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強歩大会で女子生徒死亡 埼玉県立大宮高等学校

      2019/06/13

女子生徒が死亡した伝統の強歩大会

埼玉県さいたま市にある埼玉県立大宮高等学校は、体力向上と精神力を養うために強歩大会を開催、今年は10月16日に実施されました。午前10時30分にスタート、男子が16.5キロ、女子が13キロを、全校生徒が途中走りながら完歩を目指しました。

2年生の女子がゴール前1.6キロで倒れ、教師が119番通報しましたが、救急隊が到着した時点で心肺停止状態で、良く7日夜に搬送先の病院で亡くなりました。

強歩なのかマラソンなのか

「強歩」という言葉だけを見れば、ハイキング的なものを想像してしまいますが、実際にはどうだったのでしょうか?

女子生徒が倒れたのは、11時45分頃で、ゴールから1.6キロ手前。

1時間15分で11.4キロを移動しています。時速に換算すると9.12km/h。

ジョギングの初心者が目標にするのは、

30分で4~5キロ(8~10 km/h)

と言われていますが、1時間走り続けるのは初心者には難しいと言われています。

9.12km/hで1時間15分走り続けることは、運動部で日々ハードに鍛えられている生徒以外には低いハードルではありません。

伝統の強歩だからと強要するところは無かったのか

伝統だからと無理やり練習で一度も成功していない高層の組み体操を本番でトライして起きた事故が記憶に新しいですが、この手の「伝統」には注意が必要です。

学校は強要していないつもりであっても、

  • ○○年続いた伝統
  • 毎年欠席者ゼロ
  • ギネスに挑戦

などが、参加に不安がある、また体調不良や持病を持っている生徒を追い込みます。参加する他の生徒達が強要している場合もあります。また、親も自分のこどものせいで伝統に傷が付くことを恐れて、休ませることに躊躇してしまう。そして事故が起きます。

防ぐことができたはずの事故でした

強歩の1か月前に倒れています

亡くなった女子生徒は、9月中旬の体育授業中に倒れ、病院で検査を受けています。検査を担当した医師によれば異常はないとの事でしたが、倒れてから1か月しか経っておらず、原因が不明の状態で参加させたのは間違いです。

親も担任の教師も、本人が参加を強く望んだとしても参加を止めさせるか、サポートを付けて、万が一に備えるべきでした。(サポートが人員的に無理なら参加禁止にすべきでした)

雨天中止のはずが、小雨の中を決行

しかも、当日は小雨。しかも、終盤には雨足も強くなっていました。学校側は行事が午前中に終わるものであるとして、本来は雨天中止のはずを決行しています。これも伝統だからでしょう。

心肺蘇生(CPR)の実施の有無

教師が119番通報するまで、および救急車が到着するまでに心肺蘇生(CPR)は試みられたのでしょうか。ルートに待機して監督する教師達はAEDを持っていたのでしょうか。

埼玉県警が発表した死因は「病死」

この場合の「病死」は持病の有無は関係なく、何らかの不審な点があり「病死」ではない「異状死体」ではないという意味しかありません。(異状死体であると病院が判断した場合は、警察に連絡し、司法解剖が行われます)

亡くなった女子生徒の死因と強歩大会との因果関係はまだ不明ですが、因果関係が全くないということは恐らくないでしょう。学校の担当者は「因果関係はまだ不明だが、大会を中止していれば防げたかもしれない」とコメントしています。

考えられる死因としては、心臓に何らかの異常があって、小雨の降る気温の低い中を9.12km/hというハイペースで1時間以上走ったことによって起きた心室細動です。狭心症や心筋梗塞も考えられますが、年齢的なことと検査で分からなかったことから、心室細動が原因である可能性が高いです。

もし、心室細動が死因の場合、

  • 心臓マッサージ(および人工呼吸)による心肺蘇生法の実施
  • AEDの使用

によって救命できていた可能性が高いです。

学校側の責任
  • 強歩の一か月前に倒れていた生徒を参加させたこと
  • 雨天中止の予定を小雨の中にも関わらず決行したこと
  • 監督者のAEDの傾向など、事故対策が不十分であったこと

について責任を問われる可能性はあります。

ただ、本人が強く望んでいたり、家族が納得した場合は、学校の責任を不問にする可能性もあります。

仮に学校の責任が不問になったとしても、学校の責任は間違いなくあります。ただ、学校だけではなく、親にも責任はあります。そして、亡くなった女子生徒本人にも。

今後このような悲しい事故を起こさないためにも、

  • 伝統行事だからと言って不要なリスクを冒さない(生徒・親・学校全て)
  • 原因不明の体調不良がある場合は、原因が判明するまでは無理はしない
  • マラソン大会や強歩大会には、生徒自身が心肺蘇生に関する知識を持ち、また監督する教師は必ず携帯電話をAEDを携帯する

ようにして欲しいと思います。

生徒が失敗して「今度から気を付けます」と言えば、教師たちは「何を気を付けるべきか具体的に言え、さもなければ意味がない!」と厳しく指導する割には、埼玉県教育委員会は

「体育活動などでの事故防止に万全を期すよう求める」

と県内の全県立高に書面で通知したそうです。

これで事故は減るのか、甚だ疑問です。

参考:埼玉県立大宮高等学校のサイト

 - 健康, 学校等, 安全, 小中高, 生活, 育児

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