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オウム病との付き合い方

   

日本産婦人科医会などの調査で、2015・2016年に「オウム病」に感染した妊婦2人が死亡していたことが分りました。

そのうちの一人は、妊娠24週に入院。その時点で、発熱と意識障害が見られました。入院する以前に受けた診察や治療において、「オウム病」の可能性が見落とされ、誤った治療がされていた可能性があります。

オウム病の診断がされたのは死亡した後

抗生物質ができる前は15~20%あった「オウム病」の致死率も、適切な治療さえされれば致死率は1%未満。

致死率1%未満であっても楽観視するべきではありませんが、適切な診断がなされ、「オウム病」に効く抗生物質を適切に服用すれば無意味に恐れる必要はありません。

ただ、この致死率1%未満という数字は「適切な治療がされた場合」であって、的確な診断がされず、必要な治療がなされない場合には致死率が跳ね上がり、致死率15~20%になる恐れがあります。

亡くなった女性は生前に「オウム病」であるという診断を受けず、効果のあるエリスロマイシン(9歳以上、または妊婦以外の場合は、テトラサイクリンやドキシサイクリンなどの抗生物質)が使用されていなかった可能性があります。事実、この女性が「オウム病」であったことが判明したのは、亡くなった後のことです。

「オウム病」は妊婦が感染した場合は、「妊婦オウム病(gestational psittacosis)」を引き起こし、非定形肺炎、肝炎、敗血症、胎盤不全を起こし、早産・流産・胎児死等の原因となることも知られていますので、妊娠されている人、または妊娠の予定がある人がいる家庭では特に注意が必要です。

今回のオウム病による妊婦が死亡した国内初の事例に関する報道では、

妊娠中は鳥類などの動物と密接な接触を控えるように

という注意喚起に留まっていますが、「オウム病」に関して、今一度医師も含めて再確認する必要があると思います。

オウム病はオウムに限定された病気ではありません

「オウム病」という病名は、英語名の「Psittacosis」と別名の「Parrot Fever」に由来しています。(※Psittacosisという病名もオウムを指すギリシャ語のPsittakosに由来しています。)

しかし、「オウム病」を指す英語名には「Ornithosis」もあり、これは訳すと「鳥類病」になります。この病名が示す通り、オウムに限定された病気ではありません。しかも、オウムに限定されないだけではなく、鳥類に限定される訳でもありません。

この病気を引き起こすのはChlamydia psittaci (クラミジア・シッタシ)という細菌で、鳥類などから人に感染し、疾病を引き起こします。原因については不明でしたが、ペットのオウムから人に感染する病気があるという認識はかなり古くからあって、ヨーロッパで初めて確認されたのは1879年でした。

アメリカでは、1929年のクリスマスにアメリカのボルチモアに住むSimon S. Martin氏が妻にクリスマスプレゼントとして買ったオウム(クリスマスまでに死亡)から感染を起こり、親戚2人と妻のLillianが発病しました。これ以前にも症例の報告はありましたが、このケースに端を発してアメリカをパニックに巻き込み、これによって「Parrot Fever」が広く知られることになりました。

このように当時珍しかったオウムを持ち帰り、それをペットにした富裕層に感染症が発症したこと、そしてその原因もよくわからず、治療法も明らかではなかったことのインパクトが余りにも大きかったため、オウムに限定された病気ではないにも関わらず、オウムには不名誉な「オウム病」という名前を付けられ、それが現在まで残ってしまうことにもなってしまいました。

Chlamydia psittaci (クラミジア・シッタシ)に感染し、「オウム病」を媒介する可能性がある鳥類には、

  • オウム
  • インコ
  • アヒル
  • ニワトリ
  • ハト

などがあります。ただ、実際には鳥類だけではなく、鳥以外の小動物や犬・猫、および野生動物からも感染する可能性があります。

「オウム病」は感染症法で四類感染症に指定され、診察した医師には報告義務があります。E型・A型肝炎、エキノコックス症、狂犬病、つつが虫病、デング熱などと共に発生動向が監視されています。

報告された内容を国立感染症研究所がまとめたものによりますと、1999年4月~2004年第53週までに報告された「オウム病」213例の推定感染源として「動物等からの感染あり」とされたものが190例あり、

動物等からの感染 190例 鳥類 インコ類 54%
ハト 10%
オウム 3%
哺乳類 ヘラジカ 3%
不明 7%
動物等からの感染以外 23例

 

