嗅覚に個人差はあるのかどうか
2019/06/12
東京大学の新村芳人特任准教授率いる研究チームが、2014年7月に発表した研究によれば、
アフリカゾウはイヌの2倍、ヒトの5倍もの嗅覚受容体遺伝子を持つ
そうです。
嗅覚受容体の遺伝子数は、
- アフリカゾウ:1948個
- イヌ:811個
- ヒト:396個
アフリカゾウの鼻は長いので良く鼻が利きそうなイメージがありますが、実際にも嗅覚が鋭くて、野生のアフリカゾウは
- マサイ族:槍でゾウを狩る
- カンバ族:農耕民族でゾウは狩らない
を嗅ぎ分けることもできて、ゾウを狩るマサイ族だけ避けるようです。凄い能力です!
アフリカゾウはイヌの2倍、ヒトの5倍もの嗅覚受容体遺伝子を持つ - ゲノムの比較が明らかにした哺乳類の嗅覚受容体遺伝子の多様性 -
※ゾウ以外の動物についてはリンク先にグラフがあります。
13種の哺乳類ゲノム中に存在する嗅覚受容体遺伝子の数(© 2014 新村 芳人)
哺乳類の種毎に嗅覚受容体遺伝子の数も違いますし、それとは別に嗅細胞(嗅覚受容神経)にも違いがあって、嗅細胞(嗅覚受容神経)の違いによって同じ種類の匂い・臭いに対する嗅覚の鋭さも違って来ます。
- 嗅覚受容体遺伝子の数:嗅ぎ分けられる種類に違い
- 嗅細胞(嗅覚受容神経)の数:感じ取れる匂い・匂いの強さに違い
ということになります。
種の違いによって、嗅覚受容体遺伝子の数や嗅細胞(嗅覚受容神経)の数に違いがある訳ですが、経験上、同じ種の中でも
- 嗅覚受容体遺伝子の数
- 嗅細胞(嗅覚受容神経)の数
に若干の違いがある可能性を感じる訳ですが、嗅覚についても研究は未知の部分も少なくないようで、今後の研究が待たれるところです。
人の嗅覚で病気を嗅ぎ分けられる可能性
ある種の動物には、人間の病気の匂い・臭いが判別できるらしいということは分かっていて、現在その研究が進められています。イヌには人間の癌の匂い・臭いが分かるとか、線虫には尿に含まれる成分から早期の癌を嗅ぎ分けることが可能だとも言われています。
人間の嗅覚には、遺伝的なもの、つまり先天的なものと、生まれてからの環境などでどう感じるかが決まる後天的なものがあると言われますが、病気を嗅ぎ分ける能力は先天的な能力、つまり遺伝的な能力を指します。
ある種の匂い・臭いをどのように感じるかではなくて、感じることが可能かどうかです。
人間は自分が感じられないものは存在しないと思ってしまいがちですので、癌の匂い・臭いなど
病気の匂い・臭い
が人間には感じられるはずはないと思ってしまいますが、もしかするとそれが病気(癌を含む)の匂い・臭いだとは気付かないだけで、実は普段の生活の中で日々感じているものだったりする可能性も十分あると思います。
人によって嗅ぎ分けられたり、嗅ぎ分けられなかったりする匂い・臭いで比較的広く知られているものに、
アスパラガス(※最近「アスパラガふ」に思えてなりません)を食べた後のおしっこの臭い
があります。
イスラエル(なぜイスラエル?)で行われた実験で人口の約22%しか臭いを感じることができないことが分かっています。因みに僕はこの22%に入っています!!
このおしっこを臭くする成分は、
- メタンチオール
- チオエステル(S-メチルチオプロピオン酸とS-メチルチオアクリル酸)
のいずれかだと考えられていますが、どちらであるのか未だ明確にはなっていないようです。
また、一部の人はOR6A2遺伝子に突然変異があり、パクチー・シナモン・バニラなどに含まれるアルデヒドという香り成分に対して過敏になってしまい、苦手と感じているのかも知れないということも最近分かってきたそうです。これも遺伝子による嗅覚の違いによるです。
人が持つと言われる約400(396)種類の嗅覚受容体遺伝子に対応する嗅細胞(嗅覚受容神経)の有無やその数の違いによって、特定の物質の匂い・臭いを感じられたり、感じられなかったりする違いが生まれてくるのだと思われますが、本格的な解明はこれからです。嗅覚受容体遺伝子にはゲノム全体の3%が割り当てられていると言われますので、非常に重要な役割を果たしているはずですので、解明されるのが待ち遠しいです。
少し前に、ストライプのドレスの色が人によって
- 青と黒のストライプ
- 白と金のストライプ
と違って見えることが話題になりましたが、同じことが嗅覚でも言えるはずなんです。でも、嗅覚はことばで表現がし難いため、好き嫌いの差位でしか認知されないことは残念です。研究による解明を心待ちにしています。
実は僕以外の人には分からない臭いが感じられます
ずっと以前から凄く苦手な臭いが一つあります。
人から臭うもので、男女は問いませんが、10代までの若い人からは臭いません。
なので、ずっとそれが「加齢臭」だと思って来ましたが、最近奥さんに教えてもらって加齢臭ではないことが分かりました。(これが「加齢臭」と教えてもらった臭いは、それほど嫌ではなく、祖父母を思い出す枯れた臭いでした。)
となると、その苦手な臭いが何なのか、気になります。
その臭いが強いとえずいてしまう程なんですが、妻子や友人に聞いても「全く感じない」と言われます。今まで自分以外にその「臭い」を感じると言った人はいません。(と言っても、臭いはデリケートな問題なので、それほど多くの人に尋ねられてはいません。)
どんな人に感じるかですが、今まで感じた人の中での共通点を探してみたところ、
20代後半以降の女性で、メニエール症候群と診断されているか、またはひどいめまいに苦しんでいる
という仮説に至っています。
ただ、例外も少しあって、
- 中年の男性でメニエール症候群だと診断されている人(1名)
- 中年以降の男性で毛髪量がこどもと変わらない位に多く、しかも黒々している人(の一部)
からも結構強い臭いを感じます。(※僕が強いと感じるだけで、殆どの人は感じない訳ですので、その人達をディスる意図はありません。)
誰も感じないと言うので、気のせいかと思った時期もありますが、僕が臭いを感じているのは間違いないようです。
僕の嗅覚が直接、何かの病気を識別するのに役立つのかどうかは不明ですが、イヌや線虫だけではなく、人間の嗅覚にも十分未知の世界が広がっていますので、今後の研究で、安価にそして簡単に一部の病気を調べられるようになることを願っています。
ワイン以外の「臭い」は表現する言葉が出来上がっていない(または知らない)ため、ネットで同じ感覚を持つ人を探し出すには至っていません。もし万が一、こんな嗅覚を持った人間を探している研究者の方、是非ご連絡ください。喜んでご協力させて頂きます。
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