毛皮のコートがダメで、ダウンジャケットはなぜいいの?
2019/06/13
動物に対しても生きる権利が尊重されるようになり、リアルファー(毛皮)への風当たりはますます強まっています。フェイクファーの技術も上がっていますので、この先もこの流れは変わらないでしょう。襟巻と言えば、剥製みたいなキツネの襟巻が当たり前だった時代の人間からすると感慨深いです。
今年の冬もダウンジャケットが人気です
今年の冬もユニクロのダウンが人気です。手頃な価格でありながら暖かいのと、表面生地の撥水性が上がったことで、こどもや高齢者にも一層浸透しているようです。
ただ、これだけ多くの人がダウンを着ているということは、どれだけ多くのグースやダックが犠牲になっているのか、想像もつきません。リアルファー(毛皮)は動物虐待だと言われ、市場から消えつつありますが、ダウンは大丈夫なのでしょうか?
ダウンジャケットは何度かブームを繰り返してきました。僕が学生の頃もアメカジ全盛期でしたので、みんなモコモコのダウンジャケットを着て街を歩いていました。でも、直ぐに革ジャンにその座を追われ、猫も杓子もレザーコートを着るようになり、モコモコのダウンジャケットは箪笥の肥やしとなっていきました。その後もThe North Faceのダウン製品がブームになったり、Monclerのダウン製品がブームになったりしましたが、ユニクロが非常に手頃に高品質のダウンを出して以来、ブームではなく、完全に冬の定番となりました。
ユニクロのウルトラライトダウンは高品質のダウンを使用していて、ダウンの性能を示すフィルパワーは640超とされています。本格的なアウトドア用のダウンジャケットとしても使えるレベルのダウンを使用しています。そんな高品質なダウンを使うことで、
- 軽さ
- 暖かさ
を実現しながら、手頃な価格に抑えたことで、大ヒット商品となっています。フリースやヒートテック以来、冬場にヒット商品がないと言われているユニクロではありますが、こどもから高齢者までユニクロのダウンを着ているのを見ると、かなりのヒットではないかと思います。
ダウンはダックやグースからむしられます
ダウンを着る人はそのダウンがダックやグースからとれることは知っていると思います。ですが、どんな風にとられるかは知らないかも知れません。
ダウンがとれるのは、
- ダック(アヒル)
- グース(ガチョウ)
です。ダックは北京ダックなど肉を食用にされます。グースは肉も食用にされますが、フォワグラの需要が大きいため、それように養殖されています。
食用にされるダックやグースは比較的若い段階で殺されてしまうため、高品質のダウンがとれません。ある程度育ったもののダウンがいいとされるため、フォワグラ用のグースやダウンをとるために飼育されているグースから高品質のダウンはとられます。
ダウン製品を使用する消費者側としては、
ダウンをとられるグースやダックは苦しみなく死んで、痛み無くダウンをむしられている
とぼんやり思っているか、
そうであって欲しい
と心のどこかで願っていると思います。
ただ、現実はそんなに甘いものではないようです。
食肉にされるダックやグースは牛や豚に比べると「鳥権」に配慮されていない方法で殺され、機械で羽をむしられます。この方法でとれるダウンは固い羽(フェザー)が混じってしまうこととダウンが痛んでしまうことから、高品質のダウンには使われません。
高品質のダウンとなるには、人の手でむしる必要があります。人の手でむしる方法はハンドピックと呼ばれています。
死んだダックやグースから人が手で丁寧にむしるといいダウンがとれますが、量が限られています。とれる量に対して需要が非常に大きいため、ダウン生産業者がどうしたかと言えば、
生きたままのダックやグースからダウンをむしりとる
という拷問のような方法です。
「生きたまま」という意味では、羊もラマもアルパカも同じですが、ダウンは刈り取るのではなく、むしり取ります。痛みと恐怖で鳴き叫びます。肉が避けると、麻酔も無しで布を縫うかのように縫合されます。
ダウンだけをむしり取ることができないため、フェザーも一緒にむしり取られ、体の多くの部分が禿げた状態で生かされます。そして、羽やダウンが生え揃うと再び拷問にかけられ、むしり取られます。これはライブハンドピックと呼ばれます。
この拷問を数回繰り返して、羽やダウンが取れなくなるとダックもグースも殺されます。食用にする場合もあるでしょうけれど、肉が固くなっている年齢なので、動物のエサや肥料にされてしまっているかも知れません。
どんな方法でとられたダウンなのか知る方法はあるのでしょうか?
ありません。表示義務がないためです。
動物虐待防止は未だ哺乳類がメインで、鳥類、爬虫類、両生類、魚類には十分に及んでいません。しかし、ダウンを取るための
ライブハンドピック
は遠からず規制の対象になる可能性があります。
現在、ユニクロをはじめとしたダウンを大量に販売する企業が、どのような供給元からダウンを仕入れているかを知る方法はありません。ただし、ユニクロは
- ライブハンドピックされたダウンを製品に使用しない
- 2013年秋冬モデルからはフォワグラ用に殺されたグースのダウンは使用しない
としているため、どんなダウンを使用しているのか全く情報がない企業よりは安心して着ることができます。しかし、仮に動物虐待に当たらない方法でダウンを供給することを約束していたとしても、マクドナルドのケースのように欺かれている可能性もあるため、過信は禁物です。
殆どの場合、私たちが購入するダウンがどのような方法でとられたのかを知ることはできません。ダックやグースが命を落とすことには変わりはありませんが、せめて不必要な苦しみを味わうことがないように、
- 不必要にダウン製品を購入しない
- 買ったダウン製品は大切に着て、長い期間愛用する
- 暖かさの陰にダックやグースの犠牲があることを忘れない
- 食用のダックやグースから取れたダウンを使用する企業の製品を選ぶ
などの努力はしたいものです。
ダウンの代わりにシンサレートなど優れた保温素材がありますが、人工だから環境負荷が少ないとは必ずしも言えず、何を着るかは難しい問題です。ですが、ダウンにしても、人工素材にしても、買う量を減らすことは、負荷を減らすことができますから、一度購入したら大切に着てあげるようにしましょう。
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