退職した職員が鍵を複製して窃盗に入るリスク
2019/06/12
ホテルサニー志賀で1月7日に桐光学園高等学校の女子生徒170人分の貴重品が盗まれた事件ですが、現在も警察の捜査が続いています。警察は、2015年8月に発生した早稲田アカデミーの合宿参加者340人分の貴重品が盗まれた事件との関連性もついても捜査を行っており、早い段階での犯人検挙を期待しています。
退職した職員が鍵を複製しているリスクには対策なし
今回のホテルサニー志賀での窃盗事件では、
- 事務所や出入り口の鍵を壊された形跡がない
- 防犯カメラには犯行の様子が写っていない
ことから、内部関係者や内通者の関与が疑われていると思います。
鍵を持っている人間なら、鍵を壊さずに建物内に侵入することができます。今回は防犯カメラに写っていないことから、前回の事件と同じ犯人(グループ)か、別の内部事情に詳しい人間の犯行である可能性があります。
防犯カメラの設置場所や操作方法は外部の人間には分かりませんが、元職員であれば担当でなくても概ね設置場所と操作方法は分かります。
過去に鍵を持たされていた人間であれば、複製を作る機会があり、犯罪を犯そうと思えば、難しくはありません。ホテルサニー志賀での鍵の管理方法については詳しいことが分かりませんが、
- 誰に鍵を持たせていたのかの記録
- 鍵は複製が難しいものなのかどうか
- 鍵を管理していた職員が退職する際に鍵を変えたかどうか
などが気になります。
で、考えてみたのですが、自分が過去に働いていた場所(アルバイト・正職員)では、鍵の管理は結構いい加減でした。施設の責任者をしていましたが、別の部署に異動の際は、新責任者へ鍵の受け渡しをするだけで、複製をしていたとしても全くバレることはありません。(というか、複製はバレません。複製が難しい・困難な鍵にする以外に方法はないです。)また、防犯装置もカメラもついていましたが、その操作方法はアルバイトの子達も全員知っていました。施設管理責任者が会議で開店時間に間に合わない時は事前にアルバイトのリーダーかサブリーダーに鍵を渡して、施設管理を代行してもらっていました。でも、この管理方法って特別な施設ではない限り、多くのところで同じような方法をとっているのではないでしょうか。
「性善説」に基づいた管理方法なので、全員が善人の時は問題ありませんが、そこに悪人が混じると一瞬で破綻してしまう脆い管理方法です。
ホテルサニー志賀の窃盗事件もそこを突かれたのではないかと思われます。
人的な被害が出ずに済んだのは不幸中の幸いでした
ホテルサニー志賀の事件では、事務所内に保管した貴重品がピンポイントで窃盗被害にあいました。早稲田アカデミーの時もそうですが、貸し切りで団体の宿泊者がいる時でなければ、ダンボールに入れて保管するというずさんな管理はされません。そこをピンポイントで狙った窃盗となるとやはり内部関係者や内通者による犯行が疑われます。
今回は団体客の貴重品をピンポイントで狙った犯行だったので、誰も怪我をしたりせずに済みましたが、貴重品が狙いではなかったとしたら、本当に怖い状況でした。
貴重品をホテルに預けている、そしてホテルは貸し切りで中には部外者がいないという安心感から、部屋のドアを施錠せずに就寝した生徒達もいたことでしょう。そこに侵入され、暴行されていた可能性もあります。貴重品は保障もできますが、生徒の命は保障ができません。
今回のような管理体制では、貴重品だけではなく、ホテル関係者がいなくなる夜間に部屋に前犯罪者が侵入して暴行などをするリスクを排除することはできません。事務所に金庫を設置して、預かった貴重品の防犯体制を高めたとしても、宿泊者の安全は危険に晒されたままです。
ただ、この問題はホテルサニー志賀に限ったことではなく、その他の宿泊施設でも起きうることです。
ホテル以外で考えられるリスク
- 学校・会社・病院の鍵を複製され、元職員が不正に侵入する
- 中古マンションの鍵を前の住民に複製され、留守中に侵入されてしまう(鍵の交換は新規入居者の負担がほとんど)
- 中古車の鍵を前オーナーが持ったままになっていて、窃盗に使われる(中古車購入時、全ての鍵が渡されないことは少なくありません)
リスクヘッジの方法
複製ができる鍵の場合、複製を阻止することはできませんので、複製が可能な鍵を使用している場合は、管理者が退職する度に鍵を交換してしまう以外に対策はありません。
退職者が出る度に鍵を交換するのはお金もかかりますので、複製が不可能、または非常に困難な鍵に交換してしまうのが更に安全で安心です。
ただ、絶対に複製ができない鍵は殆どないので、
- 防犯カメラ(カメラの操作には別の鍵が必要)
- 鍵管理者のリスト
- 鍵管理のルール(貸与不可・複製不可・紛失等の場合は自己負担)
などと組み合わせるのが有効です。
ホテルサニー志賀で被害が貴重品だけだったのは不幸中の幸いです。犯人の目的が貴重品ではなく、女子生徒であったとしたらと考えるとゾッとします。私立桐光学園高等学校の関係者も、貴重品の盗難だけではなく、生徒の安全を確保できる状態なのかどうかをしっかり見極めて、次回の宿泊施設を決定して頂きたいですし、ホテルサニー志賀については二度と同じ轍を踏まないように防犯対策をしっかりと見直し、改善して頂きたいと思います。
経営者や施設管理者の皆さんには、今回の事例から自社の防犯体制が「性善説」に基づいた脆弱なものになっていないかどうか、今一度見直して頂き、改善すべきところは改善して頂きたいと思います。
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