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タトゥーを彫るのは彫り師か医師か 法廷闘争

      2020/01/24

戦前、刺青は警察犯処罰令で処罰対象になっていましたが、戦後の1948年に軽犯罪法が公布されるのに伴って、刺青に対する法的な規制はなくなりました。今は刺青の意味合いが変わり、よりファッションの一部として見られるようになってきていますが、依然としてプールや浴場への入場は規制されています。ただ、2020年の東京オリンピックに向けて、規制を緩和する動きもあり、現在は刺青の変動期になっています。

大阪府吹田市の彫り師による法廷闘争が間もなく開始

大阪府警は、2015年4月にタトゥー用の消毒液を販売する業者を薬事法違反容疑で検挙し、その捜査中に関係先として大阪府吹田市の彫り師の男性の店を家宅捜索しました。

当初は消毒液の販売先を特定することが目的でしたが、途中から目的が薬事法違反ではなく、彫り師による医師法違反に変わり、その彫り師の男性は医師法違反で略式起訴されました。

実は、その男性の前にも、大阪市ミナミで彫り師が5名逮捕されていました。それを知っていた男性は一度は略式起訴を受け入れましたが、納得できず、弁護士と相談した上で、法廷で争う決心をしました。その裁判は、12月25日の後半前整理手続きから始まります。

タトゥー(刺青)を彫ることは、芸術なのか医療行為なのか

タトゥーは芸術だと思います。好き嫌いはありますし、芸術ではないタトゥー(刑罰・個体識別など)もあります(した)が、一部は芸術に昇華しています。

芸術であっても、色素を付けた針を皮膚の中に刺し込むことは医療行為になってしまいます。

耳にピアスの穴を開けたとして医師の資格を持たないピアス販売業者が逮捕された時も、医師法違反の罪でした。

他人の体を傷付ける行為は医師以外にはできない

ということになっています。生きていない人の解剖も医師(または医師・看護師などを目指す学生)以外には許されていないと思います。となると、ほんの少しであっても皮膚の中に針を差し込むことになるタトゥーを彫る行為も医師でないと行えないということになっても仕方がないのかも知れません。

事実、2001年に厚生労働省は、当時流行っていた眉や目尻に墨を入れる「アートメイク」に関するトラブルが相次いだため、

針先に色素を付けながら皮膚の表面に色素を入れる行為は医師にしかできない

という通達を出しました。保健衛生上、危害が生じる恐れがあるということだそうです。

元になっているのは、「医師法上の疑義について(回答)」(平成12年7月13日付け医事第68号厚生省健康政策局医事課長通知)で、

  • レーザー脱毛
  • アートメイク
  • ケミカルピーリング

を医師の資格を持たない者が実施することは医師法に違反するとしています。2013年11月に厚生労働省が出した通達「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」もこの見解を元にしています。

今回の裁判は、かなり苦しいものになると思います。風営法でディスコやクラブが意味のない規制を受けていた事とは違って、他人の体に傷を付ける行為は医師にしか認められないということは緩めることは不可能でしょう。

彫り物師の今後

今はグレーゾーンになっていますが、今回の裁判は確実に一石を投じることになるでしょう。

彫り師の中には、針もインクも使い捨てにして、その他の器具はオートクレーブなどで滅菌処理を行い、感染症予防に努めているところも少なくないと思います。病院の中には「本当に大丈夫なのか?」って思える施設や管理体制のところもありますので、彫り師がダメで、医師なら良いということにはならないと思います。

ただ、医師法的に医師の資格を持たない人が針を他人の体に入れることを許可するとは考えにくく、そうなると法改正か、新しい法律を作る以外に道はないのかも知れません。

タトゥーの地位が昔とは変わっていますので、風向きは悪くはありませんが、ちょっと一度に超えるには高過ぎるハードルかも知れません。日本のタトゥーがクールジャパンの一部だというには未だ少し「大人」の抵抗が大きいように思いますが、クールジャパンの一部だと認識されるようになれば、国も動いてくれるかも知れないと少し期待が持てる部分もあります。

今回の法廷闘争がタトゥーの社会的地位を上げる方向に働けばいいのですが、この裁判でグレーゾーンに光が当てられ、グレーからブラック(違法)だということになってしまうと、今後彫り師は地下で活動をしなければならなくなり、今よりも地位は悪くなりますし、消毒液などが入手し難くなれば、入れてもらう顧客側も不利益を受ける可能性があります。吹田市の若い彫り師の勇気ある行為ではありますが、「雉も鳴かずば撃たれまい」になってしまわないか、不安が残ります。

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