キックスケーター 公道使用で検挙の恐れ
2017/02/17
2月15日、愛知県春日井市出川町6丁目の市道の交差点で、それぞれキックスケーターに乗った姉弟が乗用車にはねられる事故があり、自動車を運転していた会社役員の女性が自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで現行犯逮捕されました。事故が起きた市道の交差点には信号や交差点がなく、姉弟はキックスケーターに乗って横断しているところをはねられたものとみられています。
この事故について愛知県警春日井署が「公道でキックスケーターに乗ると道路交通法に違反する可能性もある」とコメントしていますが、なぜ「可能性がある」と含みを持たせたのでしょうか?
それは道路交通法に違反するかどうかはケースバイケースだからなんです。
違法になるかも知れませんし、違法でないかも知れません。
それは乗っているキックスケーター次第。
またはキックスケーターに乗る公道次第。
そして、もしかすると警察次第。。。
怖いかも。
キックスケーターは軽車両なの? それとも遊具なの?
この点がすごく重要。
すごく重要なんですが、実は明確な規程がありません。困ったものです。
道路交通法76条に道路における禁止行為が規程されています。
第一節 道路における禁止行為等
(禁止行為)
第七十六条 何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。
2 何人も、信号機又は道路標識等の効用を妨げるような工作物又は物件を設置してはならない。
3 何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。
4 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
一 道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。
二 道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しやがみ、又は立ちどまつていること。
三 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。
四 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。
五 前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。
六 道路において進行中の自動車、トロリーバス又は路面電車に飛び乗り、若しくはこれらから飛び降り、又はこれらに外からつかまること。
七 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為
(罰則 第一項及び第二項については第百十八条第一項第六号、第百二十三条 第三項については第百十九条第一項第十二号の四、第百二十三条 第四項については第百二十条第一項第九号)出典:道路交通法 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO105.html
76条に書かれている「交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。」の「これらに類する行為」にキックスケーターが含まれているとすると、キックスケーターは
交通のひんぱんな道路において使用禁止=交通が頻繁ではない道路において使用可能
という解釈ができるため、公道において使用しても問題ないと考えられます。
でも、「キックスケーターは軽車両ではなく遊具」だと明確に規程されていないため、場合によっては道路交通法上の軽車両の扱いを受ける可能性があります。
もし軽車両とみなされた場合は、自転車と同じ扱いを受けるので、自転車で禁止されている行為(右側走行など)を見付かると道路交通法違反で検挙される恐れがあります。
どんなものが軽車両として扱われるかについては、道路交通法第二条に規程があります。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(中略)
十一 軽車両 自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう。出典:道路交通法 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO105.html
また、道路運送車両法にも規程があります。
(定義)
第二条 この法律で「道路運送車両」とは、自動車、原動機付自転車及び軽車両をいう。
(中略)
4 この法律で「軽車両」とは、人力若しくは畜力により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、政令で定めるものをいう。出典:道路運送車両
形式はともかく、
- 身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外
- 人が乗って移動する車
を満たせば軽車両となります。
ローラースケートやスケートボードが軽車両として扱われずに、遊具として扱われる理由は、「人が乗って移動するための車ではない」と一般的に考えられているためです。
ですが、キックスケーターの中には、遊びではなく通勤や通学での使用を提案しているものもあります。
サスペンション付きで、移動が快適です。
遊びではなく、「移動」が目的で製造・販売されている製品の場合、遊具ではなく軽車両として扱われる可能性がありますので、注意が必要です。
小児用の車や三輪車であっても軽車両となる恐れがあります
