鯉の洗いには毒と寄生虫のリスクあり
2019/06/13
昔は鯉の洗いも好きだったんですが、最近色々気になって食べられなくなりました。でも、ご馳走になる時には断りきれずに、ついつい食べてしまいます。食べてからしばらくはちょっとお腹が痛いだけでもドキッとします。
鯉には毒があります
鯉は胆のうと筋肉に毒があり、食中毒を起こすことがあります。
鯉毒「5a-シプリノール硫酸エステル」
特に胆のうは、滋養強壮、眼精疲労回復、咳止め、難聴者の聴力向上などの効果があると信じられ、昔から食べる人がいるそうですが、5a-シプリノール硫酸エステルという毒があり、結構強い食中毒を起こします。
厚生労働省のサイトには以下のように書かれていて、読むと食べる気は一瞬で失せます。
肝臓では細胞の変性や壊死を、腎臓では腎小球管や集合管を損傷し、さらに腎小球の濾過機能の減退による乏尿を引き起こす。その後、脳細胞の損傷、脳水滞留、脳の腫れ、心筋損傷など、神経系統や心臓血管系の異常を招き死亡する。
特に毒が多いのは胆のうですが、実は筋肉、つまり身にも毒があり、中毒を起こすことがあるそうです。中毒を起こすと、、嘔吐、めまい、歩行困難、言語障害、けいれん、麻痺などを伴うそうです。そして、最悪は死です。
厚生労働省によれば、
中毒発生状況 厚生労働省の食中毒統計にはあがっていないが、わが国ではコイ胆のうによる中毒事例がかなり多い。一方、東南アジアや中国では、ソウギョの胆のうによる中毒例がある。中国の統計によれば,1970~75年の間にコイ科魚類胆のうによる食中毒が82件発生し,死者21人を出している。中毒件数でも死亡率でもフグ中毒に次ぐという。
因みに、毒(5a-シプリノール硫酸エステル)の強さですが、
- LD50(マウス腹腔内、96 hr):2.5 mg/20 g(=125.0mg/kg)
- 最小致死量(マウス腹腔内、96 hr):2.6 mg/20 g
フグ毒のテトロドトキシンLD50(マウス腹腔内)10 μg/kgは鯉毒と比べると桁違いに強い毒ですが、神経を麻痺させて、呼吸が停止させるテトロドトキシンの場合は、呼吸を維持して、排出すれば回復する性質の毒です。
一方、鯉毒(5a-シプリノール硫酸エステル)は、
- 肝臓で細胞の変性や壊死
- 腎臓で腎小球管や集合管の損傷
- 脳細胞の損傷・脳水滞留・脳の腫れ
- 心筋損傷など、神経系統や心臓血管系の異常
など、組織を破壊するタイプの毒ですので、フグ毒ほど少量では中毒を起こさないものの、十分な警戒が必要な毒だと言えます。
それでも鯉を食べますか?
鯉には寄生虫もいます
代表格としては肝吸虫(肝臓ジストマ)。
加熱だけではなく、冷凍でも死滅します(※)が、食感は落ちてしまいます。生き造りなんかでは魚も新鮮ですが、寄生虫(肝吸虫)も新鮮です。薄く造れば大丈夫とか、ショウガ、ワサビ、ニンニクなどの薬味を使うことで寄生虫(肝吸虫)は死ぬとか言われますが、実際には薬味程度の濃度では死なないそうです。個人的には、食感が落ちても冷凍殺虫して欲しいです。
※寄生虫を殺すには中まで十分に冷凍することが必要です。家庭用冷凍庫では十分に中まで凍っていない場合がありますので、最低でも2~3日以上冷凍したほうが安全です。
肝吸虫(肝臓ジストマ)の陰に隠れてはいますが、処理の仕方によってはハリガネムシの幼虫も付いている可能性があります。
ハリガネムシと言えば、カマキリのお尻からにゅーーっと出て来るアイツです。
触っても人の爪から入ることはありませんが、鯉の洗いを食べることで口から入る可能性はゼロではありません。。。
食べるべきか、食べざるべきか
鯉の毒成分5a-シプリノール硫酸エステルは水に溶けるので「洗い」という調理法ができたのかも知れません。ですが、どんなに薄く造っても冷凍処理をしていない新鮮な鯉の洗いには寄生虫のリスクが残りますので、そこのところを覚悟しなければなりません。
鯉の洗いについても、インフォームド・コンセントが実施されたら食べる人はかなり減るのではないでしょうか。
リスクを説明された後、リスクを充分に理解した上で自分の意志で食べる分にはいいのですが、自分以外の人やこどもに食べさせることは避けた方が無難かも知れませんね。
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