ペットとのキスが胃ガンを起こす可能性 ヘリコバクター・ハイルマニ
2019/06/12
胃がんと言えば、1983年に発見された人などの胃に生息するらせん型のグラム陰性微好気性細菌の
ヘリコバクター・ピロリ (Helicobacter pylori)
が原因菌として知られていますが、実はピロリ菌以外の原因菌が存在していることは余り知られていません。
それは、ピロリ菌が発見された3年後の1987年に発見された
ヘリコバクター・ハイルマニ(Helicobacter heilmannii)
と呼ばれる人などの胃に生息するらせん型のグラム陰性微好気性細菌のうちピロリ菌ではない螺旋菌があります。
ヘリコバクター・ピロリ菌が胃がんなどの病気を引き起こすことは広く知られていますが、ヘリコバクター・ハイルマニも同じように胃がんを引き起こす(胃MALTリンパ腫の患者の約6割が、ピロリ菌陰性でハイルマニに感染とも)恐れがあることが分かっていて、しかもこの菌は人だけではなく、イヌ・ネコ・ウサギなどのペットにされる動物にも感染することが分かっていますので、ペットとの過度なスキンシップにより人獣間感染が十分起こり得るため、注意が必要です。感染を防ぐには、
- キス
- 口移しで食べ物を与える
- 一緒に寝る
- 一緒に入浴
- フンや嘔吐したものの処理を素手で行う
などは避けるべきです。「感染上等」という方もいると思いますが、人だけではなく、ペットの側にも感染による健康リスクがありますので、ペットのことを思うなら、止める方が賢明です。(飼い主にもしものことがあると、ペットの運命にも大きな影響を及ぼすことも認識が必要です。)
ヘリコバクター属の細菌には、
- H. acinonychis
- H. anseris
- H. aurati
- H. baculiformis
- H. bilis
- H. bizzozeronii
- H. brantae
- H. canadensis
- H. canis
- H. cetorum
- H. cholecystus
- H. cinaedi
- H. cynogastricus
- H. equorum
- H. felis
- H. fennelliae
- H. ganmani
- H. heilmannii(ヘリコバクター・ハイルマニ)
- H. hepaticus
- H. mesocricetorum
- H. macacae
- H. marmotae
- H. mastomyrinus
- H. mesocricetorum
- H. muridarum
- H. mustelae
- H. pametensis
- H. pullorum
- H. pylori(ヘリコバクター・ピロリ)
- H. rappini
- H. rodentium
- H. salomonis
- H. suis
- H. trogontum
- H. typhlonius
- H. winghamensis
などがありますが、人に感染し、胃がんなどを引き起こす細菌としては、現在ところピロリとハイルマニの2種が確認されています。
ピロリ菌が萎縮性胃炎や胃潰瘍を引き起こし、胃がんの原因になることは広く知られています。僕は検査でピロリ菌陰性でしたが、陽性だった奥さんもピロリ菌の除菌をしています。
そんな広く知られて、萎縮性胃炎、胃潰瘍胃、がんの原因菌として治療(除菌)の対象となっているヘリコバクター・ピロリ菌に対して、同じく胃がんを引き起こす(胃MALTリンパ腫の患者の約6割が、ピロリ菌陰性でハイルマニに感染とも)恐れがあるのに、余り知られずに、治療の対象にもなっていないのはなぜでしょうか?
ヘリコバクター・ハイルマニはピロリ菌の検査では発見できません
胃酸は非常に強い酸なので、昔は菌が胃の中に生息することは出来ないと考えられていました。
でも、ヘリコバクター・ピロリは、その活動においてウレアーゼと呼ばれる酵素を産出して、
- 作ったウレアーゼで胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解
- 胃酸を分解して作ったアンモニアで、局所的に胃酸を中和
- 胃酸が中和された部分に定着(感染)
という特殊な活動によって胃の中でも感染することを可能にしています。
ピロリ菌の尿素呼気テストでは、このウレアーゼ活性を利用してテストを行いますが、ヘリコバクター・ハイルマニは、ウレアーゼ活性がないため、この方法では発見できない。
また、ヘリコバクター・ピロリに対する抗体を用いた抗原抗体反応 による検査も培養を行う培養法も、ヘリコバクター・ハイルマニには使用することができず、その他にもヘリコバクター・ハイルマニの診断法が確立されていないことが、ヘリコバクター・ハイルマニの危険性が広く知られていないことの原因になっているようです。
ピロリ菌と比べて、病原性や感染力が弱ければ問題ありませんが、残念なことに
マウスを用いた実験では、病原性や感染力が強いことも判明
していますので、ヘリコバクター・ハイルマニの感染に十分注意しなければなりません。
ですが、検査法が確立されていない菌に対してどう注意すればいいのでしょうか?
ヘリコバクター・ハイルマニの特徴
検査方法が殆ど無い、そして培養もできないというヘリコバクター・ハイルマニには、以下のような特徴があります。
ピロリ | ハイルマニ | |
感染対象 | 通常人と霊長類 | 人獣共通感染症 |
胃の感染部位 | 粘膜層 | 胃腺腔深部や壁細胞内にも存在 |
鞭毛 | 片側 | 両側 |
移動速度 | 遅い | 速い |
大きさ | 数μm | 20μm |
ウレアーゼ活性 | 陽性 | 陰性または弱陽性 |
呼気による同定検査 | 可能 | 不可 |
大量培養 | 可能 | 困難 |
萎縮性胃炎 | 起こす | 起こさない |
ピロリ菌検査を受けても陰性であるにも関わらず、胃炎が治らない場合や胃がんを発症した場合、もしかしたらヘリコバクター・ハイルマニが原因になっている可能性があります。(※ストレスや遺伝が原因の場合もあります)
現時点では、病院で行えるような汎用の検査方法が確立されていないため、できること余りありませんが、人獣共通感染症であることから、
ハイルマニ保菌者⇒イヌ⇒イヌ⇒ハイルマニの非保菌者
というルートで感染を広げる恐れがあります。
イヌやネコ、そしてウサギなどは、昔は屋外で飼うのが普通でしたが、今は屋内で飼うのが普通になり、その結果、濃厚接触する機会も増えています。
ペットは家族の一員ですが、キスなどの濃厚接触をすることによって双方にリスクがありますので、キスなどの濃厚接触を避ける方が安全です。
ヘリコバクター・ハイルマニに感染すると、ペットの方も炎症を起こしますし、寿命を短くしてしまう恐れがあります。
また、ヘリコバクター・ハイルマニだけではなく、歯周病菌や虫歯菌を感染させて、ペットが歯周病や虫歯を起こすケースも増えていますので、
愛しているからキスをする
から
愛しているからこそキスはしない
という道を選ばれることをお勧めします。
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