北海道のキタキツネと言えばエキノコックス

僕の世代では、北海道のキタキツネにはエキノコックスという寄生虫がいるので近づいてはいけないと盛んに言われていました。映画「キタキツネ物語」のヒットもあって、北海道に行くひとがキタキツネに接触する可能性が高まった時期だったからかも知れません。最近は、エキノコックスという単語を耳にすることが殆どありませんが、逆に観光客がキタキツネに近づく機会は当時よりも増えているのではないかと思います。

キタキツネに寄生するエキノコックス

そもそもは北海道にはいなかった寄生虫ですが、近代以降にアリューシャン列島から持ち込まれた養殖ギンギツネを介して多包条虫のキノコックスが入り込み、北海道全土に広がりました。

現在では青函トンネルを歩いて青森に渡ったキタキツネによって青森でもエキノコックスが確認されています。

感染すると

エキノコックスに感染したキタキツネの糞と一緒に排出されたエキノコックスの卵が水や野菜を通じて人間に経口感染することで発症します。

感染者の98％は肝臓に病巣が形成されます。こどもで5年、成人で10～20年は嚢胞（のうほう）が小さく、全く症状がありません。嚢胞が大きくなると、肝臓腫大を起こし、腹痛、黄疸、皮膚の激しい痒み、腹水をもたらします。

肺に寄生した場合は、咳、血痰、胸痛、発熱など、結核に似た症状が見られます。

肝臓と肺以外にも、骨、心臓、脳などに寄生する場合はあり、重篤な症状が引き起こされます。

嚢胞が大きくなると体内で破れる場合があり、その場合は多包条虫が拡散してしまい、複数の場所に転移を起こします。また、嚢胞の内容物が漏れ出ることで、アナフィラキシーショックを起こす場合もあります。

治療方法

自覚症状が出る前に治療や摘出手術ができれば助かりますが、発症してしまった場合や感染した場合が悪い場合は手術が出来ず、死に至ることも少なくない恐ろしい感染症です。こどもで5年、成人で10～20年は症状がない訳ですが、感染後に治療がされず放置した場合の5年後の生存率は30%といわれています。

北海道以外の場合、エキノコックスを疑うことが特に少ないため、北海道を旅行で訪れ、キタキツネと接触してエキノコックス症になった場合は、気付かれずに長期間が過ぎる恐れがあるため、感染を防ぐことが非常に重要です。

感染を防止するには

とにかくキタキツネには近づかない

餌付けをされて、人間を警戒せずに近づくキタキツネも存在しています。ほんとうに愛らしいのですが、絶対に近づいてはいけません。近づいて来たら、逃げましょう。

生水は絶対に飲んではいけません

綺麗に見える沢の水や井戸水も生で飲むことは絶対に禁止です。エキノコックスは熱に弱いので、加熱して飲むようにしましょう。60度10分間の加熱で死滅します。

山菜や野菜も必ず良く洗いましょう

加熱してから食べましょう。極力生食は避け、どうしてもサラダで食べたい場合は野菜用洗剤でしっかり洗ってから食べてください。

野ネズミ・野良ネコにも注意しましょう

野ネズミや野良ネコがキャリアになっている恐れがあります。絶対に触らないようにしましょう。

ペットを連れていく場合は特に注意しましょう

ペットを連れて北海道へ行く場合は、ペットが草むらに入らないように常にリードで繋いでおきましょう。沢の水や井戸水はペットにも飲ませないでください。常にペット用の水も持ち歩いてください。また、逆にキタキツネにペットの病気や寄生虫を感染させてしまう恐れもあります。絶対にキタキツネとペットが接触しないように注意してください。

キタキツネを見たらエキノコックスを思い出してください

北海道のひとはエキノコックスの危険性を良く知っていますが、それでも毎年20名ほどの方が感染しています。（2014年は北海道26名、北海道以外2名、計28名）

北海道へ観光で行かれる場合は本当に注意してください。