スズキの燃費データ不正は214万台
2019/06/12
5月31日、スズキは国土交通省に燃費計算において不正が行われていた台数が214万台(27車種)になるという追加報告を行いました。
三菱自動車に続くスズキの燃費データ不正は214万台
三菱自動車の事件が余りに衝撃的だったため、スズキの件にそれほど驚きませんでした。
それでも、影響を受ける車両台数は、214万台、26車種に及び、大きな問題であることに違いはありません。台数で言えば、三菱自動車を大きく上回っています。
多分影響したであろうスズキの体質
三菱自動車には隠蔽体質があると言われますが、スズキにも他に見られない体質があります。
それは徹底した
倹約体質
三菱自動車のコストカットとは少し違います。
とにかく無駄な経費・時間は使わない。
最近ではさすがに違うと思いますが、以前はスズキ(鈴木修会長が社長だった頃)の社屋にはエアコンが無かったそうです。
それは一般社員だけではなく、上層部でも同じで、当時の社長であった鈴木修氏も他の写真とデスクを並べてエアコンの無い中で仕事をしていたそうです。
それは製品作りにも表れています。
新しい技術やトレンドを取り込む場合は、たいてい一番の後発になります。
業界の先端を走ることは気持ちがいいかも知れませんが、「ハズす」リスクがあります。
スズキはそのリスクは取らずに、先発の良い所と悪い所を十分に分析した上で少し改良したモデルを最後に売り出すという印象があります。
いわゆる後発有利性を得ることを目指している会社です。
そんなスズキですが、静岡県に2つのコースを持っています。
1つはスズキ竜洋テストコース(静岡県磐田市駒場4935)、もう一つはスズキ相良テストコース(静岡県牧之原市白井1111)です。
このスズキ竜洋テストコースは主に二輪用テストコース。
軽自動車のテストを行うのはスズキ相良テストコースです。
こちら、山の中にあるように見えますが、
実は海に近いです。
御前崎にも近いのですが、この辺りは風が強く、牧之原市を抜けた風がスズキ相良テストコースに流れ込んでしまいそうな地形です。
レースコースに強い風は吹かない方がいいと思いますが、テストコースの場合は大きな問題はないと考えて、この場所に決めたのでしょう。
しかし、時代は流れ、如何にパワフルで運動性能が高い車を作るかという事から、如何に燃費の良い車を作るかという事にメーカーの関心が移った時、このコースが問題になったのだと思います。
- 強い風
- 低温
- 高い湿度
は燃費にマイナスの影響を及ぼします。
スズキは直ぐにそのことに気付いたはずです。
スズキ相良テストコースで計測する燃費は実際よりも低い(場合がある)
実際よりも悪い燃費データを使えば営業的に不利なだけではなく、顧客に不誠実だという見方もできます。
国土交通省が設けたルールでは、スズキが正しい燃費データを得るには
- 全コースを風よけで囲む
- 新しいテストコースを作る
- どこかのテストコースを借りる
しか道はありません。
どちらにしても、大きなコストがかかってしまいます。
そこで、スズキはスズキ相良テストコースで得たデータを基に指数を設定し、机上で正しく計算を行う方法を決めたのでしょう。
スズキの体質からすれば、机上で計算を行う際に、実際よりも燃費が良くなってしまうことは「不正」だと考えるでしょうから、実際よりも燃費が悪くなる「ほどよい指数」を設定したのかも知れません。
風の少ないテストコースで計測した燃費データ>スズキの算出した燃費>スズキ相良テストコースで得た燃費データ
今回の事件を受けて、スズキが正しい条件で燃費を計測した結果、スズキが算出して使用していた燃費データよりも良かったといいますから、きっとこんな感じだったんだろうと思います。
三菱は実際よりもいい燃費を達成したことにして、自分が責められるのを避けたいという不純な動機から来ていますが、スズキの場合は、コースの風が強すぎるから何とかコストを掛けずに燃費を算出できないものだろうかという気持ちから来ていますので、結果も自ずと違ってきたのでしょう。
現在の燃費算出方法は変えるべき
国土交通省は、スズキからの報告を精査した上で、そのデータが正しいかどうか検証を行うとしています。
この検証の結果、実際にスズキが対外的に使っていた燃費データよりも実際の燃費がいい場合、スズキは評価をあげることになるでしょう。
ですが、国土交通省が定めた方法とは違う方法で燃費を計測(算出)していたという点では不正と言わざると得ません。
スズキは本来、風よけを設けるか、新しいテストコースを作るべきだったのかも知れません。
どのメーカーも同じ条件で経営をしている訳ですから、スズキだけそのコストから逃れるのは良くありません。
とは言え、「同じ条件」としているそのテストコースにも各社違いがあり、
- カタログ掲載の燃費よりも実際の燃費が悪い
- カタログ掲載の燃費と実際の燃費が同じ
- カタログ掲載の燃費よりも実際の燃費が良い
場合があるはずですが、国土交通省が定めた検査方法に基いてさえいればOKというのは消費者として腑に落ちません。
国土交通省は、廃棄ガスと燃費性能を測定試験の方法として、現在採用しているJC08モードから、国連が定める国際基準であるWLTPを2018年に採用する方針だそうです。
国際基準のWLTPにしても、JC08モードのままにしても、各社が各々試験を行っている現状を変えないのであれば、同じようなことが今後起きる余地は残されています。
国の職員がメーカーに抜き打ち査察を行い、元データを持ち帰ることも計画されています。
それでも屋外のテストコースで各社が各々テストを行うというスタイルを変えない限り、燃費データは色々な条件の影響を受けてしまいます。
この際、試験自体は今まで通り各社で行うとして、国が最終試験を行った上で認証を行うようにしてはどうでしょうか。
国が税金を使ってテストを実施するのはうまくありませんので、各メーカーが費用を負担し、一般財団法人日本自動車研究所のようなところが国の委託を受けて試験を実施したりするのはだめでしょうか。
各社で競争があるのは分かりますが、その結果、実際とは違うデータが使用されて自動車が販売されると迷惑を受けるのは消費者です。
JC08モードでもWLTPでも、国土交通省が定めたルールに従えば、公表される燃費データが実際よりも高くてもOKという現状を改善して、公平公正な燃費試験の方法を実現して欲しいと思います。
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