上の表は、推定感染源が単独で記載されている場合で、併記されている場合を含めた場合は、以下のようになります。

鳥類 インコ類 59%
ハト 12%
オウム 6%
上記以外の鳥類 15%

※併記の場合なので、カウントが重複しています。

こうやって見るとオウムは少数派で、インコ類が圧倒的に多いことが分かります。

ですが、オウムのような大型の鳥(※オカメインコは中型)を飼っている家庭は、小型から中型のインコを飼っている家庭に比べてば圧倒的に少なく、それがこの結果に反映されていると考えられます。

以上の推定感染源の中に、日本でインコと同じように多く飼育されている

  • 文鳥
  • ジュウシマツ
  • カナリア

の名前が挙がっていません。実は文鳥・ジュウシマツ・カナリアなどのフィンチ類はChlamydia psittaci (クラミジア・シッタシ)に感染しにくいため、「オウム病」の感染源になりにくい可能性があるとアメリカのCDC(アメリカ疾病予防管理センター)によって示唆されています。

しかし、国内ではジュウシマツが鳥類からの感染の10%を占めるとも言われていますので、フィンチ類を飼育されている場合でも過信は禁物です。

必要以上に神経質になる必要はありません

「オウム病」がオウムに限定された病気ではないことが分かると、オウム以外の鳥類を飼育している人は不安になるかも知れません。

ただ、インコ類などを屋内で飼育しただけで感染リスクが非常に高くなる訳ではありません。

今一度、国立感染症研究所がまとめた統計を見てみましょう。

鳥類 インコ類 59%
ハト 12%
オウム 6%
上記以外の鳥類 15%

※併記の場合なので、カウントが重複しています。

実は「オウム病」の感染源としてはハトが約1割を占めています。

確かにハトは非常に身近な鳥で、しかもChlamydia psittaci (クラミジア・シッタシ)保菌率も高い(一説では20%が保菌とも)と言われています。

屋内飼育のインコなどと比べると接点が少ないように見えるハトですが、換気扇やベランダ、駅ホームなどの天井に巣を作ることもあり、人間が粉末化した糞便を吸い込んでしまうリスクは低くありません。なにより数が圧倒的に多いのに加え、本当にどこにでも存在しています。

それでも、国内で発生する「オウム病」の約1割しか占めていない訳ですから、感染リスクがそれほど高い感染症ではないということができます。

ここ数年の発生動向を見ても、発生件数は落ち着いています。キツネや犬から人に感染するエキノコックス症との発生件数の比較を見ても多くはありません。

ただ、一般的な認識だけではなく、臨床の現場でも「オウム病」の認識が薄れてしまい、オウム病の発生件数が正しく把握されていない恐れもあるため、報告されずに異型肺炎として治療されているケースがかなり存在している可能性はありますので、その点には注意が必要です。

年度 オウム病 エキノコックス症
2007年 29 25
2008年 9 24
2009年 21 26
2010年 11 17
2011年 12 25
2012年 8 17
2013年 6 20
2014年 8 28
2015年 5 28

 

とは言え、屋内でインコや文鳥などを飼っているだけで確実に感染を起こすほどの感染症ではありませんし、仮に感染して原因不明の発熱・頭痛や肺炎を起こしても病院で診察を受ける場合に「鳥を飼育している旨」を医師に伝え、的確な診断と適切な処置を受ければ治療が可能な感染症ですから、今回の「国内初」「オウム病」「死亡」というニュースの見出しだけで過剰反応してしまうことは避けたいところです。

ただし、妊娠中の女性の場合、免疫力が低下するために、感染しやすくなりますし、感染した場合に重篤化もしやすくなることに加えて、「妊婦オウム病(gestational psittacosis)」を引き起こすリスクがありますので、充分な注意が必要です。

オウム病の感染を防ぎながら鳥たちと一緒に暮らすために

鳥の間での感染は、

  • 菌を含む糞便が乾燥した飛沫
  • 呼吸器・眼からの分泌物

などを吸い込んだり、口などに入ることで起こります。

そのため、親鳥がキャリアになっている場合、ヒナに餌を与える際に感染を起こします。

また、オウム類やニワトリなどでは卵を通じた垂直感染も起こります。

もし、Chlamydia psittaci (クラミジア・シッタシ)していない鳥をお迎えした場合、他の鳥との接触がない場合は感染リスクはほぼないため、特別な注意は必要ありません。(外出し、ハトなどとの接点がある人間の方が高リスクです。)

鳥がChlamydia psittaci (クラミジア・シッタシ)に感染している率に関する信憑性のあるデータがほとんどなく、本やネットに書かれた「輸入鳥や国内繁殖の鳥の30%以上がクラミジアを保有しているという報告があります。(アイリスペットどっとコム)」などという記載が独り歩きしている感があります。

