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破傷風菌 芽胞による長期潜伏に要注意

   

錆びた釘などを踏み抜いた傷は破傷風に注意しなければならないという知識は保健体育でも習った気がします。とは言え、身近で破傷風にかかった人がいる訳でもなく、「震える舌」を読んだり、映画を観たりした人でない限りは遠い存在に感じても仕方がないと思います。

でも、破傷風菌自体はどこにでもいる菌で、土の中だけではなく、家の中にもそこら中に存在していますし、根野菜を通じて腸内にもいてもおかしくありません。普段は発症しない破傷風菌ですが、もし発症してしまうと死亡率は50%(成人で15〜60%、新生児は80〜90%)と高く、非常に危険な感染症です。

そんな恐ろしい破傷風菌ですが、もっと恐ろしい事実が隠れている可能性があります。

芽胞になった破傷風菌は長期間死にません

破傷風菌は非常に怖い菌ですが、嫌気性と言って酸素を嫌います。嫌うだけではなく、酸素に接すると死んでしまいます。

破傷風というと「錆びた釘」を思い出しますが、錆びた釘についた破傷風菌が体の深いところに送り込まれることで感染が成立します。入口が狭く、傷が深いと感染しやすいのですが、擦り傷や浅い切り傷では酸素と触れてしまうため、破傷風菌は増殖も出来ずに死滅してしまいます。

日常生活で、そうそう錆びた釘を踏む訳ではないので安全かと思いきや、実はそうではないんです。

破傷風菌自体は嫌気性で酸素がある環境では増殖はおろか、生きていくことができません。しかし、酸素がある都合の悪い環境では芽胞という殻で守られた状態になって、再び自分に都合がよい環境が整うまで潜伏することができます。芽胞になるとかなり長い期間潜伏することが可能だと言われています。長いってどの位なのでしょうか。数週間?数か月?もしかして数年?いいえ、数十年と言われています。

芽胞となって潜伏を始めた破傷風菌は、環境が嫌気的になるのをひたすら待ち続けます。

原因不明の破傷風発症の原因は潜伏する芽胞かも知れません

余り衛生的ではない場所での出産で新生児破傷風に感染するリスクが高いと言われています。発展途上国に多いのですが、へその緒を切る時に破傷風菌に感染し、発症すると考えられています。

しかし、万全の衛生管理がされた手術室で行われた手術や歯科治療で破傷風を発症するケースが見られ、その感染経路が謎とされてきました。

もしかするとそれは色々な経路で取り込まれた破傷風菌の芽胞が発芽したせいかも知れません。

  • 土いじりで手の細かい傷から侵入
  • 転んだ時に出来た小さな傷から侵入
  • 食物中の芽胞が口腔内や消化管の傷から侵入
  • スポーツ中などで呼吸が荒くなった時に肺に侵入

色々なケースが考えられますし、どれもあり得ると思います。

このような場合は侵入したその場に留まると思いますが、もしかすると血液に乗って体内の他の場所に運ばれる可能性もあるかも知れません。

  • 赤血球の大きさは7~8μm×2μmで、
  • 破傷風菌の芽胞の大きさは3〜6μm×0.3〜0.6μm

ですから、血管内に入って移動することはできそうです。ですが、血液内では白血球に食べられてしまいます。白血球に襲われるのを防ぐ莢膜(きょうまく)を持たないので、逃れることは難しそうです。ですが、芽胞の状態で白血球の攻撃を逃れる方法を持っていたりすると恐ろしいです。

できるだけ破傷風菌の芽胞を体内に取り込まないようにする方が安全です

万全の衛生管理がされた手術室で行われた手術や歯科治療で破傷風を発症するケースがどのようにして起こるかが分かっていませんので、体内に潜伏した破傷風菌の芽胞によって引き起こされた可能性を消すことはできません。

人間が少し位の傷で死んだりせずに生きていられるのは素晴らしい免疫システムのおかげです。「化膿しなかったのは菌が入らなかったせいで、化膿したのは菌が入ったせい」って思ってしまいますが、本当はほとんどのケースで菌はガッツリ入っています。膿む・膿まないはかなり体調次第だったりします。人間が死んだ瞬間から腐敗が始まっていくように、ひとが菌に侵されずに日々を送れるのは免疫のお陰です。

