急に背中が痛むのは動脈硬化による心筋梗塞の放散痛かも知れません

俳優の阿藤快さんが69歳の誕生日だった11月14日に亡くなりました。69歳、まだまだこれからという時の早過ぎる死。残念です。ご冥福をお祈りします。

阿藤さんが亡くなる前、背中の痛みを訴えていたそうです。11月8日にはマッサージを受けて、「元気になったよ」と笑顔を見せていたそうですが、その数日後に亡くなってしまいました。死因は大動脈破裂胸腔内出血。背中の痛みは心臓や大動脈が悲鳴をあげていたせいかも知れません。「もし」と言っても仕方がありませんが、もしその背中の痛みが心臓に異常が起きていることの放散痛かも知れないと気付いていれば緊急手術で運命は変わっていたかも知れません。

動脈硬化による心筋梗塞など、心臓に異常がある時に背中が痛むことがあります

狭心症や心筋梗塞が起きている時、たいていは胸が痛むのですが、胸以外の背中、歯、腕、腰などが痛む場合があります。それは放散痛と呼ばれるもので、心臓病に限らず、ある疾患とは無関係の場所が痛む場合があることが知られています。

歯が痛むので歯医者に行って色々調べても何も異常がないので、歯医者の勧めで循環器内科で調べると心臓に疾患が見付かって早い治療ができたという話を聞いたことがあります。

重いものを運んだ翌日に腰が痛むなど、原因が思い当たる痛みはいいのですが、何も思い当たる原因がない痛みは、その部位だけではなく、その他の病気についても疑った方が安全です。

放散痛にはどのようなものがあるのでしょうか？

疾患と痛む部位については以下の表のようになっています。

その他にも病気ごとに放散痛が出る場所があると思います。該当しないから「大丈夫」と判断してしまわずに、原因の分からない痛みが定期的に感じられるような場合は、痛みの場所とは違う場所が炎症を起こしている可能性があると思って、病院で診察を受けた方が安全です。

放散痛には科学的な根拠があります

手相やツボのように科学的に証明がされていないものとは違って、放散痛は科学的・医学的に証明されています。

心筋梗塞を起こすと背中が痛くなるのは気のせいとかではなく、血流が滞ることで神経に作用をして、背中に痛みを感じます。背中に痛みが存在する訳ではなく、神経が「背中が痛い」と脳に感じさせる信号を送ってしまうことで、背中に痛みを感じる訳です。その他の放散痛も原理は同じです。

上の表に挙げた放散痛以外にも痛みを感じる可能性があります。筋肉痛やその部位の怪我や病気など原因が思い当たらない痛みがある場合は、筋肉痛やコリと判断せずに、一度病院で診察を受けるようにしましょう。

特に背中・上腕・首・顎・歯に強い痛みがあり、虫歯・歯周病・寝違い・筋肉痛など思い当たる原因がない場合は、単なるコリだと判断せずに、循環器内科で診察を受けましょう。もしかするとコリの可能性もありますが、命に関わる疾患の可能性がありますので、見過ごさないようにしてください。健康診断や人間ドックで動脈硬化の疑いがあると言われた人は、痛みを感じたら、直ぐに病院で診察を受けてください。それで命を救われる可能性があります。

痛みを感じる本人は「これくらいは大丈夫かな」とか「自分は大丈夫」とやり過ごしてしまう場合も少なくないと思います。阿藤さんの場合も、背中が痛いと言っていた時に周囲が気付けなかったことが悔やまれます。中年以降の人が、痛みを訴えた場合は、周囲の人が病院へ行くように促してあげてください。宜しくお願いします。