道路交通法で、軽車両から除外される「小児用の車」ですが、以下の条件を満たす必要があります。
- 小学校入学前まで(6歳未満)の者が乗車している自転車
- 車体が6歳未満の者が乗車する程度の大きさ(車輪がおおむね16インチ以下)
- 走行、制動操作が簡単で、速度が毎時4ないし8キロメートル程度のもの
6歳未満のこどもが乗っている自転車(少々大きめでもOKみたい)、6歳未満のこども用に設計された自転車、そして操作が簡単で最高速度が8km/h程度のものが「小児用の車」とされます。
どれも納得がいくものばかりですが、ここで注意が必要なのは速度規程です。
「走行、制動操作が簡単で、速度が毎時4ないし8キロメートル程度のもの」
と速度の規程がありますので、こども用の足こぎ車であっても自転車並に速度が出るものは「小児用の車」ではなく、軽車両とみなされる可能性があります。あくまで可能性です。
道路交通法では「6歳未満のこども向けに作られた自転車や車だったら大した速度も出ないから歩行者扱いしときますよ」ってことなんですが、速度が8km/hを超えるようなものになってくると「ちょっと待て!」ってことになります。
このことは「小児用の車」だけではなく、遊具にも当てはめられる可能性がありますので注意が必要です。
高速が出せるキックボードやスケートボードなどは遊具ではないとみなされる可能性があります
移動が目的かどうかに加えて、速度も遊具か軽車両かを分ける基準になる可能性があります。
「小児用の車」であるためには「速度が毎時4ないし8キロメートル程度のもの」でなければならないとされていることから、キックボードやスケートボードにもそれが当てはめられるかも知れません。
軽車両の扱いを受けた場合には、車両として道路交通法を遵守する必要が出ますし、保安部品が必要になる可能性も出てきます。
日本キックスケーター協会のウェブサイトには以下のようなアドバイスが記載されていますが、念のためお住いの都道府県の公安委員会または警察署に問い合わせた方が安全かも知れません。
キックスケーターは各メーカーや機種毎に構造(開発設計意図や制動装置の有無等)が異なりますので公道使用に関してはメーカー及び販売店に確認して下さい。
出典:日本キックスケーター協会のウェブサイト http://www.ksa.gr.jp/
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Comment
国土交通省の道路車両運送法で
一部のもの軽車両。
警察庁の道路交通法においては
一部の物を把握しないまま遊具としている
一部の物は、軽車両としての認可と性能を保持しながらも歩行者となってしまう歪みが発生していることが現状です。
未成年者への公道への車両使用を厳しくすることで対処するしか子供を守る手立てはありません。
大人社会は御都合主義ですからね
コメント頂き、ありがとうございます。
現場の警察官の中には問題意識を持って対応してくださっている方もいると思いますが、法律が絡むとおよそ動きが遅くて、時代遅れで困ります。
こどもを守るために厳しく対処して欲しいと思いますが、私の住む街では自転車の右側走行、傘さし運転、歩道走行、並列走行、二人乗り、無灯火走行などなど、以前と全く変わっていません。これが変わらない/変えられないようでは、キックスケーターなどによるこどもの事故も防げないかも知れません。
お返事を書く1時間位前、前の車道を小学校低学年の児童がキックスケーターとブレイブボード(くねくねさせて走るスケボー)で走って行きました。小学校でも再三全校集会などで注意喚起し、個別に指導をされているようですが、夏休みということもあってか、車道を好き勝手に走り回る姿を見かけます。本当に難しい問題です。
昔、ローラーブレードでスーパーまで行ってたこともある。今考えたらスゲー怖い行為だったなーと思う一方でキックボードでハネられるような人間は歩いていてもハネられたんじゃないの?っていう疑問が出るくらいそんな大したものでは無い。強いて言えば、自転車の逆走なんて日常茶飯事だが、警察が取り締まっているの俺の地域では見たことが無い。むしろ、道路整備のおっちゃんに逆(歩道)を走らないと危ないと注意されたことがあるくらい。
要は今の日本のルールでは現代社会に全くついていってないという現状。電動アシストと電動自転車の問題もあるが、俺は自力で40キロを超えるスピードを出せますから。それもママチャリで。大学時代それで通学していたし。漕いで出るスピードとハンドル一つで出すスピードとの安全性で言えば、圧倒的にハンドルの方が安全性高い。漕ぐ動作を入れる分、ブレーキ操作は複雑。なのに、電動自転車NG、アシストOK、その理由は…危険。馬鹿なのか?と思う。
もう数年前から中国の田舎でも自転車なんて漕いでるの見たことない。貧困層が電動自転車に乗って通学通勤している。それ専用の車道まであったりする。日本は・・・と言えば、時代錯誤なルールに縛られ、電動スクーター、電動自転車、電動スケートボードの開発段階市場を取り逃がし、電動自動車市場も下手すりゃ取り逃がす形になろうとしている。これは、日本国の方向性が圧倒的に劣悪な証拠。じじーばっかりのさばるから競争力を持てる市場を取り逃がす。今、韓国の電動キックボードを見ているが30キロの速度と走行距離を持ったものが5万そこそこ。そういう時代。日本は完全に取り残されつつある。
結局、本当の原因や要因から目を背けるから80キロでも余裕で走れる高速道路を60キロ表示するようなナンセンスなことを日本はやるんですよ…。人の命がどうとか言うならもっとやるべきことがあるだろうと思いますね。
コメント頂き、ありがとうございました。
大変勉強になりました。
お礼が大変遅れてしまい、失礼しました。今後ともよろしくお願いします。