがあります。

NOSのリフィル用ボンベの内容物（Holley社の文書）は、

sulfur dioxide（二酸化硫黄）

が含まれていると書かれています。二酸化硫黄は呼吸器を刺激し、せき、気管支喘息、気管支炎などを引き起こします。これは四日市喘息の原因物質として有名です。

それでも吸いますか？

NOSは使用上の注意事項を良く読んで、正しい用途に正しく使用しましょう。