ですから、カビの胞子、菌の芽胞、中には菌自体が体内に入っても、簡単には病気になりません。免疫によって死滅させられたり、消化管で溶かされたり、色々な形で病原菌は消滅しますが、その一方で色々な形で体内に残ってしまうものもあります。

肺に吸い込んだカビの胞子や傷口から入った芽胞、または日和見感染として皮膚や体内で軽く感染した状態で共生状態になってしまうものもあります。若く健康な時は問題ありませんが、加齢や体調不良、または手術や投薬などで免疫機能が下がった時に、潜伏していたものが暴れだす恐れがあります。

どんなに注意してもこれらのものを体内に取り込まないでいる方法はありません。それは破傷風菌の芽胞も同じです。ですが、リスクを少しでも減らすために、体内に取り込んでしまう芽胞を減らす努力をする方がいいでしょう。

負傷した場合は傷口の適切な処置を行いましょう。まずは砂や埃などと共に芽胞をしっかり洗い流すことが重要です。後は湿潤療法(モイストヒーリング)で最短で患部の治癒を心がけましょう。

また、素手で土いじりをすると微細な傷口から破傷風菌の芽胞が侵入する恐れがあります。必ず手袋を着用の上で作業を行いましょう。また、芽胞を吸い込んだり、目から侵入する恐れもあります。土いじりをする時は、短い時間であっても、保護メガネとマスクの着用を忘れないでください。

発症することはまれですが、発症すれば50%の確率で死に至ります。そんな菌の芽胞が直ぐ近くにあることを忘れず、できる対策は行っていきましょう。

 - 保育園・幼稚園, 健康, 公園, 動物, 学校等, 屋外, , 市街地, 海外, 生活, 病原菌, 育児, 野外

Comment

  1. M より:

    母が破傷風に感染したのは、平成6年です。その時に、病院で注射をして帰宅。それから、血液の流れる音、頭の血液の流れる音、などがして、太陽にあたると余計ひどくなるが、なんとか日常生活を送っていた。
    平成14年、脚の脛のとこを傷つけてしまい、両脚が像のようにむくみ、力も入らず歩けない状態になる。かかりつけの医者へいき、朝、夕2回の点滴を通いで治療していただき、長い月日をかけて、なんとか日常生活を送っていた。
    平成22年、詳しくはわからないが、体調がわるくなったが、かかりつけの医者と食事等で月日をかけて、なんとか日常生活を送っていた。
    平成30年、1月6日インフルエンザB型にかかり、9日に肺炎になる。15日に肺炎は良くなってきたので、痰を切る薬と不安を取り除く漢方薬が処方される。16日の夜から、異常行動が出始める。
    現在、病院に入院中。脳のMRI.CT、髄液を採り、髄膜炎の検査、血液検査をするが、画像、数値では何の異常も認められない。原因が解らずにいます。
    破傷風菌が関係してるのでは?と考えてしまいます。そんなことは、症例はないし、あり得ないことと言われますが、ずっと身体の中に潜伏していることはないのでしょうか?

    • bengals より:

      確認が遅れ、お返事が遅くなりましたこと、お詫び致します。申し訳ありませんでした。また、お名前ですが、勝手ではありますが、伏せさせて頂きましたこと、ご了承ください。

      まずはお母様のこと、大変心配ですね。1日も早く快方に向かわれますこと、お祈り申し上げます。

      1月6日にインフルエンザB型を発症し、そこから治療を続けられているとなりますと、闘病をされているお母様は勿論ですが、看病をされるあなたも大変なご苦労を続けられていると思います。免疫が低下していることが考えられますので、睡眠と栄養を充分にとって頂き、感染症予防には充分心がけてください。

