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マツダのクリーンディーゼルはここが違う

      2019/06/13

フォルクスワーゲンによる不正でディーゼルエンジンへの不信感が高まってしまっています。同じような不正を行った自動車メーカーが他にも判明する可能性がありますが、マツダに関してはその心配はありません。

マツダのクリーンディーゼル「SKYACTIV-D」

ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと違って軽油を使います。(灯油に似ていますが、成分が若干違います)

ガソリンエンジンと違って、点火プラグを使用せずに、圧縮比だけで軽油を着火、燃焼させます。

燃料に軽油を使うことで経済的ですし、構成部品が少ないため、エンジンもガソリンエンジンと比べると安く製造ができます。

そんないいことづくめのディーゼルエンジンなのですが、致命的な問題があるんです。

それは、燃焼に伴って

  • NOx(窒素酸化物)

が空気中に撒き散らされてしまうことです。音が大きいこともデメリットですが、NOxと煤による大気汚染が深刻な問題となり、例としては東京都では東京都環境確保条例で定める粒子状物質排出基準を満たさないディーゼル車は都内の走行が禁止されるなど厳しい規制の対象となっています。

それをクリアするために、各メーカーはNOxとススを取り除く後処理の技術を開発してきました。

  • フィルターを使いススを集めて燃やす「DPF(Diesel Particulate Filter)」
  • 触媒による化学変化を利用してNOxやススを低減する「NOx吸蔵還元触媒」
  • 排気ガスに尿素水を吹きかけて化学反応によりNOxを削減する「尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)」など

これらの技術開発によって、ガソリン自動車に排ガスのクリーンさで劣らないディーゼルエンジンが実現されました。もともとディーゼルエンジンは、トルク、燃費、CO2排出量の面においてガソリン車に勝っていましたので、排ガスがクリーンになったことでディーゼルエンジンの魅力は更に増しました。これがヨーロッパでディーゼルエンジンの人気が高い理由です。

ですが、マツダの「SKYACTIV-D」はスーパークリーンディーゼルとも呼ばれ、他のディーゼルエンジンとは一線を画しています。

「SKYACTIV-D」の何がすごいのでしょうか

  • 世界一の低圧縮比(14.0)を実現によって燃費を20%向上
  • 2ステージターボチャージャーによるトルク向上、排気ガスのクリーン化、燃費改善

競合他社が燃焼後のガスの後処理の開発に力を入れる中、マツダはディーゼルエンジンそのものの開発を進め、従来は不可能と言われていた圧縮比14.0という世界一の低圧縮比を実現し、燃焼自体をクリーンなものに変えてしまいました。高価な後処理用の部品が不要になることで、価格を抑えるのと同時に車重も抑えることができます。

僕がエンジンを勉強した頃は、ディーゼルエンジンは高圧縮が当たり前と言われていましたので、「SKYACTIV-D」のことを知った時には驚きました。

まさに正統進化です。

フォルクスワーゲンはコンピューター制御で排ガスをコントロールする方法を採用していましたが、開発が上手くいかないために、今回の不正に手を染めてしまう結果となりました。

「SKYACTIV-D」の実力

NOx用の高価な後処理部品なしで、グローバルの排出ガス規制をクリアする見込みです。

  • 欧州:Euro6
  • 北米:Tier2Bin5
  • 日本:ポスト新長期規制

これは他メーカーにとっては脅威だと思います。

ただ、エンジン開発、しかも根本を見直すような開発には多額の資金が必要になりますので、

  • エンジン開発
  • NOxの後処理部品の開発

のどちらを選ぶかは企業の戦略もありますので、必ずしもマツダが圧倒的な勝者になるかどうかは分かりません。

ですが、マツダが開発した低圧縮ディーゼルエンジンの技術は他メーカーのエンジン開発にも大きな影響を与えて、将来的に更なるクリーンディーゼルの開発に繋がっていくことが期待できます。その意味で、マツダが生み出したスーパークリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」の功績は計り知れないものがあります。

ポルシェの社長がフォルクスワーゲンの社長に就任するというニュースがありましたが、新体制では小手先の改善ではなく、組織から根本的に見直し、マツダの様な正統進化ができるメーカーに変わって欲しいと思います。4年前に社内で指摘されていた今回の不正を自浄することができないのはかなり末期の状態です。是非マティアス・ミュラー氏には大ナタを振るって頂きたいものです。

 - 化学物質, 技術, 自動車

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