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予約炊飯は食中毒に要注意 加熱では毒素型食中毒を防げません!

      2019/06/12

この春からの新生活で初めて自炊を始めたり、お弁当を作り始める人も少なくないと思います。

多くの炊飯器には予約炊飯機能があって、夜にお米を米を研いでセットしておくと朝に合わせて炊き上がるというのは非常に魅力的な機能ですが、実は注意が必要です。

生のお米は腐らなさそうに見えますし、炊飯は高温で炊き上げるので、仮に浸水しているお米に菌が増殖したとしても食中毒を起こす細菌は死滅するので安全だと思えますよね。

実際、炊飯過程で黄色ブドウ球菌などの食中毒原因菌は死にます。でも、黄色ブドウ球菌が作り出すエンテロトキシンという毒は炊飯程度の熱では失活しないため、炊きたてのご飯を食べて食中毒を起こす可能性があります。そのような食中毒は

毒素型食中毒

と呼ばれますが、暖かくなるこれからの季節には特に注意が必要です。

予約炊飯で毒素型食中毒を起こさないための浸水時間

炊飯は研いでセットするだけなので簡単な作業に思えますが、実はお米も結構繊細です。家庭科の授業で習ったのは、

お米の浸水時間
季節 推奨 最長
夏場 30分 90分
冬場 60分 180分

※冬場であっても室温によってはこれより短くするべき場合もあります。

という時間ですが、これは炊き上がったお米を美味しく頂くための目安の時間です。

ただ、これはお米を美味しく頂くためだけの目安ではなくて、実は安全にお米を食べるための目安にもなるかも知れません。

黄色ブドウ球菌の特徴
増殖可能な温度域 5~47.8℃
至適増殖温度 30~37℃
エンテロトキシン産生 10~46℃

出典:食品安全委員会 ファクトシート「ブドウ球菌食中毒 (Staphylococcal foodborne poisoning)」

黄色ブドウ球菌は人の皮膚表面や鼻腔に存在する常在菌のひとつです。もし手洗いが不十分な状態でお米を研いでしまうと、浸水したお米が黄色ブドウ球菌に汚染されます。

黄色ブドウ球菌は5~47.8℃で増殖が可能ですから、冷蔵庫の中に入れたとしても少しずつ増殖してしまいます。でも、エンテロトキシンを産生するためには10~46℃である必要があるため、冷蔵庫の中においておけばエンテロトキシンはできません。冬場にキッチンの気温が10℃を下回っているような場合は、炊飯器内で浸水させてもエンテロトキシンはできず、炊飯過程で若干増えた黄色ブドウ球菌自体も死滅するために安全に食べることができます。

ですが、気温が上がり、浸水中のお米の温度が10℃を超えてくると、エンテロトキシンが産生されてきますので、注意が必要です。

夏場になって、温度が30℃を超えてくるような場合、黄色ブドウ球菌が盛んに増殖する上にエンテロトキシンも産生されるため、毒素型食中毒のリスクは大きく上昇します。

冬場でもキッチンの気温が比較的高い場合や夏場にキッチンの気温が30℃を超えるような場合は、浸水時間を推奨時間に留め、それ以上になる場合は冷蔵庫内に保管する方が安全です。

美味しく、そして安全にご飯を炊くために、冬場は60分、夏場でも30分早く起きることは大変だと思いますので、

  1. 寝る前に米を研ぎ、それを冷蔵庫内に保管
  2. 朝一番に「早炊き」機能を使って炊飯

することがオススメです。

夜にお米を研いで、朝に炊き上がるように炊飯器にセットするのは止めましょう

室温によってリスクの大きさは変わってきます。

仮に冬場であっても、夜23:00にセットして、朝6:00に炊き上がるようにすると6時間以上に浸水させることになってしまい、もし室温が5℃を超えているような場合は黄色ブドウ球菌が増殖を続けています。

さらに室温が10℃を超えている場合は、朝までエンテロトキシンが産生され続ける可能性があります。

そして、万が一室温が30℃(黄色ブドウ球菌の至適増殖温度)に近いような場合は、黄色ブドウ球菌は盛んに増殖をして、エンテロトキシンも産生するために非常に危険です。

室温が冷蔵庫並に5℃を下回るような場合を除いては、朝起きた時にご飯が炊き上がるように、夜にお米を研いで炊飯器をセットするのは止めましょう。

長時間浸水することは毒素型食中毒の原因にもなりますし、またお米の美味しさも失われてしまいますので、時間に余裕がない朝は冷凍ご飯を使うのがオススメです。

 - 食中毒

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