      医師ではありませんので、一般的な意見だと受け取ってください。

      破傷風菌の芽胞が長期間に渡って体内に潜伏している可能性はあると思います。手術や歯科治療は万全の衛生管理がされた場所で行われますが、そこで行われた手術や歯科治療の後に破傷風を発症するケースがあることは体内に潜伏する破傷風菌の芽胞の可能性を示唆しています。もし血液に触れれば白血球によって排除されますが、白血球に触れない場所に潜むことが出来れば長期間(何十年)潜伏することは理論上可能です。ですが、潜伏している場所の特定に関する資料がないため、絶対とは言えない状態でもあります。

      もし破傷風菌の芽胞が過去の感染の際にどこかに潜伏していて、今回インフルエンザB型から肺炎を引き起こした際に、免疫の低下によって破傷風菌の芽胞が発芽する機会が生まれ、破傷風菌感染を起こしたとすると、恐らくは肺炎の治療に使用された抗生物質によって体内の破傷風菌は消滅し、消滅までの間に作られた破傷風毒素(テタノスパスミン)による神経症状が引き起こされたと考えることができます。

      ただ、もし破傷風菌感染を起こして、破傷風毒素(テタノスパスミン)が神経症状を引き起こしたとした場合は、痙性麻痺となるはずですので、医師が破傷風菌感染を疑うきっかけとなると思います。また、既往の説明で過去の破傷風菌感染についても医師にされていると思いますので、医師も破傷風菌感染についても頭に入れているはずです。ただ、その症状が破傷風菌感染の特徴である痙性麻痺ではないことから診断・治療に至っていないものと考えます。

      では絶対に破傷風菌感染ではないと否定をすることもできないとも思います。傷口に感染した場合は、典型的な症状を引き起こすことになると思いますが、その他の日和見感染を引き起こす細菌のように、急激な症状を起こさない程度に破傷風菌が口腔内、鼻腔内、呼吸器官、腸などで日和見感染を起こしていて、微量の破傷風毒素(テタノスパスミン)が脳に到達している場合は、一般的な破傷風の症例とは異なる神経症状を引き起こす可能性はゼロではないと思います。

    • bengals より:

      続きになります。(PCの日本語変換ができなくなり、返信が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。)

      破傷風菌は腸内に常在菌として存在していますが、常在菌として存在している状態では、特に問題を引き起こすことはありません。ただ、別の疾患の治療に抗菌薬が使用され、それによって腸内フローラが変化し、破傷風菌の芽胞の発芽を許し、増殖が始まった場合、破傷風菌が産出する破傷風毒素(テタノスパスミン)によって神経症状が出る可能性があるようです。そして、腸内で破傷風菌が破傷風毒素(テタノスパスミン)を産出し、それが神経に影響を及ぼす場合は、毒素の吸収から中枢神経系到達までのプロセスが異なる

      通常の破傷風の場合(急性)と異なり,腸管内で産生された神経毒は,迷走神経を介して消化管から中枢神経に達する.そして,中枢神経系でその毒素はシナプトブレビンを分解し,神経伝達物質の遊離を阻害するという.

      ために、痙性麻痺ではなく、異常行動(攻撃的な行動、アイコンタクトの頻度の減少,言語を聴取する能力の低下など)が生じると書かれた資料もありました。

      お母様の現在の状態のそこまでの経緯を考えると、過去の破傷風菌感染によって腸内に存在していた破傷風菌の芽胞が、今回の肺炎の治療の為に使用された抗菌薬によって腸内フローラが変化し、破傷風菌が腸内で増殖して悪さをしている可能性があります。

      担当の医師に改めて既往(破傷風菌感染と治療)を説明頂き、腸内での破傷風菌感染の可能性について相談されてみてはいかがでしょうか。

      詳しくは渡邉邦友氏の「自閉症と腸内細菌(腸内細菌学雑誌 28 : 121-128,2014)」をご参照ください。

      一日も早くお母様が快復されますことを心からお祈り申し上げます。

  2. F より:

    破傷風菌についてご相談したいことがあるのですが、聞いていただけますか?

    • bengals より:

      お返事が遅くなり、申し訳ありませんでした。勝手とは思いましたが、やり取りに当たって名前を伏せさせて頂きました。ご了承ください。

      医師ではありませんので、一般的なお話しかできないと思いますが、私の分かる範囲、調べられる範囲であれば、お話を聞かせて頂きます。

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