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シカよりも人間を感電死させる殺人電気柵

      2019/06/13

静岡県西伊豆町で7人が死傷した事故で、感電した電気柵は設置した男性(79歳)の自作であったことが判明しました。

今回の電気柵は完全に違法で非常に危険

本来、電気柵は弱い電流を強い電圧でパルス状に送り、触れた動物を驚かせ、近づけないようにするものです。決して電気ショックを与えて退治するものではありません。ビリッとしますが、正しく設置、運用されていれば感電死することは絶対ありません。

しかし今回事故を起こした電気柵は、家庭用電源直付けで、パルス発生装置も漏電遮断器も危険表示もない、極めて危険なものであったことが分かっています。変圧器で400ボルトに昇圧する仕組みにされていたようですが、事故が起きた当時機能していたかどうかは不明です。また「夜間だけ電気を流し、昼間は切っていた」と供述しているそうですが、たまたま当日のみ切り忘れたというよりも、適当な運用になっていたものと思われます。

電気事業法で許可される電気さく

法律で電気さくの細かい仕様が規定されている訳ではありません。

(電気さくの施設の禁止)
第七十四条  電気さく(屋外において裸電線を固定して施設したさくであって、その裸電線に充電して使用するものをいう。)は、施設してはならない。ただし、田畑、牧場、その他これに類する場所において野獣の侵入又は家畜の脱出を防止するために施設する場合であって、絶縁性がないことを考慮し、感電又は火災のおそれがないように施設するときは、この限りでない。

感電や火災が起きないような仕様であることが求められます。

ですから、農林水産省生産局農産部農業環境対策課鳥獣災害対策室からの要請が実際の規定になります。

  1. 電気さくの電気を30ボルト以上の電源(コンセント用の交流100ボルト等)から供給するときは、電気用品安全法(昭和36年法律第234号)の適用を受ける電源装置(電気用品安全法の技術基準を満たす電気さく用電源装置)を使用すること。
  2. 上記1.の場合において、公道沿いなどの人が容易に立ち入る場所に施設する場合は、危険防止のために、15ミリアンペア以上の漏電が起こったときに0.1秒以内に電気を遮断する漏電遮断器を施設すること。
  3. 電気さくを施設する場合は、周囲の人が容易に視認できる位置や間隔、見やすい文字で危険表示を行うこと。

平成21年兵庫県あわじ市で起きた電気柵による感電事故死を受けて、それまでは任意だった漏電遮断器が標準となり、製造元は漏電遮断器とパルス発生装置(電気さく用電源装置)が標準装備された電気柵を製造し、販売してきました。

これらの行政と業界の努力によって市場で出回る電気さくは安全を配慮したものになり、電気さくの安全性を心配する必要はなくなったかに思われました。

盲点

しかし、そこには盲点がありました。

市場で販売される製品が法律と業界基準を満たしたものになっても、自作したものの中には危険なものが存在しています。

漏電遮断器無し

漏電遮断器があれば、ひとが触れて感電しても漏電遮断器が電流を遮断するため、死亡するような事故に至りにくいです。電線を握り感電すると筋肉が硬直し、電線を握ってはなせなくなり、感電事故をより深刻なものにしてしまいます。事故防止には漏電遮断器の設置が必要です。

パルス発生装置(電気さく用電源装置)無し

パルス発生装置が設置されていれば、電気が3000分の1秒流れた後、1秒以上電気が止まる状態が繰り返されるため、誤って電線を触れても一瞬刺激を受けるだけで済みますが、これが無い場合は電流が流れつづけ感電してしまいます。家庭用電源に直付けの場合は、契約アンペア数を超えるまではブレーカーが落ちませんので10~60アンペアの電流が流れます。10ミリアンペアの電流が2秒以上流れると筋収縮や呼吸困難が起き、50ミリアンペアの電流が1秒を超えて流れると心室細動を起こし死亡する恐れがあります。田畑で良くみかける電気柵はバッテリー駆動で、電圧は数千ボルトありますが、電流は1ミリアンペアしかなく、しかもパルス発生装置によって1秒毎に3000分の1秒電気が流れます。

パルス発生装置と漏電遮断装置無しに、家庭用電源に直付けすることがいかに恐ろしいかが分かります。

2008年から無資格で電気さくの設置が可能

近年増加する獣による農作物被害を受けて、2008年より無資格で電気柵の設置が可能になりましたが、翌2009年には兵庫県あわじ市で死亡事故が発生して、今回7名が死傷するという重大事故が発生しています。

これを受けて、設置は無資格のままでも、国や業界が認定した製品以外は設置できないような規制がかかるかも知れません。何らかの対策が無ければ、業界が自主規制を厳しくして、より安全な製品を出してくれても、今回のような殺人電気柵が今後も作られ、重大事故が起きる恐れがあります。今後だけではなく、現在もどこかに家庭用電源直付けで触れば即感電事故という殺人電気柵が張られている可能性も充分あります。

水に濡れている時には感電事故がより重大化します。正しく設置された電気柵ばかりではないことを忘れずに、水遊びや田んぼで虫取りなどをする時には、必ず事前に周辺に電気柵がないかどうかを確認しましょう。

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