そんな中、岐阜大学獣医微生物学研究室で調べた鳥種別クラミジア保有状況に関する資料が参考になります。

施設やロットによって差があるとした上で、

2003 年,1年間におけるわれわれの調査(論文発表準備中)では健康診断依頼検体 491 例中 25 例(5.4%),および何らかの疾病が疑われた検体 71 例中5例(7.6%)にクラミジアが検出された。斃死鳥では感染症が疑われた 59 例中 13 例(28.3%)からクラミジアが検出された。鳥種別にみると,クラミジア保有率はオカメインコ(保有率 16%),セキセイインコ(13%),ゴシキセイガイインコ(11%),チャガシラハネナガ(5%)などであった。検出率は施設やロットにより異なっていた。

出典:岐阜大学獣医微生物学研究室「オウム病の最近の知見 Advances on psittacosis」

岐阜大学獣医微生物学研究室による調査では、以下のような結果になっています。疾病が疑われた検体でも保菌率が7.6%と低い値になっているのには驚きました。(斃死鳥では感染症が疑われた 59 例中 13 例に感染が見付かり、保菌率28.3%となっています。)

健康診断依頼検体 陽性 保菌率
495例 25例 4%

 

疾病が疑われる検体 陽性 保菌率
71例 5例 7.6%

 

鳥類別 保菌率
オカメインコ 16%
セキセイインコ 13%
ゴシキセイガイインコ 11%
チャガシラハネナガインコ 5%

ただし、迎え入れる鳥がChlamydia psittaci (クラミジア・シッタシ)のキャリアになっているかどうかの検査は簡単ではありません。病原菌の排出が常に起こっている訳ではないため、数週間おきに数回糞便をとって検査を行わなければなりません。その結果「陰性」判定が出たとしても、絶対にキャリアではないと言い切れないようですので、定期的(毎年)に検査を行う方が安全そうです。

検査で陰性であった場合、そして陽性であっても治療によって陰性になった場合でも、やはり

  • 過度なスキンシップは避けましょう(キスや口移しでの給餌)
  • ケージを常に清潔に保ち、粉末化した糞便や汚染された羽毛を吸い込まないようにしましょう
  • ケージを清掃する時はマスクを着用しましょう
  • 鳥と触れ合った後は手洗いをしましょう

以上のような注意が必要にはなります。

獣医師の中には「鳥は極力屋外で飼うように」というアドバイスをされる方もいますが、オウムやインコの場合はそんな訳にもいきません。気温のこともありますし、鳴き声の問題もあります。それに外に出せば、粉末化した糞便を外に撒き散らすことになり、自分は大丈夫でも他の人に迷惑をかける形になってしまいます。

やはり屋内飼育の場合は、これからも今まで通り屋内飼育を変えることはなく、以上のような注意とちょっとした我慢をして、鳥たちとうまく共存できるようにしたいですね。

感染リスクを減らすためにできること

過度なスキンシップを避けたり、ケージを掃除する際にマスクを着けることなど以外にも感染リスクを減らすためにできることがあります。

空気清浄機を使う

ナノイーやプラズマクラスターが空気中を漂うChlamydia psittaci (クラミジア・シッタシ)を殺してくれたらどれほどありがたいことか分かりませんが、その効果は期待できません。

菌を殺す効果は期待出来なくても、空気清浄機が室内に気流を作り、菌を含む飛散物を効果的にキャッチしてくれることで感染リスクを下げる効果は期待できます。PM2.5など超微細な浮遊物をキャッチできる空気清浄機になるとかなり高価になってしまいますが、もう少し手頃な価格の空気清浄機であっても効果が期待できますので、これは使わない手はありません。

フン受けトレイに敷く新聞紙の代わりにウッドチップを敷く

ケージのフン受けトレイには大昔から新聞紙を敷くのが定番です。最近ではペットシートを敷く(※オウム・インコ類は嘴で破ってしまい、吸水ポリマーを食べてしまう恐れがあるためNG)人も多くなったと聞きます。

しかし、新聞紙やペットシートの場合、鳥が羽ばたいた場合に乾燥したフン・羽毛・脂粉などが舞い上がりますので、感染リスクを上げてしまいます。

そこでオススメは新聞紙やペットシートの代わりにウッドチップを敷く方法です。ウッドチップの場合、フン・羽毛・脂粉はチップのこまかいところに絡まって、鳥の羽ばたくで舞い上がる量が激減します。部屋の掃除も楽になりますので、是非試して頂きたい方法です。

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